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長寿命化を見据えた橋梁補修の一事例

~国道3号矢部跨線橋の補修設計・施工事例について~


小 川 道 作


キーワード:長寿命化、橋梁補修、主桁連結

1.はじめに
近年、橋梁の長寿命化を見据えた橋梁保全が大きな課題となっており、国及び各地方自治体において、長寿命化修繕計画に基づき、橋梁補修を行っているところである。
本論は、国道3号福岡県八女市の矢部跨線橋(図-1、写真-1)において、伸縮装置部(端部床版)の損傷対策、垂直補剛材溶接部の疲労対策、RC床版下面の剥落対策等を総合的に解決する方法として採用した「主桁連結」「横桁取替」「端部床版改良」「縦桁増設」等の工法について、補修設計(損傷内容、原因の推定、対策工法)及び施工事例を報告するものである。
また、本工事に併せて実施した取組み(地域住民への説明、自治体も含めた現場研修、学識経験者との連携)についても紹介する。


2.矢部跨線橋の構造概要と損傷状況
橋梁一般図を図-2に示す。


本橋は、当時の国鉄矢部線(現在は市道矢部線)や市道、水路を跨ぐ高架橋として昭和42年に竣工した橋長77mの単純合成H形鋼橋(2車線・4径間)である。
近年、本橋は、大型車交通量の増加や高齢化(竣工43年)に伴い、全体的な損傷が発生し補修が必要となっていた。
本橋の橋梁点検、橋梁診断結果を表-1に示す。


本橋の補修設計(対策工法の決定)にあたっては、損傷の原因を的確に把握し、対策工法を決定した(フローは表-2)。


3.補修設計(損傷状況、原因及び対策)
本橋における主な損傷状況及び原因の推定と対策工法について記載する。
3.1 伸縮装置の早期損傷及び桁端部を発生源とした騒音振動
[損傷状況]
本橋は、過去に何度も伸縮装置の取替を行っているが、橋脚上の埋設ジョイントの損傷が進行し、頻繁に路面に穴ぼこ(ポットホール)が発生、併せて、端部床版の損傷も生じていた(写真-2)。
これにより大型車通過時に桁端部を発生源とした騒音振動が発生していた(図-3)。


[原因と対策工法]
根本的な原因として、本橋は、旧基準(S40道示)による構造であり、現状の荷重条件に対しては改善が必要な構造であった。
その結果、車両重量の増加、大型車交通量の増加などもあり、劣化、損傷の進行が早く、抜本的な対策が必要となっていた。
具体的には、端部床版の損傷の原因について、竣工当初より、RC床版が端横桁に直接支持されていない(隙間がある)ため、床版への負荷が増大し、損傷していた(図-4)。


また、旧構造に加え、縦断勾配が厳しく(最大4%)、交差点に近い等の現地条件も重なり(写真-3)、旧基準の構造のままでの埋設ジョイントの再設置は、本橋の厳しい現地条件の下では、耐久性に劣る(短期間のうちに再劣化)ため、また床版連結工法であれば、必要鉄筋量が大きくなり、現実的に困難であることから、ライフサイクルコストを考慮し、主桁を連結板で連続化させる「主桁連結」を採用した(写真-4)。


併せて、床版の打換(写真-5)及び端横桁の取替(写真-6)を行い、床版と端横桁に隙間がない構造とした。(現行道路橋示方書では床版を端横桁で支持する構造)


3.2 垂直補剛材上フランジの亀裂損傷
[損傷状況]
中間横桁を取付けている垂直補剛材の上端溶接部全箇所について浸透探傷試験(写真-7)を実施した結果、ほぼ半数に疲労亀裂が確認された。


[原因と対策工法]
原因として、主桁間隔が2.7mと長く(写真-8)、床版の変形による溶接部の疲労が原因と考えられた。これについてはFEM解析、載荷試験により検証を行い、確認している(図-5)。


対策として主桁の間に縦桁を増設し、桁間隔を1.35mに短くすることで荷重を分散し、既設部材への負荷を軽減した(写真-9)。


3.3 RC床版下面増厚部材のうき(剥離)
[損傷状況]
本橋は平成5年に、床版の補強を目的に、床版下面増厚(図-6)されているが、全体的にうきが確認されている(図-7)。


[原因と対策工法]
これは大型車通過による床版の繰り返し変形による新旧コンクリートの付着切れが原因と考えられ(図-8)、対策としては、うき部への補修材の再注入を行うこととした(写真-10)。また前述の縦桁増設を行うことにより、付着性の向上を図ることができる。


3.4 橋脚・地覆等のひびわれ、剥離・鉄筋露出
経年劣化による、ひび割れ、剥離・鉄筋露出箇所は、ひびわれ注入、ひびわれ充填、断面修復の工法により、処置を行った(写真-11)。


