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美しい魅力ある九州の川づくりをめざして
                   九州地方整備局 原 田 佐良子
 
 1 背 景
 平成2年に「『多自然型川づくり』の推進について」の通達が出され、河川が本来有している生物の良好な生息・生育環境に配慮し、あわせて美しい自然環境を保全あるいは創出する「多自然型川づくり」が始まりました。
 その後、平成9年には河川法が改正され、河川環境の整備と保全が河川法の目的として明確になるとともに、「河道は多自然川づくりを基本として計画する」ことが位置づけられ、現在ではすべての川づくりにおいて実施されるようになりました。しかしながら、様々な工夫を行なった川づくりがある一方で、場所ごとの自然環境の特性への考慮を欠いた改修や他の施工区間の工法をまねただけの画一的で安易な川づくりも多く見られることをうけ、「多自然型川づくりレビュー委員会」が設立されています。
 この中で、これまでの取り組みと課題について整理し、これからの川づくりの目指すべき方向性を明らかにするとともに、その推進のために実施すべき施策についての提言がとりまとめられ、これをうけ平成18年10月13日に 「多自然川づくりの推進について」 通達が出されました。
 

 
2 川づくりの現状(その1)
 「『多自然川づくり』とは、河川全体の自然の営みを視野に入れ、地域の暮らしや歴史・文化との調和にも配慮し、河川が本来有している生物の生息・生育・繁殖環境及び多様な河川景観を保全・創出するために、河川管理を行うことをいう。」と定義されています。多自然型川づくりは特別なモデル事業であるかのような誤解を与える「型」から脱却し、普遍的な川づくりの姿としての「多自然川づくり」へと展開していくことが必要です。課題が残る川づくりを解消していくとともに、川づくり全体の水準の向上を図ることが急務となっています。
 しかしながら、レビュー委員会で提言されているように、九州管内においても多自然川づくりの思想が理解されていない事例がまだ見られるのが現状です。"多自然型川づくり"を試行錯誤ながら取り組んだ時代以前に逆行したといえる事例も多く見受けられます。
 

河川風景に馴染んでいるか

 

川づくりの目標に対して適切な工法選定となっているか

 

画一的な掘削断面となっている

 
 3 川づくりの現状(その2)
 これまでの多自然型川づくりの事後評価においては、施工箇所周辺の河状変化、魚類、植物などに着目しているものの、川の連続性を考慮した評価になっていないという点が課題となっています。
 

15k200重ね合わせ図

 
 そこで、低水水制工を例にとり、整備前後の航空写真、平面図、定期縦横断図の情報から一連区間の河道の変化を読みとり、不足する視点を整理しました。
 

15k400重ね合わせ図

 

 

 

 
 その結果、水制などの整備は整備箇所の上下流の流速、流向などに変化を与えるため、河道管理、河川環境上重要な河床の状況、砂州の状況に変化を与えていることわかりました。
 またこれまでに不足していた視点として、①河岸工法の議論ばかりで、河道計画、河道管理から切り離していた ②河道の変化等の特性を踏まえた上で川づくり目標を作成していなかった ③目標に対して、河道の変化等を予測した上での工法選定となっていなかった といったことが抽出されました。
 
4 これからの多自然川づくりの取り組み
 ~美しい魅力ある九州の川づくりを目指して~
  これまでの川づくりの現状を踏まえ、九州の川づくりの取り組み方針を策定しました。
  1) 技術の向上と情報交換
  ) 多自然川づくりの理解と推進体制
 九州地方整備局河川部、九州7県、政令指定都市(福岡市、北九州市)で組織する"九州地区多自然川づくり協議会"において、年2回『川づくり現地検討会』、全体報告として年1回の『うるおいのある川づくりコンペ (詳細内容は別途 [九州の水辺に人のにぎわいを!] を参照ください) 』を開催し、多自然川づくりの技術向上と情報交換を推進します。
 川づくり現地検討会では、川づくり施工箇所において良かった点、課題が残る点、提案等についてグループ討議を行うことで川づくりに必要な視点等を導き出すことを目標としています。
 平成20年度から、現役学生が河川事業への関心を高めるきっかけづくりのために九州内の大学と連携して行います。
 

