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森山拡幅事業における工事報告

~軟弱地盤対策~


岩 屋 安 彦


キーワード:軟弱地盤、深層混合処理、中層混合処理

1.はじめに
一般国道57 号森山拡幅は、交通混雑の緩和および交通環境の改善を目的とする事業であり、交通混雑緩和・交通安全の確保の機能を担う2 車線の道路、周辺地域との連携強化の機能を担う規格の高い道路(地域高規格道路「島原道路」)という2 つの機能を有する道路である。
本稿では、森山地区において実施している軟弱地盤対策工事について報告する。






2.地形・地質概要
2.1 地形概要
当該地周辺には、図-2 に示すように西から本明川、仁反田川、有明川、山田川が有明海に注ぐ。地形は、有明川を境に西側では標高70 ~ 300m程度の小高い丘陵地形となり、東側では雲仙火山の火山噴出物が堆積した火山性扇状地形となる。
周辺の地質は、有明川を境に西側( 諫早側) では安山岩を起源とした豊肥火山岩類(安山岩や安山岩質凝灰角礫岩)が分布し、東側( 島原側) では雲仙火山岩類(雲仙基底砕屑岩)が広く分布している。



2.2 地質概要
仁反田川流域や丘陵地の谷部では、約200 年前の干拓により埋め立てられた低地部が広がり、非常に軟弱な沖積粘土いわゆる有明粘土が層厚10 ~ 20m で堆積している(図- 3)。
計画道路は島原鉄道や国道57 号に近接平行する形で計画されている。
当該地区の基盤岩を構成する安山岩や凝灰角礫岩は、計画道路左側の丘陵地形の影響を受け、計画道路の縦断・横断方向に基盤岩の起伏が激しい。仁反田川流域では過去の調査でも基盤岩の出現深度は標高- 60m 付近でも確認されておらず、構造物の明瞭な支持層が確認されていない。



3.軟弱地盤対策(固結工)
3.1設計(工法選定)
地盤改良の設計には、杭の間隔を広げることによりコスト縮減が図れており、これにより現場での作業効率も向上している。また、施工箇所が島原鉄道に近接していることから、極力、軌道に変位を与えないような工法を採用している。
今回施工した各工法の概要と特徴は、次のとおりである。


3.2 深層混合処理工(低変位型高圧噴射撹拌)
3.2.1 概要
島原鉄道の軌道への影響を考慮し、側道部においては「低変位型高圧噴射撹拌工法(LDis 工法)」を採用している。
低変位型高圧噴射撹拌(LDis 工法)は、固化材スラリーの供給を必要最小限に抑えるとともに地盤改良時に原土の一部を地表に排土することにより、地盤へのスラリーの供給に伴う体積増加をできるだけ少なくして変位を低減する地盤改良工法である。
LDis 工法の原理は、特殊攪拌翼を伴ったロッドヘッド先端のノズルから、水平方向に固化材スラリーを高圧で噴射させながら、回転・引上げることにより、対象土の固化材を強制的に攪拌するものであり、同時に超高圧のスラリー噴射による内部圧力の増加と排土攪拌盤の効果により、噴射スラリー量に見合う原土を排出させることによって、変形を最小限に抑えるものである。島原鉄道に近接している箇所については、このような工法を採用している。



3.2.2 施工フロー
施工フローは下記のとおりである。



①配合計画に従い、プラント部で固化材と混練水を所定量計量してミキサーで混合する。ミキサーで混合された固化材スラリーは、一次アジテータに貯えた後、常用圧力40Mpa にて超高圧ポンプで地盤改良専用機に圧送する。
②地盤改良専用機は、特殊先端モニターで所定の深度まで削孔し、吐出圧力40Mpa を確認後、ロッドを低速回転させながらステップ方式で自動的に引上げを行う。高圧スラリーが特殊先端モニターのノズルから高圧ジェット噴流として対象土中に噴射され、対象土を強制撹拌しながら円柱状の改良体を造成する。



3.2.3 施工上の留意点
イ) LDis 施工時における留意点として、杭径が大きく出来る傾向にあるため、杭径相応の配合・添加量で施工を行う必要がある。そのため、試験施工を行い、現場特性を把握する必要がある。
ロ) 空打部にコンクリート、転石部の障害物がある場合は削孔できないため、事前に除去が必要である。



