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九州地方整備局における陸上移動無線(K-λ)の整備について


米 倉  賢 一 郎


キーワード:K-λ、VHF、陸上移動通信


河川・道路等のパトロール時の連絡や災害現場からの連絡のために整備しているK-COSMOS やアナログVHF は、整備から20 年以上が経過し、保守の限界、信頼性低下等の問題が生じている。このため、2018 年度から3 ヶ年計画でデジタル方式の移動通信システムであるK-λに集約し移行する計画であり、そのシステムについて紹介する。


1.はじめに
国土交通省では光ファイバーケーブルや多重無線回線を整備し、専用のネットワークである光・無線統合通信網を構築している。そのため、災害などにより一般電話回線や携帯電話回線が使用できない状況になっても、国土交通省の内線電話は使用でき、また、水位観測データ(図- 1)、雨量観測データ(図- 2)及びレーダ雨量データ(図- 3)などの防災に係わるデータは途切れることなく通信が可能である。




また、移動可能な衛星通信機器(写真- 1 ~ 4)も整備しているため、災害発生等で現地状況を把握する必要が生じた場合も衛星通信回線を利用して災害現場映像を伝送することも可能である。
それ以外にも、移動しながら会話できるK-COSMOS(国土交通省移動通信システムのことで、双方向の通信が可能な移動無線のこと)(写真- 5)やアナログVHF(超短波帯無線電話装置の単方向の通信が可能な移動無線のことで、アナログ変調方式を使用していることから、ここでは「アナログVHF」という。)(写真- 6)も整備しており、災害時に使用することはもとより、河川パトロールや道路パトロールでも使用されてきた。しかし、K-COSMOS やアナログVHF は、整備から20 年以上が経過し、保守の限界、信頼性低下等の問題が生じている。




このため、2018 年度から3 ヶ年計画で新しい陸上移動無線設備であるK-λを整備する計画であり、このシステムについて紹介する。


2.K-λとは
K-λとは、デジタル陸上移動通信システムのことであり、Kokudokoutsuu LAnd Mobile systemBy Digital Accessを略したK-LAMBDAからきている。
また、デジタル陸上移動通信システムとは、デジタル変調を行うVHF 無線機を陸上で人が手に持ち、または、車両に搭載し、移動しながら通信できるものであり、これらの無線機同士だけでなく、本局、事務所及び出張所とも会話ができる無線システムのことである。


3.K-λの特徴
一般のスマートフォンや携帯電話などの通信機器は大規模災害時には通信回線の輻輳や通信統制、及び携帯電話基地局の被災等により通信・連絡ができなくなることがある。
しかし、K-λで使用する通信回線は総務省から与えられた国土交通省専用の周波数を使用していることや、通信の相手方が直接見えなくても見通し外通信が可能であったり、K-λの電波を送信したり受信したりする基地局も国土交通省が設置管理しているものであるため、停電等の影響を受けずに使用できる災害時に強い無線システムである。
さらに、K-λは、これまでのアナログ変調方式を採用していたVHF とは異なり、音声信号をデジタル化して送るため、これまでのアナログVHF と比較するとノイズの少ない音声品質の高い通信が可能である。
ただし、付近で同じチャンネル(周波数)を使用し、通信を行っているK-λがある場合、その通信が終わるまで他のK-λが使用できないことや、K-COSMOS や携帯電話等は、相手の声を聞きながら同時に話すことができる同時通話方式であるが、K-λの場合は、送信(話す)と受信(聞く)を交互に行う交互通話方式であることは、これまでのアナログVHF と同様である。


4.K-λの主な機能
K-λは、これまでのアナログVHF からデジタルVHF になっただけでなく、機能面でも異なる機能を有している。違いを交えながら主な機能を説明する。

(1)基地局手動選択機能
通話操作装置、及び遠隔通信装置にて、手動で基地局を個別に選択(複数選択を可能とする)し、IP 統合網(IP 統合網とは、光ケーブルや多重無線回線等によりIP 通信を行う国土交通省専用のIP 通信網のこと)を介して音声通信を行う機能である。基地局手動選択機能のイメージを図- 4に示す。
これまでも基地局選択機能はあったが、選択できる基地局は勤務する事務所管内に設置された基地局のみに限定されていた。しかし、K-λでは、九州管内全ての基地局を選択することが可能である。そのため、後述する一斉通信も可能であるため、本局等から各箇所にちらばっているTECFORCE隊へ同時に指令を出すことが可能である。


(2)一斉通信機能
選択した基地局配下の全ての移動局に対して同報通信が可能である。一斉通信機能のイメージを図- 5 に示す。


(3)グループ通信機能
これまでのアナログVHF では、同じ周波数チャンネル(以下、「周波数ch」という。)を使用している場合、同じ周波数ch が設定された移動局全てと通信を行うため(イメージを図- 6 に示す)、グループ毎に通信を行いたい場合は、異なる周波数ch を使用することによりグループ通信を行っている(イメージを図- 7 に示す)が、K-λでは、同じ周波数でもグループ番号によりグループを分けることにより、選択した基地局配下の複数の移動局で構成される特定のグループを選択して音声通信を行うことが可能である。グループ通信機能のイメージを図- 8 に示す。




