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「複雑な地質構造を呈した破砕帯におけるボアホールカメラを併用した穿孔探査システムの適用とその効果に対する一考察」


九州地方整備局 岩 畠 弘 和
九州地方整備局 井 川 裕 樹


1.はじめに
東九州自動車道は、北九州を起点に大分県、宮崎県を経て鹿児島市に至る延長436kmの高速自動車道である。今回の「一考察」は、佐伯ICから宮崎県北浦IC間の新直轄区間の一部を担う大分県東南部の佐伯市蒲江丸市尾浦から葛原浦地区おいて、トンネル新設(浦之迫トンネル南工区)工事において実施されたものである。
坑口部付近には、事前調査により断層破砕帯が確認されているため、「安全・安心」施工のため、施工に先駆け、ボアホールカメラを併用した穿孔探査システムを活用し、その効果に対する一考察を行ったものである。


2.道路概要
道路規格 : 第3種第1級
設計速度 : 80km/h 暫定2車線
トンネル等級 : B等級
計画交通量 : 5,400台/日
大型車混入率 : 16.8%


3.施工箇所周辺の地形・地質概要
施工箇所周辺の地形「図-3」は、九州山地が豊後水道に達した東端部であり、付近の海岸線は大部分が山地で急崖を形成したまま海に没するリアス式海岸地形を形成している。
丸市尾浦地区は、尾根間は発達した枝沢が北方と北西方、南西方に入り込み深い谷と狭い低平地を形成している。葛原浦地区も同様の谷があり、狭隘な谷低平地がみられ、山頂標高は255mである。
本工事施工箇所周辺の地質「図-4」は、四万十累層群下部四万十層群の上部白亜系が分布する。基盤は四万十層群の槇峰層(泥質岩優勢層)と八戸層(砂岩優勢層)である。槙峰層は、頁岩や千枚岩等の泥質岩が主体であるが、部分的に塩基性火山岩類(玄武岩や緑色岩等)チャート等の珪質岩などの「異地性岩体」を狭在している。
八戸層は、厚い塊状砂岩を主体として、部分的に砂岩頁岩の互層を伴うとされている。
槙峰・八戸両層は、多く走行断層に切断され、地層が瓦状に積み重なるような、非常に複雑な「履瓦構造」を形成するとされている。堆積物がプレートの移動により陸地に付加された付加体であるため、砂岩や頁岩など大陸棚等の近海での堆積物に、塩基性火山岩類やチャートなど、遠洋の海底で堆積した異地性岩体が、断層面を境に接して分布するなど、極めて著しい地質変動が被ったことを示しており、山地内には、断層群や節理面といった、多くの脆弱部が発達しているものと推定される。


4.事前調査結果・施工の留意事項について
4-1.地表地質調査
  1. 明瞭なリニアメントがあり、市尾内断層F-45の存在を岩相変化から推定される。
  2. 断層位置は不明であるが、直立した断層が推定され、低速度帯と破砕帯の存在を推定している。
4-2.調査ボーリング「図-5」
水平 70.0m-1カ所
鉛直 18.0m-1カ所
  1. 57.5m地点でF-45に対比される多亀裂帯、47.4~60.4m間が破砕帯となるが、全般的破砕レベルは低い。リニアメントとの関連があり、東西方向に立った状態で連続している可能性がある。
  2. 終点付近では、亀裂を伴うCⅡ区間であり掘削作業による緩みが生じ節理面の抜け落ち崩壊に留意したい。
  3. 水平ボーリングは湧水は確認されず、坑口部では浅所からCⅡ級の良質コアとなり地山としては良好、ただし、断層を推定している区間での降雨時の滴水は発生する。
  4. 槇峰層(Mms)中には比較的厚い砂岩を挟むことが判明。
  5. 坑口部付近の土被りは15m程度と薄く、斜面直交型である。


4-3.弾性波探査
  1. 速度層は、風化等によって垂直方向に5層の速度層に分割されている。
  2. F-45付近では、断層破砕帯等の脆弱部を示唆するような低速度帯及び速度層の異常分府は認められず、風化作用以外の脆弱化はないと推定される。

