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i-Construction も同時に学べる無人化施工訓練の開催報告


堤  宏 徳


キーワード:無人化施工、i-Construction、生産性向上

1.はじめに
火山噴火時に発生が想定される火山災害をできる限り軽減(減災)するために緊急時に実施する火山対策(ハード面及びソフト面)のうち、国及び都道府県の砂防部局が実施する対策を「火山噴火緊急減災対策砂防計画」として策定している。一方、地震や集中豪雨等による自然災害発生時は、被害の拡大防止や軽減を図るため初動対応が重要である。
しかし、火山噴火時の緊急対策工事や大規模な斜面崩壊現場での作業は危険な現場条件が多く、作業員の安全に配慮した施工方法を採用することを基本としており、その中でも特に無人化施工は有効な手段である。平成28 年熊本地震における阿蘇大橋地区の崩壊地においても無人化施工を用いた対策工事が実施された。
また、我が国は少子高齢化社会を迎え、現在、建設現場で働いている技能労働者約340 万人(2014 年時点)のうち、約1/3 にあたる約110万人が今後10 年間で高齢化等により離職する可能性が高いことが想定されている。労働力の大幅な減少が避けられない建設産業において、無人化施工やICT の全面的な活用により、これまで人が行っていた危険の伴う作業や厳しい環境で行う作業などが軽減され、安全性が向上するとともに、施工時期の平準化や建設現場の生産性向上により、十分な休暇の取得や賃金水準が向上し、建設現場の仕事がこれまでよりもさらに魅力的になっていくことを打ち出し、若者や女性、高齢者など多くの方々に建設産業を目指してもらえるようにする必要がある。
このような状況を踏まえ、不足している無人化施工に対応可能なオペレーターやICT 施工に対応可能な人材の育成を目的に、九州地方整備局内各事務所の維持・災害協定業者を対象とした無人化施工訓練を実施した。


2.今までの取り組み
当事務所による訓練は平成27 年度から実施しており、今年度で3 年目となる。平成27 年度は福岡及び佐賀県内の直轄6 事務所における維持工事受注企業・災害協定締結企業の現場代理人及びオペレーター計85 人を2 日間に分け遠隔操作訓練及び座学を行った。平成28 年度は福岡及び佐賀県以外の直轄事務所における維持工事受注企業・災害協定締結企業を対象として遠隔操縦訓練及び座学を行うとともに、ICT 体験コースを新設し、4 日間計301 人の参加であった。


3.無人化施工訓練の位置づけ
無人化施工に従事できる人材の育成を目的に、無人化施工訓練の実施機関及び目標を明確化し、訓練を実施することが目的とならないように関係者の意識統一を図った。
九州技術事務所が実施する訓練は、初心者及び初級者を対象(図- 1 参照)としており、無人化施工に興味がある技能者が初めて遠隔操縦重機を操作する段階を初心者と位置づけ、図- 2 に示すようにステップアップにより写真- 1 に示す根固めブロック設置するまでを初級者とし、それ以上は実際の無人化施工工事の中で実施するOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)を基本とした。







4.無人化施工訓練の基本方針
訓練実施までのタイムスケジュールを図- 3 に示す。



訓練には無償で参加する展示企業を含め多くのスタッフが参加するため、訓練そのものの目的と目標を共有しないと参加者の満足度を向上させることは出来ない。今回の無人化施工訓練は、大きく2 つに分けて、訓練の枠組みを以下の通り設定した(図- 4 参照)。



●訓練:災害対応を想定し、直接目視及びモニター方式による遠隔操縦バックホウの操作訓練を実施する。また、桜島では過年度に訓練を実施した方を対象に初級者コースを新設した。
● i-Con 体験:i-Construction の拡大を目指し、最新のICT 建機の体験やVR による危険予知など現場で困っている問題を解決するヒントを紹介する。なお、民間企業が無償で参加することを基本とした。
以上の考えに基づき、継続的な訓練実施を目指し、以下の基本方針で開催することとした。
①無償で参加する訓練参加者が訓練を十分に楽しみ、また参加したいと感じる訓練にする。
②無償で参加する展示企業が訓練の有効性を十分に認識し、次年度も参加したいと思う訓練にする。
③訓練をオペレートする事務局が訓練の必要性を十分に認識し、次年度も開催しなければならないと思う訓練にする。
訓練に携わる参加者、展示企業、事務局がそれぞれの立場で継続的かつ意欲的に取り組むことが出来る状況を創出することを基本方針とし、訓練に直接携わった方だけではなく、各組織として継続的に参加可能になることを目標とし「3 方よし」に取り組んだ。


5.平成29 年度無人化施工訓練概要
平成29 年度の訓練内容を表- 1 に示す。



平成28 年度までは福岡県久留米市にある九州技術事務所のみで実施していたが、九州南部からは長時間の移動が伴うため九州南部での開催してほしいとの要望にお応えし、平成29 年度から初めて鹿児島市の桜島で開催した。訓練は①初心者オペレーターコース、②初心者現場代理人コース、③初心者i-Con 体験コース、④初級者(桜島のみ)の4 コースを準備し、毎日同じプログラムで桜島3 日間、九州技術事務所で4 日間開催した。
延べ7 日間の訓練で、訓練参加者が355 名、見学者89 名の合計444 名、マスコミ取材14 社と全国最大規模の訓練となった。