(4)同時受信機能
選択した基地局に入ってくる音声を、複数の通話操作及び遠隔通信装置で同時に受信することが可能である。これまでも同様の機能はあったが、入ってくる音声は、勤務する事務所管内に設置された基地局に入ってくる音声のみに限定されていた。しかし、K-λでは、その制限がなく、自由に基地局を選択し、音声を聞くことができる。ただし、基地局を選択し過ぎると、多くの基地局からの様々な音声が聞こえてくるため運用には注意が必要である。同時受信機能のイメージを図- 9に示す。


(5)基地局折返し通信
同一基地局ゾーン内で基地局を経由して移動局間で通信を行うことが可能である。そのため、移動局間通信よりも広い範囲で通信ができる。基地局折返し通信のイメージを図- 10 に示す。


(6)移動局間直接通信
基地局を経由せず移動局間で直接通信を行うことが可能である。前述の基地局折返し通信より通信可能エリアは狭いが、付近に基地局がなく基地局と通信ができない場合は、移動局間同士の距離が近ければ直接通信を行うことになる。移動局間直接通信のイメージを図- 11 に示す。



5.K-λ機器構成
K-λは、情報管理装置、通話操作装置、遠隔通信装置、基地局無線装置、及び移動局無線装置(携帯型/車載型)から構成され、概要としては、図- 12 のとおりである。


また、機器構成の概要をシステム構成図として表すと図- 13 のとおりとなる。



6.K-λ機器仕様の概要
K-λ無線設備において、音声や制御信号等が確実に通信できるように、図- 13 に示す様々な機器や機能から構成されており、各機器の機器仕様の概要は次のとおりである。

(1)情報管理装置
山上中継所等の基地局無線装置やIP-GW 装置の監視制御を行い、また、基地局無線装置や通話操作装置等の設定を管理し、遠隔にて変更できる機能を有する装置である。

(2)通話操作装置
本局や事務所等に設置し、移動局無線装置と通信を行うための基地局選択機能を持ち、選択した基地局無線装置と接続し、選択した基地局配下の移動局無線装置(車載型/携帯型)と通信(会話や制御)できる機能を有する装置である。

(3)遠隔通信装置
通話操作装置の簡易版であり、本局や事務所等に設置し、移動局無線装置と通信を行うための基地局選択機能を持ち、選択した基地局無線装置と接続し、選択した基地局配下の移動局無線装置(車載型/携帯型)と通信(会話や制御)できる機能を有する装置である。

(4)IP-GW
本装置は基地局無線装置と接続して、アナログ音声信号をRTP のIP パケットに変換、またその逆にRTP のIP パケットをアナログ音声信号に変換し、IP ネットワーク(IP 統合網等)を介して、基地局無線装置と通話操作装置や遠隔操作装置を接続させることが可能であり、また、送受されるデータ信号をシリアルインターフェース- IP インターフェース間で変換し移動局-情報管理装置又は通話操作装置間の通信を確立させる装置である。

(5)VPNルータ
本装置は山上中継所等の基地局に設置されるIP-GW と本局や事務所等に設置される通話操作装置がIP ネットワーク(IP 統合網等)を介して接続する際に、多重無線IP 網にIP マルチキャストパケットをユニキャストにカプセル化して、マルチキャスト配信される音声データを通す機能を有する装置である。
なお、マルチキャストとは、1 つのデータ発信元から複数の相手先に対し同時にデータを配信する仕組みのことである。

(6)基地局無線装置
本装置は山上中継所等に設置されるデジタルVHF 無線装置であり、主に、本局や事務所及び出張所から発話された音声信号を基地局のエリア内にいる移動局無線装置(デジタルVHF無線機)に中継送信を行い、また、移動局無線装置から発話された音声信号を、本局や事務所及び出張所並びに、他の移動局無線装置に中継送信する機能を有する装置である。中継送信のイメージを図- 14 に示す。


(7)携帯型移動局無線装置
持ち運び可能なデジタルVHF 無線装置であり、通話操作装置、遠隔通信装置、基地局無線装置及び他の移動局無線装置との間で通信可能な装置である。

(8)車載型移動局無線装置
車両に設置可能なデジタルVHF 無線装置であり、通話操作装置、遠隔通信装置、基地局無線装置及び他の移動局無線装置との間で通信可能な装置である。


7.まとめ
今後整備していくK-λは、これまでのアナログVHF と比べ音声品質が向上するだけでなく、前述した様々な新しい機能が追加されている。そのため、全ての機能を使おうとすると操作が複雑になるところもあるため誰でも使いやすくなるような運用方針を決める必要がある。
また、機器操作説明書を作成しても、読むだけでは実際に使用できないことや、大規模な災害が発生した際には、携帯電話等が使用できなくなる可能性があり、その際にはK-λを使用して通信を行うこととなる。
そのため、整備後には、九州地方整備局で実施される様々な訓練にあわせK-λ操作訓練メニューを組み込むことにより、多くの職員が容易に操作できるようにしていきたい。


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