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大淀川水系八重川(津屋原沼)津波・高潮対策の検討

~沼特有の自然環境と景観に配慮した堤防設計~


仲 武 浩 仁


キーワード津波・高潮対策、自然環境・景観に配慮、地元住民等との関わり

1.はじめに
平成23年 東北地方太平洋沖地震の発生による甚大な津波被害により、九州の太平岸沿岸では南海トラフ地震や近海での発生が注目されている日向灘沖地震等、津波への備えが喫緊の課題であり、多くの人口と資産が集中する大淀川河口部の宮崎市街地は、津波の発生による甚大な被害が懸念されている。
大淀川水系での地震・津波対策としては、平成23年度より堤防や河川管理施設の耐震対策が進められてきた。ここで紹介する津屋原沼は大淀川河口部の右支川、八重川右岸と連続しており、沼の周囲は無堤のため、津波や高潮に対する堤防整備が急務となっている。津屋原沼は汽水域特有の貴重な生物生息空間を形成しており、津波・高潮に対する堤防の検討・設計において沼特有の環境・景観に配慮した。

2.八重川(津屋原沼)の現状と堤防整備概要
津屋原沼は、大淀川水系大淀川0k200 右岸付近で合流する支川八重川の右岸0k300 ~ 0k600の直轄区間において、宮崎県が管理する津屋原沼の水面との合流部に位置し、無堤状態である。沼の背後地の浸水想定区域には、住宅や工業・流通業務施設等が密集し、福祉施設や教育施設などの公共施設も多く存在する。


1)事業目的
津屋原沼周囲の無堤区間(直轄区間及び宮崎県管理区間)における洪水・高潮・津波に早急に備えるための堤防整備を目的とする。
当該区間が位置する宮崎市は、「東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法(平成14年制定)」に基づく東南海・南海地震防災対策推進地域に指定(平成23年)されており、当該地の地震防災上緊急に整備すべき施設の整備等の対策推進は急務である。

2)事業内容
整備内容は、八重川0k600右岸から津屋原沼周辺に沿い、宮崎空港に隣接する防潮林へ接続する、延長L=約1,000mの堤防整備である。
整備目標は、河川整備計画上の年超過確率1/50の規模の洪水・高潮、並びに比較的発生頻度の高い津波(L1津波)を対象とする。
工事期間は、平成27年度の着工を経て、平成30年度の完成を目標としている。


3.津屋原沼の歴史と特徴
1)津屋原沼の歴史的な変遷
津屋原沼は、天然の潟湖ではなく、戦時中をはじめ人為的な要因(土砂の採取・掘削)による影響を受けた沼であるが、コアマモの群落やアカメをはじめとする大淀川水系の感潮域を特徴づける。貴重な動植物が生息・生育しており、多様な環境要素や水辺景観が存在する。

2)水と緑が一体となった河川空間
津屋原沼は、広大な水面とヨシ原などの湿地帯から潮害防備保安林など周辺の緑が連続した開放的な空間である。
津屋原沼は、八重川・大淀川を通じて干満の影響をうけ、1~2m程度水面が変動するため、沼は時間により表情を変える。
干潮時には、沼岸に干潟が連続し、沼口には広大な干潟が出現する。満潮時には、静穏な水面が沼奥の塩性湿地まで広がる。


3)環境要素(多様な生物のゆりかご)の存在
干潟、ヨシ群落やコアマモ群落などの多様な水際の環境を形成しており、ここでは大淀川水系の感潮域を特徴づけるアカメなどの動植物の生育・生息・繁殖の場が存在する。

4)往来する船や生活する人々の姿がある景色
沼奥には係留桟橋や船舶修理工場があり、漁船やプレジャーボートが係留されている。また荒天時には船の避難場所として利用され、地域の人々の生活や活動と密接に繋がる水辺空間である。
津屋原沼の水辺を囲む緑や干潟、穏やかな水面を背景にして、往来する船や生活する人々の姿が、津屋原沼の原風景となっている。


4.津屋原沼の目指すべき堤防整備の方向性
大淀川水系唯一の無堤区間で洪水・高潮・津波に対応できる新規築堤整備を行うため、環境保全対策検討会等での有識者の意見や地元住民の意見、地域の関連計画(宮崎県・宮崎市)を踏まえ、「津屋原沼らしさ」を保全する堤防整備を行うものとして、事業全体のコンセプトを『地域が誇れる津屋原沼タンポリ』と定め、目指すべき整備の方向性を示した。
『地域が誇れる津屋原沼』とするために、大淀川のゆりかごとなっている特徴的な自然環境を保全・創生し、地域の人々が触れ合える空間、平時の風景のなかに有事を意識できるような新しい堤防空間の創出を目指すものとした。
さらに「八重川津屋原沼整備検討会」を設置し学識者の助言を得ながら、堤防整備のあり方について議論を行った。


5.環境及び景観デザイン検討
1)ゾーニング計画
周辺の自然環境や地形特性、土地利用条件等を踏まえ、堤防整備におけるゾーニング計画を行い、堤防整備検討会及び住民部会等での意見も考慮し、ゾーン別の整備方針を固めた(図-3参照)。

2)各ゾーン別の具体的なデザイン検討
各ゾーン別の整備方針を踏まえて、具体的なデザイン検討を行った(図.4、5、6参照)。

3)堤防基本断面討
沼は八重川の高潮整備区間に隣接していることから、八重川の高潮堤防「土堤形式」を踏襲した。
沼奥の利用ゾーンは家屋が連続しており、築堤整備により、水辺の風景が一変し住民へ圧迫感を与え景観を損なう点に配慮し、堤防の前出しと堤防高の抑制のため、家屋隣接区間は「特殊堤形式」とした。なお、船舶利用区間は前面のテラス幅を確保するために同様な「特殊堤形式」とした。





6.堤防設計
堤防設計については、各ゾーン別のデザイン案をもとに環境面、景観に配慮した設計を行った。
曲線線形となる堤防と地形及び付帯施設等の関係から構造が複雑となる部分では、現実に近い立体感を把握するため、一部区間の堤防模型を作成し、整備検討会や住民部会等の協議において議論に活用した。
裏法面については、当初一枚法化を図る計画であったが、連続する法面では圧迫感が強いとの意見や住民の利用も考慮して小段のある断面とした。
また、法面の除草管理等、維持管理面では、雑草抑制効果のある改良芝の採用とともに、県のパートナーシップを利用した住民の積極的な管理 への取組みを目指した検討を行っている。

7.おわりに
景観に関する委員会等、学識者の先生、各行政機関、更には意見交換会に参加された地域住民等多くの意見を頂く事が出来たことに感謝いたします。
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