6.無人化施工訓練成功の秘訣
6.1 事前調査による訓練参加概数把握
実施の3 ヶ月前を目処に訓練場所と日時と各事務所経由で参加対象である維持工事受注企業・災害協定締結企業に案内し、ある程度の参加人数を概略の精度で把握する。

6.2 事前調査結果による日程確保
把握した参加人数に基づき、訓練実施日の作成、事務所ごとの参加日の割り当て及びカリキュラムを設定する。同時に、展示企業へ展示内容の調整を行う。

6.3 訓練参加者による名札作成など
訓練当日の受付状況を写真- 2 に示す。訓練参加者は随時の変更や当日変更が発生するため、名札をあらかじめ準備するのではなく、当日自ら手書きで作成し、資料も自ら順番に取ることとした。事務局の準備を最小限にするとともに、参加者自らが受け身の体勢ではなく、自主性を持って訓練に参加する意識を持つことを期待した。



6.4 班編制による効率的な訓練実施
毎日同じ訓練内容であり回数を重ねるごとに運営は効率的になるが、1 日あたり最大64 名の訓練参加者を受け入れる必要があり、混乱なく受講させるために班編制による班ごとの行動とした。また、個人を区別するため、名札とともに班ごとに色分けした腕章を着用させた。
カリキュラムは班ごとに設定し、各班には案内役となるリーダーを事務局から配置した。各リーダーは訓練場所への案内とともに訓練参加者から感想を聞き取り翌日の訓練内容に反映することとした。

6.5 役割分担による3 方よし
訓練参加者は、無人化施工機械に時間を決めて搭乗し、実際に土を掘削し、斜面を走行することで無人化施工機械特有の感覚を覚え、数多くのICT 最新重機に搭乗することにより最先端の技術に触れることが出来た。複数のメーカーの最新機種を一度に試乗できるなど予想以上の体験をすることで、満足度が向上し「また参加しよう」との気持ちを持っていただくことを期待した。
展示企業は、無償で最新機器やICT 建機を持参しており、説明スタッフも無償である。各展示企業はより多くの方に最新技術を体験してほしいとの期待で参加しており、事務局も訓練の待ち時間を有効に活用し、参加者が各展示ブースに行けるよう配慮した。
事務局として運営の主務を担っているのは受注している建設コンサルタントであり、事務所職員は、開会式閉会式あいさつ1 名、総合調整1 名、安全管理1 名、取材対応1 名、機械設定1 名の5 名程度の人員であり、アウトソーシングを徹底することによりこの規模のイベントとしては最小限の職員で実施することが出来た。職員が減少する中、持続可能な体制を構築している。
訓練に関わるすべての者(訓練参加者、展示企業、事務局)がみんなで互いに満足する「3 方よし」を得ることが出来た。

6.6 訓練参加者へのインセンティブ付与
訓練参加者に対して事務局から日当などは支払っていないため、会社として丸1 日拘束してもメリットがないと参加者が減少する。そこで、平成29 年度より訓練参加者には、九州技術事務所長名で「受講修了書」を発行した。また、(一社)全国土木施工管理技士連合会にカリキュラムを登録し、希望者には最大7 ユニットのCPDS を付与した。

6.7 展示企業の協力
展示企業は九州地方整備局と災害協定を結んでいる協会等を通じて募集を照会し、事務局に申し込みがあった企業とした。展示企業はスタッフや重機運搬を含めすべて無償で参加しており、応募していただいた企業は展示内容が重複しないように調整した上で参加いただいている。不公平を生じないように各社にバランス良く訓練参加者が体験できるように配慮した。
無償協力いただいた展示企業を表- 2 に示す。



九州技術事務所保有の遠隔操縦式バックホウ2台と合わせて最大で建設重機9 台、VR 体験3 ブースを操縦や体験することが出来た。
展示企業の方々の協力があってこそ成立する無人化施工訓練であり、ご協力に感謝するとともに次年度以降も参加いただけることをこの場を借りてお願いしたい。


7.今後の改善点
平成28 年度は初めて桜島で開催し、座学会場と訓練会場の移動の問題や初級者が10 名と少なかった。初級者コースを桜島に限定したことや今まで参加された方も初心者コースに参加されていたことなどが原因として考えられる。また、i-Con 体験コースが平成28 年度135 名に対し平成29 年度は33 名と極端に少なく、午前中の建設機械稼働率が低下した。今後、ニーズを分析した上でカリキュラムを改善し、生産性が向上した無人化施工訓練に改善する必要がある。


8.おわりに
日本は人口減少時代を迎えている。十年後に控える労働力不足に備えた建設現場の生産性向上や働き方改革に取り組まなければならない。i-Construction は「建設工事を最先端の工場へ」「建設現場へ最先端のサプライチェーンマネジメントを導入」及び「建設現場の2 つの「キセイ」打破と継続的な「カイゼン」」の3 つの視点で進めており、「ICT の全面的な活用(ICT 土工)」、「全体最適の導入(コンクリート工の規格の標準化等)」、「施工時期の平準化」をトップランナー施策として取り組んでいる。
無人化施工訓練を通じて、最新の建設技術をより現場に近い方々に体験する機会を提供し、「きつい」「きたない」「きけん」の3K を、「休暇」「給料」「希望」の新3K に変えるべく、今後も取り組んでいきたい。
最後に、無人化施工訓練の運営を中心的に実施し連日15 名を超えるスタッフを派遣していただいた東亜コンサルタント㈱の方々を始め、訓練参加者の方々、展示企業の方々及び九州地方整備局施工企画課をはじめ各事務所の方々に謝意を表したい。
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