地域と調和した河川工事を経験して

森  龍 彦


キーワード:地域参加型、ICT 技術、マシンガイダンスシステム、課外授業

(はじめに)
今回、延岡河川国道事務所様の発注により、二件の河川工事を施工させていただきました。いずれも延岡の歴史や文化に関連する工事でした。
ひとつは、工事名「須崎地区護岸補修外工事」で土木学会平成27年度選奨土木遺産に認定された全国でも最古の「畳堤」に関わる高水護岸です(写真-1)、(写真-2)。

もうひとつは、工事名「大貫地区掘削外工事」で、施工内容として三百年以上前から延岡に伝わる伝統漁法「鮎やな(写真-3)」に近接し、緩傾斜堤防や巨石張り護岸などが含まれています(写真-4)。

両方とも、永く「水郷・延岡」の暮らしに根付いて育まれてきた文化遺産であり、観光資源でもあります。
今回の河川工事の施工に際しては、従来、私どもが施工してきた工事にはない特徴もそなえていました。それは「地域参加型」の工事であったということです。平成25年5月には実践組織「天下一五ヶ瀬川かわまち創ろう会」での検討会が開催され、地域の人たちの「こうしてほしい」「こうあってほしい」という意見や願いを広く反映した河川構造物となっています。
今回は「大貫地区掘削外工事」について報告させていただきます。



(大貫地区掘削外工事の施工について)
大貫地区の施工箇所近辺には、鮎やなのほかにも、ゲートボールやジョギングなど地域住民の河川敷の利用が普段から多く、また、毎年開催される「まつりのべおか花火大会」の観覧の場所としても活用されています。
私たち施工会社は施工段階から「大貫水辺プロジェクト」の会合に加わり、地域の人たちの声を聞きながら、意見交換会にも参加させていただきました。
「大貫水辺プロジェクト」の現地視察においては、現地に計画法線や構造物の配置などを明示したり、巨石やコンクリート二次製品を使用した比較試験施工を実施し、整備手法を含め、多方面から様々な有意義な意見をいただき、実際の施工に反映させていただきました。
以上のことから、私たちは工事の目標として以下のことを掲げました。
①とにかく「いいもの」を造る。
延岡の文化として大切に永く維持されてきた施設であることや、地域住民参加型の工事であることなど、景観的にも優れたものを造る必要があります。
② 工期内に完成させる。
施工期間が「鮎やな」の営業期間と重なることなどをはじめ、いくつかの制約条件はありましたが、工期内に完成して次工程につなげる必要があります。
以上の課題を解決するため、まずは「鮎やな」営業による影響範囲外の施工を優先的にすすめ、「鮎やな」の営業終了後の施工に備えました。とはいえ、緩傾斜堤防や巨石張り護岸など主要工種の大半が影響範囲に集中していましたので、施工品質を確保しつつ工程を短縮できるような技術や工夫、施工体制について検討を行いました。
対策として、緩傾斜堤防施工については、工期短縮および自社のICT技術の習得も兼ねてマシンガイダンスシステムの導入を決めて施工しました。
また、今回の工事の見どころの一つである「巨石張り護岸」の施工に際しては、ベテランの石工職人に石の据付の指導を依頼し、据付には、巨石を挟むことができるアタッチメントを装着したバックホウを採用し、従来の職人の技能やICTなど新旧の技術を併用して施工をおこないました。
巨石は、二次製品と違ってひとつとして同じ形のものはありません。長い経験をつんだ石工は、護岸全体の全体や部分を見極めながら、石と石の組み合わせをみながら進めました。
ある日の夕方、投光器に照らされて最後の巨石の一つが、予定どおりジグソーパズルのようにピタリと天端に座りました。刹那、誰からともなく、拍手が起こりやがて拍手の渦となりました。このとき味わった感動は、施工関係者全員が忘れられない体験として共有していると思います。
緩傾斜堤防の施工は、身体の不自由な方が昇降しやすいスロープの設置をはじめ幅広階段や、車両の坂路工などの施設があり、複雑な法面勾配を形成していました。しかし、マシンガイダンスシステムを取り入れ、横断面2.5m間隔で3D化することにより、容易に解決することができ、同時に、自社のICT技術の向上にもつなげることができました。



(地元工業高校生の課外授業)
一方、近年は、地場建設業界でも少子高齢化が進み、土木技術や技能の継承が危ぶまれ、担い手の確保が叫ばれています。延岡地区建設業協会においても、毎年、地元工業高等学校とインターンシップなど職業体験を積極的に実施するなどの対応をしています。
当現場においては、地元の若い人たちに土木の魅力や仕事の醍醐味を伝え、将来、地元で担い手として、少しでも多くの青年に、建設部門で活躍してもらえればという期待のもと高校土木科2年生を対象にした「課外授業」や、学校での授業中に参加させていただくなどの取り組みを行いました(写真-7)(写真-8)(写真-9)。

このような取り組みを行って感じたことですが、今後は、機会をとらえて、様々な現場で、地元の学生たちに、こういった体験学習や「校内ハローワーク」などに現場技術者を講師として派遣したり、校内行事などに積極的に関与することにより、若い人たちに「ものづくり」の楽しさや、土木の魅力を伝えることができるのではないかという想いを持ちました。
後日、社員が、完成後の河川で遊んでいた子供連れのご家族をはじめ、近隣地区役員の方々、また、地元観光協会の方に、工事についての感想を「率直にお願いします」とインタビューをしました(写真-10)。
どなたからも口々に「いいものができたですね」「いいですね。また、子供を連れて遊びにきたいと思います」「鮎やなのお客が増えると思う」などの評価をいただき、同時に、今後の活用方法や維持管理などの課題についての率直な意見も聞くことができたということでした。
工事の完成後に利用者の感想や意見を直接に聞くことなど、はじめての体験で、改めて工事のやりがいと、そして、誇りを感じることができました。多くの人たちに支えられて完成することができて感謝ですと熱く語っていました。
施工を担当した社員にとっても、企業にとっても、素晴らしい経験になったと思っています。



(おわりに)
今回、行政・地域・施工が一体となった「かわづくり」の取り組みがなされ、施工者として、施工計画段階から、着手~完成まで、地域の人たちとの意見交換をしながら施工させていただくことができました。地域の人たちの声を聞きながら、発注者との打ち合わせの中で、一緒に工事を完成することができたことで、やり遂げた仕事に愛着を感じるとともに、地域にとって必要なものを造り上げたということに「やりがい」を感じているところです。特に担当した技術者として、そして、何よりも社内の他の現場責任者への「意識向上」につながり、技術者としてステップアップしてくれたものと確信しています。
今回の工事で得た様々な経験や課題を次の工事に活かし、さらに「いい仕事」を目指していきたいと思っています。
プリンタ用画面
前
キャッシュを生み出す公共事業=地域ブランディングへの挑戦
カテゴリートップ
これからの魅力ある地域づくりの実現について