3.3 深層混合処理工(スラリー撹拌)
3.3. 1 概要
スラリー撹拌は、セメント系のスラリーと原位置土とを混合処理機を用いて混合し、原位置で所定の強度に固化する工法である。
スラリー撹拌の特徴は下記のとおりである。

①土質条件に応じた固化材添加量を設定することで、所要強度が確実に得られる。
②粘度・砂質土・有機質土など適用範囲が広く、また、長期的にも安定した改良体を造成することができる。
③オーガー方式で打設するので、低振動・低騒音工法である。
④現地盤をそのまま固化利用するので、省資源に貢献する。


3.3.2 施工フロー
施工フローは下記のとおりである。



①所定の杭芯に施工機をセットし、リーダーの鉛直性確認を行なって0 点セットを行う。
②杭頭天端まではスラリーを吐出させずに回転・貫入する。
③撹拌翼を低回転させスラリーを吐出しながら貫入する。
④スラリー吐出・貫入時に周辺地盤への変位を少なくする為、バックホウにて空打部を掘削し極力上部方向へ変位が来るようにする。
⑤着底確認は、改良機に搭載された施工管理装置のトルク計にて管理する。
⑥着底したら着底部上位1.0m の区間で回転・引抜をおこなって、着底部の羽切り回数を350回転以上となるようにする。
⑦引抜時は、スラリーの吐出は行わずに貫入時と同様の速度と回転数で撹拌する。






3.3.3 施工上の留意点と対策
イ) 着底トルク値の決定について
スラリー撹拌工における着底判断は、回転トルク値で行うが、施工場所により多少変動する。この判断基準を明確で確実なものにするため、事前ボーリングと同位置付近で試験杭を施工してN値とトルク値の相関関係を確認している。





ロ) 供回り防止対策
当地区の粘土層は、強度が低く、更に有明粘土特有の高鋭敏性から施工に伴う強度低下が著しい。このため、地盤の土圧抵抗が少なくなり通常の供回り防止板では効果が発揮されにくく、供回りによる品質不良の原因となる。



この現象を防止するため、供回り防止板を通常のものよりも大型化し、土圧抵抗を多くする等の対策を取っている。



3.4 中層混合処理工
3.4. 1 概要
当事業における中層混合処理工は、改良杭の上部の原位置土にセメントスラリーを機械混合して全面改良する原位置固化処理工法である。
中層混合処理工の特徴は、下記のとおりである。

①改良機械のベースマシンが20t クラスのバックホウで良いため、軽量小型で機動性が高く、効率的な改良が可能である。
②大型の撹拌翼により改良処理能力が大きい。
③テーブルフロー試験により、現地土に最適なスラリーの流動性を確保し、強制撹拌混合することで改良対象土全体を均質に処理することが可能である。


3.4.2 施工フロー



①区画割:施工速度や改良材の使用量を管理するため、改良範囲を一定の面積に小分けする。
②機械セット:所定の位置に施工機をセットし、攪拌装置の鉛直性確認を行なって計器の0 点セットを行う。
③撹拌混合:撹拌翼を回転させながら固化材スラリーを吐出し、所定深度まで撹拌貫入する。
④撹拌翼を地表まで所定の速度で引抜く。
⑤次の区画に移動して②~④を繰り返す。


3.4.3 施工上の留意点と対策
イ) 施工ムラによる品質不良の防止
全面改良の中層混合処理工の場合、ベースマシンに取り付けた撹拌翼で全体を均一に攪拌混合する必要がある。しかし、撹拌翼の位置はバックホウの操作によるものであるため、オペレータの技量や感覚に大きく左右され、最悪の場合、未施工部が発生する。
これを防止するため、施工範囲周辺に目印のポールを立て見張員を配置するなどして水平位置や撹拌翼の鉛直性を確認している。
今後は、GNSS 及びマシンガイダンスシステムなどの情報化施工技術が導入され、3 次元管理による正確かつ迅速に安定した改良品質を確保し、生産性が向上することを期待したいところである。





4.おわりに
地盤改良工事については、皆様方から調査方法や対策工法についてご指導頂き、順調に工事も進捗している。
最後に昨年度からの森山拡幅事業は無事故で施工を行っており、引き続き、安全対策に留意し、無事故で工事を進めたい。
今回、貴重な資料や情報提供を頂いた工事関係者の皆様に感謝の意を表す。
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