3.5 支承の腐食損傷
支承については、既設鋼製支承の腐食損傷が進んでおり、かつ今回主桁連結工に伴う水平力・鉛直力の増大や、端横桁取替に伴う支承位置の変更が必要となることから、今回工事に合わせて、超小型ゴム支承へ取替を行った(写真-12)。


4.施工
全体工事工程表を以下に示す(表-3)。
工事は、平成22年7月~平成23年3月(変更:23年5月)の11ヶ月を要した。
次より、施工事例について紹介する。


4.1 主桁連結
本橋は、直線橋ではなく、曲橋、縦断勾配があるという条件のもと、線形を細部まで実測し、連結板を一つ一つ現地に合わせ制作(図-9)、連結板と主桁の間にはフィラープレートで調整し、隙間がないように処理した(図-10)。


4.2 横桁取替
施工中の安全性及び一時的な構造耐力の低下を回避するため、既設横桁の撤去は新設横桁を設置した後に行うこととし、新設横桁は、既設横桁から、中間横桁で200㎜、端横桁では、支承サイズを考慮し250㎜離れた位置に設置することとした(写真-13、図-11)。


4.3 アンカーボルト削孔
本工事においては、支承40基の取替のため、160本のアンカーボルト削孔を行う必要があった。(橋脚部320㎜、橋台部350㎜以上の削孔)
しかし、本橋は、竣工40年以上経過しており、既存の下部工図面がないため、まず鉄筋探査を行い、配置案作成にあたっては、逐次設計条件(配置条件)を確認しながら、削孔した(図-12, 写真-14、15)。


結果、160本削孔するのに、391本の規定長以下の削孔が生じ、日数も当初20日から40日を要したが、鉄筋を切断することなく処理を行った。

4.4 床版改良
床版改良(打換え)は国道上の夜間片側交互通行規制(22:00~6:00)で日々の交通開放が必須条件であった。図-13に一晩の作業工程を示すが、桁端床版撤去、鉄筋組立、床版(ジェットコンクリート)打設、橋面防水及び舗装まで一晩で行うことから、時間的に非常に厳しい工程であった。そこで、床版撤去作業は、当初はつり作業を主に考えていたが、施工業者提案により、ビームジャッキ設備(写真-16,17)を用いて、床版を鉄筋ごと切断し、床版を持ち上げて、撤去する方法で行い、はつり作業の大幅軽減、作業時間短縮を図ることができた。


4.5 仮設工
仮設工については、地元説明会で住民の方から橋梁下の市道の通行確保要望があったため、支承取替時の仮設は、全面ベント(図-14)から通行止めを伴わない変形ベント、(写真-18)仮設横桁(写真-19)に変更した。その結果、地元住民の方への影響を極力少なくすることができた。


5.本工事に併せた取り組み
本工事においては、施工に併せて様々な取り組みをおこなったので紹介する。

5.1 地域住民の方への密な説明
本橋に近接して、家屋が密集しており、工事による交通規制が生じ、工事期間も長期に渡ることから、施工前、施工中、施工後、地域住民の方への説明を密に実施した(表-4、写真-20,21)。


また、併せて工事チラシ、市報、ホームページなど様々な広報手段を用いた情報提供を行い、工事への協力をお願いした。
工事期間中、国道、市道の交通規制、工事に伴う騒音等で住民の方々には、ご迷惑をお掛けしたが、工事に関する苦情は1件もなかった。こまめな情報提供(説明)の取り組みが、工事に対しての地元の方の理解・協力に繋がったと考える。

5.2 自治体も含めた現場研修
職員の技術力向上に資するため、事務所及び近隣自治体職員(久留米市、八女市、広川町)を対象に現場研修を行った(写真-22,23)。


研修メニューを表-5 に示すが、工事の進捗に応じて、研修メニューを設定し、講義編、現場実習編の2部構成で行った。


研修後のアンケートでは、国・自治体職員双方から、自分の技術力向上に役だったとの意見が多数寄せられ、自治体職員からは、国・自治体合同の現場研修について、今後の継続を希望する意見が多数挙がり、自治体の要望が大きいことを認識した次第である。九州地方整備局全体としても自治体との連携、支援を目標として掲げており、今後も積極的に同様の取り組みをしていきたいと考えている。

5.3 学識経験者との連携
本工事の設計及び施工にあたり、九州地整の橋梁保全検討委員である九州工業大学大学院山口教授から、設計、工事の中で、長寿命化を図るためのアドバイスを頂いた(表-6, 写真-24)。また、前述の現場研修会においても、講義を頂くことができた(写真-25)。


6.おわりに
今回、複合的な鋼橋の劣化に対して、総合的対策を行ったが、本施工事例が、今後の補修工事の参考の一事例になれば幸いである。

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