トップ  >  第63号 2018.09  >  トピックス  >  愛着と誇りを持てる美しい宮崎の創造と継承~美しい宮崎づくり推進条例の制定~

愛着と誇りを持てる美しい宮崎の創造と継承

~美しい宮崎づくり推進条例の制定~


岡 部  章


キーワード:宮崎県、景観、まちづくり

1.はじめに
本県は、昭和44 年に全国に先駆けて沿道修景美化条例を制定するなど、豊かな自然を生かした美しい郷土づくりに取り組んできた。
しかしながら、人口減少等による担い手不足を背景に、人々によって守られてきた景観が損なわれようとしている。
また、人々の豊かさに対する価値観の変化等により潤いと安らぎのある暮らしへの関心が高まるとともに、旅行者のニーズの多様化や交流圏域の拡大により、訪れる人々を惹き付ける魅力ある地域づくりが求められている。
このような社会情勢の変化を踏まえ、県民一人ひとりの力を合わせて美しい宮崎づくりを進め、世界に誇ることのできる美しい郷土を将来の世代に引き継ぐことを目指した「美しい宮崎づくり推進条例(以下、「条例」という。)」を平成29 年4 月に施行した。


2.条例の位置付け
本県は愛媛県に次いで、全国で2番目の早さで全市町村が景観法に基づく景観行政団体に移行したため、景観行政団体でなくなった。
このような中、これまでに全市町村(26 団体)のうち、15 市町村が景観法に基づく景観計画を策定し、一定規模以上の建築物の建設等を届出対象行為として行為の制限を行い、良好な景観形成に取り組んでいる。
このため、本条例は、当初から景観法に基づいて規制・誘導を行う「景観法委任条例」ではないものの、県自らの責務を定めるなど、県が旗振り役となって美しい宮崎づくりを推進していくという強い想いを込めた「理念条例」として検討を進めた。
今回の条例は、沿道修景美化条例や市町村が策定する景観条例で規制・誘導の対象となっている区域や届出対象行為のみならず、それ以外の様々な行為も幅広く条例の対象と捉え、既存の条例と連携しながら、良好な景観の保全、創出等に取り組もうとするものである。



3.条例制定までのプロセス
条例の検討に当たっては、庁内20 課の関係課(室)長を構成員とする検討会議と学識経験者、関係事業者、まちづくり活動団体の代表者など、計32 名からなる有識者会議を繰り返し開催し、検討の段階に応じて意見を求めながら進めた。
また、市町村との意見交換会や県民アンケート、さらにはパブリックコメントを行うとともに、その期間中に県内8 地区で説明会を開催するなど、市町村はもとより、県民や事業者の方々の意見を幅広く伺いながら、議論を重ねてきた。
条例の基本的な構成や条文を検討する際は、こうした様々な機会を重ねる中で明らかになってきた本県の現状と課題、強みや弱みを踏まえつつ、本県の目指すべき未来像を実現するために必要なことを幅広く盛り込んだ条例を作ることに拘った。
このため、協議・調整には非常に多くの時間と労力を要したものの、他県の条例には無い様々な特徴を有する条例を制定することが出来たと考えている。


4.美しい宮崎づくりが目指すもの
条例では、「美しい宮崎づくり」を、良好な景観の「保全」、「創出」に加え、これらの景観を「活用」することによる「魅力ある地域づくり」と定義づけている。
市町村や県民、事業者と連携し、県内各地で魅力ある地域づくりを進め、それらが「点から線」に、「線から面に」と拡がっていくことによって、美しい宮崎が形づくられ、「県民の心豊かな暮らし」と「活力ある地域社会」の実現に寄与することをこの条例の目的としている。



5.条例の基本理念
美しい宮崎づくりには、県民や事業者との連携と協働が不可欠であることから、基本理念は極めて重要であり、出来るだけわかりやすいものとなるよう検討を進めた。
その結果、最終的には5 項目からなる基本理念となったが、それらは完全に独立したものではなく、相互に緩やかなつながりを持ったものであり、基本理念の根幹となる部分を読み解くと「現代に生きる私達だけでなく、子供達のためにも、地域への愛着と誇りを育むよう、訪れる人々へもてなしの心を持って、一人ひとりが今できることに、みんなの力を合わせて取り組もう!」という、県民に向けた一つのメッセージとなっている。


6.各主体の責務と役割
条例では、美しい宮崎づくりに関し、県の責務並びに市町村、県民及び事業者の役割についても定めている。
県は、美しい宮崎づくりに関する基本的かつ総合的な施策を策定し、これを推進するほか、広域行政の担い手として、市町村との役割分担を踏まえつつ、市町村が実施する施策への協力や支援を行うこととしている。
また、県民及び事業者による積極的な活動への参加や相互の連携に必要な措置を講じることとしている。
次に、住民に最も身近な行政機関で、景観行政団体でもある市町村には、景観行政を主体的に担うものとして、景観計画の策定など、地域の特性を生かした美しい宮崎づくりに関する施策を推進するよう求めている。
また、県民、事業者については、それぞれが美しい宮崎づくりの重要な担い手であり、日々の暮らしや事業活動を行う中で、自ら進んで美しい宮崎づくりに努めるとともに、地域社会の一員として、地域で行われる美しい宮崎づくりに関する取組にも参加するよう求めている。