現地検討会風景

 

グループ討議風景

 
  ) 魅力ある河川景観の保全・形成に関する情報交換
 九州地方整備局内における取り組みとして、施工事例をとりまとめた「美しい魅力ある河川景観を目指した事例集(河岸編)」、職員自らが担当する河川の季節ごとの風景を撮影する"川の魅力再発見プロジェクト"「九州の川づくり八景~九州川のフォトライブラリー」を常時参考資料として活用できるようにしています。
 

 
 2) 多自然川づくり技術研究 
  ⅰ) 川づくり設計プランの作成 
  これからの川づくり目標は、河川全体の営みや河川管理全般を視野に入れる必要があります。そのためには、現況河道の特性は何か、治水上、環境上、景観上、地域の方と川との関わり上の課題は何かを把握する必要があります。重要なことはこれまで蓄積してきた既往調査結果を活用して川を読み解くとともに、読み解いた川の特性を事務所全体での共通認識として、川づくりだけではなく、維持管理計画、危機管理等へ継続的に活かしていくことです。現在、継続するしくみづくりについては河川部で議論しているところです。
  「川づくり設計プラン」のイメージとしては、下記のとおりです。
 [様式-1]川づくり全体構想
 河川の管内図に流域全体を捉えた川づくりの構想
 [様式-2] 現況河道特性図 
①  現況河道特性図:航空写真による 河道の変遷、旧河道、横断図の重ね合わせ図より読み取るみお筋の変化、被災履歴、低水路内の安定性等を整理して川の弱点を読み解く
②  環境・地域特性図:環境資源の把握、場の特性、人と川との関わり、季節ごとの河川景観特性等を整理して川の魅力を読み解く
③  河道変化図:改修の前後の変化により河道変化の特性を読み解き、工法選定の参考とする
 [様式-3] 川づくり設計プラン
   川づくりの目標と目標を達成するための整備メニュー
 川づくり設計プランに関しては、今後試行的に随時進めていくこととしていますが、河道管理の技術力向上、事務所全体での課題と目標の共有化を図るしくみとして非常に有効
であると考えています。
5 まちを元気にする川づくり
  前段で川づくりに関する課題を整理しましたが、地域連携を図りながら、河川景観にも配慮した先進的な川づくり事例も増えつつあります。
  すばらしい取り組み事例の一部を紹介します。
 1) 千年あかり~筑後川水系花月川豆田地区
 筑後川水系花月川では、水衝部対策として河岸
整備を行うにあたって、「花月川豆田地区川づくり懇談会」を発足し官民協働の川づくり整備プランを作成し、施工を行いました。        完成後は、地元豆田商店会主催の"花月川河川改修記念祭典"が開催され、河川敷では郷土芸能が行われるとともに、水際に設置した竹灯篭が幻想的な花月川を演出しました。これがきっかけとなり、毎年10月に開かれる「日田天領まつり」の関連イベントとして、花月川の河畔を約2万本の竹灯篭をともす「千年あかり」が始まりました。竹は森林の荒廃防止のために、地元高校生との協働で切り出すなど、川を軸とした取り組みは着実に広がりを見せています。
 

 
 2) 懐かしい自然の川~遠賀川水系遠賀川  溝堀地区
 遠賀川が流れる直方市では「遠賀川を利活用してまちを元気にする協議会」が設立され、遠賀川を軸とした地域づくりに取り組んでいます。その中で、流下能力を向上させ、かつ河川敷の利用、水際の自然環境に配慮するため、既設護岸を撤去し、緩傾斜護岸とし、勾配の高さにも変化をもたせる整備を行いました。どこから眺めても遠賀川を近くに感じられるようになっています。
 緩傾斜にしたことで流速の緩和が図れ、治水上の効果も得られています。日常の利活用としても多くの方が訪れており、今後の広がりに期待が高まっています。
 

      写真
 
 6 さいごに
   前章で記述したとおり、川を軸としたまちづくりの可能性は無限大です。そのためには、河川の弱点・魅力を把握した上で美しい川づくりに取り組むことが必要不可欠です。子どもたちが、ふるさとを、そしてふるさとを流れる川を大切にする心を育む“かわまちづくり”をすすめています。
 

 
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