5.設計支保パターンの選定
事前の調査結果から、本区間(STA383+45~383+85=40m)は、施工基面から上位1.5D範囲の弾性波速度層がVp=2.8km/s 層に位置することからDⅠ-iパターンで計画されている。また、施工基盤部が破砕質であると予想され、長期的支持力が十分期待できないため、将来的な安定性を考慮しインバートが計画されている。

6.前方探査における課題等について
6-1 施工時における課題
  1. 事前調査の範囲が限定され、十分な情報が得られない。
  2. 地表面からの弾性波探査では、湧水の有無、地形や地質構造的に褶曲等の影響により、トンネル基面の弾性波速度が正確に予測出来ない場合がある。
  3. 坑口部や断層破砕帯で実施する対策工(補助工法)の必要区間長や施工範囲を事前に設定出来ない。
  4. 切羽で発生する突発湧水や地山崩壊といった不測の事態を予測する事は困難、一旦発生すると切羽が止まり、工程・工事費に多大な影響を及ぼす。
6-2 今回の切羽前方探査により解明する事項
  1. 実際の切羽から前方地山の状態を把握できる。
  2. 対策工(補助工法)について、施工範囲、対策工の検討・支保設計が事前に可能となり、掘削作業の安全性の向上、品質の向上が図れる。
  3. 施工時データの蓄積とフイ-ドバックにより合理的な施工が可能となる。
  4. 対策工の検討、段取りが事前に出来ることで、確実な工程管理、経済性が向上する。
7.前方探査の実施状況
山岳トンネルにおける切羽前方探査は、いくつかの手法があるが今回は、坑口部で穿孔検層及びボアホールカメラによる探査を行い、中間部においては、探りノミによる探査を実施した。
① 穿孔検層による切羽前方探査「図-6」
ボアホールカメラによる探査に加えて、機械データに基づく穿孔検層により穿孔エネルギーに基づく切羽評価を実施した。
「図-6」に探査結果を示し、以下の評価を得た。


  1. 1)16mまでは、穿孔エネルギーが200~300J/m3と低い値であった。
  2. 2)16m位奥は削孔エネルギーが200J /m3をほとんど上回っており、STA.383.3+52.8(16m奥)付近より切羽が安定することが想定される。
  3. 3)先行時スライム(削孔水の色)からもある程度の劣化状況が目視出来た。
② ボアホールカメラによる前方探査「図-7」
「図-7」にボアホールカメラによる探査


  1. 1)坑壁画像から多亀裂帯、破砕帯、風化変質帯それぞれの性状の違いが目視により明確になり、削孔水の画像から上下関係の判断の判読が可能であった。
  2. 2)左右の亀裂位置関係から破砕帯の走向の予測が可能となった。
  3. 3)複雑に交差する破砕帯の位置関係と掘削時の切羽状態を事前に推定出来ることで、 掘削時の支保パターン選定に有効であった。
  4. 4)水平ボーリングの結果とボアホールカメラの探査結果より総合的な切羽評価が可能となった。
8.支保パターンの選定及び変化位置について
今回の切羽前方探査の結果に基づき、坑口部分の支保パターン及び設計上の支保パターン位置との差違についても合せて確認を行い、以下の方針で選定した。
  1. 今回の探査から設計上の支保パターン位置との差違はみられなかった。
  2. 土被り2D(29.1m)に関しては、DⅢaとした。
  3. 破砕帯区間(L=40m)に関しては、断層(F-45)の影響もあり全体的に亀裂の発達が顕著で軟質化しており、基盤部も破砕質であると予測されるため、長期的支持力が十分期待出来ないものと判断し、将来的安定性を考慮しインバートありのDⅠ-iとする。なお、インバート区間に関しては、覆工のスパン割を考慮して42mと設定した。
  4. 切羽前方探査を踏まえて、L =68.7m以降は安定した地山区間に該当する。したがって、頁岩系の上限値パターンとしてCⅡパターンとした。
9.まとめ
山岳トンネルは、地中の線状構造という特殊性から、事前地質調査により得られる情報には限界がある。今回、結果的に補助工法として充填式フォアポーリングで対応出来たが、複雑な地質構造の坑口部において前方の地山状況を適切に評価すると共に、設計上の支保パターン位置との差違の確認により支保パターンの選定の有効な手段と出来たことは、作業の安全性確保と同時に経済性の面から有効であったと考えられる。

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