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松原ダムの水車を利用した曝気装置による水質改善装置
 九州地方整備局 福 島 秀 明
 九州地方整備局 武 富 一 秀
 
1 はじめに
 松原ダムは、筑後川上流部の本川と津江川の合流点付近に洪水調節・水力発電の多目的ダムとして、昭和48年に完成した重力式コンクリートダムで、昭和54年から再開発事業により、河川の維持用水確保及び水道用水としての目的を新たに加えている(図-1)。
 

図-1 松原ダム位置図

 
 松原ダムでは湛水開始から近年までは、著しい水質悪化は問題となっていなかった。しかし、平成14年6月においては春期から晩秋にかけて、ダム湖低層水の嫌気化によるものと思われる放流水の濁りや、同年5月から10月にかけてアオコの異常発生等、概ね半年間を通じて水質の悪化が見られた。この原因としては、ダム湖の表層水温の上昇、ダム湖底の酸素不足等が考えられ、ダム貯水池の水の流動環境の改善が必要であると考えられた。このため、改善対策として、散気管式曝気装置により、循環対策及び低層嫌気対策を行ったので紹介する(図-2)。
 

図-2 曝気装置設置イメージ図

 
2 水質悪化状況
 平成14年に発生した水質悪化現象は、主に「放流水の着色現象(写真-1)」、「アオコの異常発生現象(写真-2)」である。
 

写真-1 放流水の着色現象(発電放流口)

写真-2 アオコの異常発生現象(松原ダム)

 
  放流水の着色現象の発生原因については、ダム湖底付近の有機物の分解に酸素が消費され、ダム湖底層部での酸素が不足し、底泥から金属イオンが溶出することに起因していると考えられる。また、アオコの異常発生現象の発生原因は、例年に比べ、小雨傾向で河川からダム湖に流入する水が少なかったこと、日照時間が長く気温及びダム湖表層水温が上昇したことで、アオコが育成しやすい水温25℃以上等の環境条件が整ったことに起因していると考えられる(図-3)。この対策として、曝気装置によりダム湖の水を循環させることで改善をすることとした。
 

図-3 水質悪化要因イメージ図


 
3 曝気方式の決定
 曝気装置における散気方式は、間欠方式と連続方式があり、連続式には多孔型と単孔型の方式がある。間欠方式は貯水池の撹拌を目的としており、気泡が大きいため溶存酸素の改善には適しない。連続方式は溶存酸素の改善を目的としており、今回の設備の目的に適した方式である。多孔型の場合、溶存酸素の改善に優れるが、気泡が小さいため撹拌能力が弱い。単孔型は、溶存酸素の改善は多孔型に比べやや劣るが、撹拌能力は高い。
 今回の設備においては、溶存酸素の改善及び貯水池の撹拌に効果の期待できる「連続方式の単孔式」とする。
 
4 コンプレッサーの選定
 ダム用曝気装置においては一般に容積式のコンプレッサーが使用されている。
 DO濃度の改善、アオコ発生の抑制を検討した結果、能力としては吐出空気量3.7m3/minの2台となった。
 コンプレッサーの選定については次の条件により選定した。
 ・吐出空気量3.7m3/min
 ・吐出圧力0.7MPa
 ・オイルフリー
 ・空冷式
 ・冬季は運転しない
 コンプレッサーの主な特長を表-1に示す。
 

表-1 コンプレッサーの主な特長

 
  レシプロ式の場合、気筒数にもよるが圧力変動が大きく、弁機構を有しているため、弁の不具合によるトラブルが予想される。
 スクロール式、スクリュー式においては潤滑水を使用した場合であれば同等の能力であるが、潤滑水を使用しない機器を選択した場合、吐出空気量が必要とする量に達しない。
 ツース式の場合、補機もシンプルであり必要とされる能力は確保できている。よって、今回の施設は、ツース式コンプレッサを使用する。
 
5 動力の検討
 コンプレッサの動力源としては、一般的に電動機が用いられているが、今回は放流水を利用した水車を動力源として適用できないか検討をおこなった。
 松原ダムでは、再開発事業を行ったのち、ダム直下において1.5m3/sの河川維持用水を放流している。この内、0.5m3/sは小水力発電に利用している。残りの1.0m3/sを利用し、曝気装置の動力としての適用検討を行った。
 松原ダムにおいては、出水期に洪水対応としてダム貯水位を低下させている。落差が最も少ない出水期において必要な動力が得られるか計算を行った結果が図-4のとおりである。
 

図-4 水量と有効落差の計算結果

 
 使用水量0.5m3/sにおいて26kw×2台相当の動力が得られた。
 水車の使用により電気料を縮減することができるためコスト計算を行った(表-2)。曝気装置の運転期間は概ね4月から10月までの期間としている。
 

表-2 コスト計算

 
6 曝気の役割と効果
 曝気装置の役割は、ダム湖底に設置された曝気装置の排気口から空気を排出することで空気の浮力による上昇流を発生させ、水をかき混ぜ、ダム湖の上層と下層の水を混合・循環させることである(写真-3)。
 

写真-3 曝気装置稼働状況

 
その結果、ダム湖底層の溶存酸素を増やし、底層からの金属イオンの溶出を抑制し、水の着色現象を抑制することができる。また、ダム湖表層の水温を低下させ、アオコの増殖を抑制することができる(図-5)。
 

図-5 曝気装置による改善イメージ図


 
  曝気装置設置後は設置前に比べ、ダム湖底付近の溶存酸素量及びダム湖の表層水温が改善されている(図-6)。

図-6 ダム湖表層水温及び湖底溶存酸素量の改善効果(鉛直分布図)


 
7 曝気装置の問題点
 今回の設備に使用した機器は、汎用品の組合せであったため施工費は低く抑えられたが故障が発生した場合の原因究明に時間がかかることがあった。コンプレッサーは、パッケージ式の汎用機器を改造して使用したが、機器の制御用の機器はそのまま使用したため、軽故障が頻発することがあった。一般使用であれば異常発生により機器の保護のため、運転停止し機器点検を行うが、今回の設備において重大な故障が生じない限り極力停止しないようにしていたため、汎用部分との制御方法においての統一が図れていなかった。今後は制御系について統一を図る改良を行う必要がある。
 
8 まとめ
 松原ダムにおいては、維持用水量が十分にあったため、水車を利用した曝気装置について十分なエネルギーが得られ、そのため水質改善についても十分な効果が得られているところである。技術的には改良すべき点も残されているが、今後も運用を行いながら対処していきたいと思っている。
なお、水車を利用した水質改善設備は、沖縄総合事務局と㈱荏原製作所において特許出願中であり、実際の使用にあたっては、沖縄総合事務局と㈱荏原製作所と協議の上決定されたい。
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