九州技報 第42号 随想
ヨーロッパを旅して思う
株式会社ミゾタ 顧問 村上輝久
 
数年前、イギリスのコッツウォールズ地方の村々をテレビで見たのがきっかけで、どうしても自分のこの目でその村を見たくなり、英語もあまり話せないのに、気ままな一人旅をしたときのことである。
このコッツウォールズ地方は、ロンドンから北西方向ののどかな丘陵地帯にあり、中世時代を今に伝える「英国で最も美しい村々がある」といわれている。
村には絵から出てきたような蜂密色の石造りの家々が並び、その家々の前を流れる小川のせせらぎには小さな魚や水鳥がたわむれている。丘のほうを見れば羊たちがのんびり寝そべっている。
ハニーカラーの石造りの家並みと周囲の緑との見事な調和、ほんとうに美しい。
このような風景はいくつもの村々に広く点在し、独特の文化、伝統を今なお持ち続けていることはすばらしいことだと思われる。
このコッツウォールズの旅は、ロンドンから約10時間のバスツアーで行った。日本人の参加者は私と現地に留学している学生の2人で、あとは世界中からの観光客でした。皆この自然のすばらしい、英国らしい光景にうっとりし、それぞれの思いを残して自国に戻ったことであろう。
国際都市ロンドンはいたるところに広大な公園やたくさんの緑がある。公園の特徴は「ほとんど自然のまま」と言ってもよい。どこまでが芝生でどこから花壇かわからないし、雑木林がそのまま残されていたりする、しかし広さは格別である。 この多くの公園は、広大な王室所有の土地や貴族の私有地だった庭園が公園のもとになったという、まさに公園都市ロンドンは貴族社会のおとし子といえるだろう。
産業革命でロンドンの都市機能が急激に拡大したときも、緑は都市生活に不可欠として残されたそうである。「世界中の観光客が集まる繁華街から少し離れたところに野生のリスや鳥の群れ」といった光景は日本では見ることが出来ないだろう。
街にはビック・ベンやウエストミンスター寺院をはじめ、歴史的な古い建造物が多くあり、格調の高い街並みを感じる。通りには古めかしい型のタクシーや2階建てバス、隣と同じ高さの建物群そして一歩郊外に行けば自然そのままという、私はこのようなイギリスがなぜか好きである。
ロンドンに行けばぜひ行きたいと思っていたのがパブである。
パブとはかんたんに日本流に訳せば「大衆酒場」になるのだろうか。このようなパブはイスなど僅かしかおいてないところが多く、たいていは立ち飲み立ち食いである。いろいろな飲み物を手にしたオジサンたちが何時間もおしゃべりしている、なかなかいい光景である。ロンドン滞在中2度飲みに行くことが出来たのは貴重な体験でした。
私は、イギリスをはじめドイツ、オランダ、フランス、スエーデン、チェコなどほとんどのヨーロッパ諸国を回ったが、どこの国も旅の楽しさは、村も町も地方もそれぞれがみんな個性的な顔をみせてくれることにある。
日本のように、あらゆるものが東京に一極集中していることはない。また、地方が東京化しているようなこともない。あらゆる土地がみんな自己を主張している。
ところが、わが福岡はどうだろうか? 戸建て住宅街の目の前に高層マンション、お寺の隣に高層マンション、周りとの調和を考えず、古きよきものをどんどん壊し、ミニ東京化している。さもそれが発展しているかのような錯覚をしていないだろうか。
ヨーロッパを旅するといつもそう思うのである。
また愛犬から散歩の合図だ。新たな一日が始まる。