7.推進計画の策定と推進体制の整備
今回の条例制定に向けたプロセスの中で、県民、事業者の方々から最も多く寄せられた意見が、「この条例が、単なる理念で終わることのないよう、実行性のあるものにしてほしい」というものであった。
このため、条例には、実行性を高めるための「推進計画の策定」と「推進体制の整備」を盛り込んだ。
推進計画に関しては、平成29 年度を初年度とし、本県で国民体育大会が予定されている平成38 年度までの10 年間を計画期間とし、「愛着と誇りを持てる美しい宮崎の創造と継承」を目指すべき姿と位置づけ、県、市町村、県民、事業者が取り組むべき各種施策と役割分担を定めた実行計画として昨年11 月に策定した。
また、推進体制に関しては、知事を本部長とする「美しい宮崎づくり推進本部」を設置し、推進計画に位置づけた「景観による地域のブランド力向上」、「景観を生かした“ おもてなし”」、「宮崎を美しくする人づくり」という3つの重点施策を中心に、全庁一丸となって各種施策を推進していくこととしている。
さらに、景観行政団体である市町村との情報共有と連携体制の強化はもとより、景観まちづくりに向けた具体的な動きに繋がるような組織体制づくりを目指し、全26 市町村の景観行政主管課に、県指定の「景観形成促進機構(全市町村の景観行政団体への移行により、景観行政団体でなくなった本県が、景観法に基づく景観整備機構と同様の役割を担う法人として、条例に基づき独自に指定するもの)」や、市町村が景観法に基づいて指定する「景観整備機構」を加えた「美しい宮崎づくり推進市町村連絡会」を設置したところである。
このほか、関係事業者やまちづくり団体の代表者などからなる「美しい宮崎づくり推進有識者会議」を設置し、委員からの助言を施策の推進に反映させていくこととしている。


8.美しい宮崎づくりを推進するための施策
今回の条例には、美しい宮崎づくりを推進するため、良好な景観の保全、創出、活用に加え、それらを担う人材の育成に至るまで、幅広い施策を盛り込んでいる。
それらの施策の概要は以下のとおりである。

8-1 地域の特性を生かした景観の保全・創出
宮崎県らしい景観を将来の世代へ引き継ぐためには、地域の特性を生かすという視点が重要である。
このため、条例では、市町村や県民、事業者と連携し、自然景観、農山漁村景観、歴史的景観及び文化的景観、潤いと安らぎの感じられるまちなみ景観の保全及び創出に関する施策を推進するほか、県が市町村を越えて拡がる広域的景観の保全及び創出のために市町村間の調整や必要な支援を行うよう定めている。
今後は、これらの施策の骨格となる市町村による景観計画の策定を促進するとともに、庁内の関係部局や市町村と連携し、自然景観や農山漁村景観の保全・創出に向けた取組や、広域行政の担い手として、広域的景観の形成に関する方針の策定などに取組んでいくこととしている。



8-2 景観を資源として活用する環境づくり
地域固有の景観を生かした魅力ある地域づくりには、地域固有の景観を資源として活用し、地域の活力につなげるという視点が重要である。
このため、条例では、良好な景観が眺望できるビューポイントの掘り起こしや、沿道・沿線における景観の磨き上げに関することのほか、憩いの場や交流の場となる空間づくり、豊かな自然や農山漁村の景観を活用したエコツーリズムやスポーツツーリズム(トレッキング、サイクルツーリズム、マリンスポーツ等)の振興、さらには、良好な景観の形成を阻害する要因となっている工作物等の改善や、積極的な情報発信など、景観を資源として活用するための環境づくりに関し、様々な施策を盛り込んでいる。



8-3 公共事業に係る良好な景観の形成
公共施設は地域の景観を構成する重要な要素の一つであり、地域の景観に与える影響も非常に大きいことから、県では、平成22 年度に県自らが率先して良好な景観形成の先導的な役割を果たすべく、公共事業を実施する際の景観配慮のあり方と方向性を示した「宮崎県公共事業景観形成指針」を策定している。
条例では、この指針を条例に基づいて県が定める公共事業に係る良好な景観の形成を推進するための指針と位置付け、それに則って公共事業を実施するほか、国や市町村とも連携し、良好な景観の形成に取組むことなどを定めている。



8-4 担い手の育成
条例では、将来を担う子どもたちの育成や専門的な知識を有する人材の育成等に関する施策を定めているほか、良好な景観の形成に取組む団体の連携強化や活動支援のための登録制度の創設、さらには専門的な知識や技術を持った法人の指定制度を設けるよう定めている。
また、毎年11 月を美しい宮崎づくり推進強化月間と定め、県民、事業者等の主体的かつ積極的な景観形成活動への参加を促していくほか、美しい宮崎づくりに顕著な功績のあったものを表彰するよう定めている。



9.おわりに
人口減少時代を迎え、少子・高齢化が進む中、地域に魅力が無ければ、より就業や交通の便に優れる都市部への人口流出は加速していくと懸念される。
このため、県、市町村、県民、事業者が一体となり、美しい宮崎づくりを進め、県民一人ひとりが地域に愛着と誇りを持って住み続けられるような美しい郷土を創り上げ、次の世代に継承できるよう、全庁一丸となって取組んでいきたいと考えている。
最後に、今回の執筆にあたり、写真や情報の提供を頂いた関係者の皆様に心より感謝を申し上げるとともに、今後も引き続き、美しい宮崎づくりの推進に向けた御協力をお願いしたい。
プリンタ用画面
前
2017年度「土木学会景観・デザイン委員会デザイン賞」受賞~最優秀賞:アザメの瀬 湿地の転生、優秀賞:嘉瀬川ダム~
カテゴリートップ
トピックス
次
油津港 世界最大クルーズ船受入環境整備の取組

サイト内検索
防災情報


防災情報提供センター


川の防災情報

かわ情報


九州 川の情報室

みち情報


道守九州会議


九州風景街道


九州の道の駅