九州技報 第42号 【特集】第4回「技報賞」懸賞論文
『優秀賞』自然豊な川と人々のくらし
福岡大学大学院 水圏システム研究室 修士1年 梅崎健史
 
1 はじめに
私は、私たちの生活を支える国土づくりのあり方は、自然豊な川と地域のネットワークを作っていくべきだと考える。なぜそう考えるかというと、その昔、川では子どもたちが泳いでいたり、魚を採っていたりする光景はよく見られていた。このため、流域に住む人々(大人)は日頃から川に注意を払い、川を汚すことはなかった。また、川で起こるちょっとした変化にも流域に住む人が敏感であり、災害にも対策ができていたと考えられる。しかし、昭和30年代を境に全国各地で都市化が進んだため、川が治水を重視し、コンクリートに覆われた構造物へと代わっていった。そこで、今現在の川は(写真-2)のようになってしまった。このことからも、都市部においては流域住民の方々が川に入ることができなくなってしまった。その結果、小学生をはじめ流域住民の方々が川で魚を採ったり、泳いだりすることはできないでいる。しかし、現在、私が住んでいる福岡市の都市河川は下水道整備のため、川がきれいになってきている。しかし、洪水対策のため川に入れるところは限られてしまっている。そこで、私たち若者が本来の川のあるべき姿を築いていく必要がある。その結果、すべての生命あるものが住む場所が築けるのではないかと提言する。そこで、私たちが今、何をできるかと考えたところ、まず行動すること、つまり、地域でボランティア活動をすることで何かを見出せるのではないかと考えた。

写真-1 昭和30年頃の様子

写真-2 現在の都市河川

 
2 自然体験の経験について
はじめに私が実際に体験して感じたことを述べると、私が福岡県大川市に住んでいたとき、父親と潮干狩りに行って、しじみを採ってきてその後、しじみの味噌汁を食するととても気持ちが豊になった。こういった「自然体験」は「道徳観・正義感」が高まると考えられる。実際に、文部科学省が平成10年にまとめたデータで「自然体験」が豊富な子どもほど、「道徳観・正義感」が身についている傾向が見受けられたことから、この体験はとても効果的であるに違いないと考えるので私は推奨したいと考える。
 

図-1 自然体験と道徳観・正義感との関係

 
3.1 福岡市での取り組み
私は今年に入って小学生に対して自然体験を経験してもらうゲストティーチャーを福岡市早良区の原西小学校、有住公民館に対し行った。
1)原西小学校の事例
小学校の総合学習の時間を利用して、水のきれい度調査(パックテストを用いCODの測定)、魚の観察、水生昆虫の観察の3つを行った。対象河川は原西小学校のすぐ側を流れている2級河川室見川の支流である金屑川である。
 

写真-3 水のきれい度調査の様子

写真-4 淡水魚観察の様子

 
2)有住公民館の事例
小学生を対象に室見川に生息している淡水魚・甲殻類をミニ水族館として展示し、その魚の特徴をクイズした。対象河川は2級河川室見川の下流域である。
 
3.2 鹿児島県川内川での取り組み
昨年の7月に川内川の豪雨災害が発生後、私がボランティアスタッフとして復旧作業しに行った。私たちが担当した場所は鹿児島県さつま町であった。その後同年10月に、第6回九州川のワークショップin川内川が鹿児島純心女子大学にて開催され、川内川の豪雨災害でボランティアスタッフとしてどう感じたのかを発表した。そこで、大学生をはじめ、若者が多く集まり、川仲間が結成された。そして、JOC(Joint of College)が設立された。
 

写真-5 復旧作業の様子

写真-6 川仲間

 
4 考察
私が体験したボランティア活動を参考にし、感じたまま、私たちの生活を支える国土づくりのあるべき姿を考察する。
4.1 ゲストティーチャーの効果
まず、原西小学校の場合に関して、授業以外のときは、小学生は川に入れないようになっていた。しかし、このようにゲストティーチャートすることによって川に入ることができる。そこで、今回は小学生に川に関心をもってもらうようにするために、金屑川に生息する淡水魚・水生昆虫の観察を行った。そして、その結果、小学校では積極的に川に関心をもとうという試みが行われる予定である。その企画内容は魚などの生きものを取り入れた「劇」、子どもが描いた「壁画」である。
次に、有住公民館の場合に関して、今回、実際に子どもたちが私たちの指導で淡水魚・甲殻類を捕まえた。そして、子どもたちが採った淡水魚・甲殻類でミニ水族館を展示することができた。その結果、小学生自身がやったという意識が高まり、ゲストティーチャーが終わった後、小学生から淡水魚の勉強をしたいという依頼があった。そのことからも川に関心をもったのではないかと考えることができる。
4.2 若者間のネットワーク
JOCが設立したことによって、再度今年の5月にさつま町を訪れた。そこで、昨年、復旧作業を行った小牧酒造のところへ行き、災害後どのくらい修復したか、どういった状況で今働いているのか聞き取り調査した。訪れた時は営業を再開していた。そして、私たちに感謝をされたことから、私たちは被害を受けた現地の人の手助け、新しい生活をはじめるきっかけをつくったに違いないと感じた。また、復旧作業のときには私たちが現地の方々にお世話になり、逆に人の温かさを知ったときだったのかもしれない。そう思った理由があり、今年の7月に今度は熊本の緑川で大雨が降り、ボランティアスタッフが必要であったが、私たちは参加することができなかった。それは、熊本に地方から来た人を受け入れる体制がなっていなかったからだ。しかし、鹿児島の場合は体制が整っていた。NPO法人の方が連携していたので、私たちが今回、川内川に行くことができた。このことから、私たちの身にも災害がいつ起きるかわからないので、こういった連携、ネットワークは必要であるに違いないといえる。それが、九州全域でできるのは、大人ではなく私たち大学生である。今現在、九州域でJOCに参加しているのは、福岡大学、九州大学、近畿大学産業理工学部、九州工業大学、九州東海大学、熊本大学、鹿児島純心大学、筑後川まるごと博物館、遠賀川チームのメンバーである。そこで、JOCが防災の強化のモデルケースとして、発信することができるのではないかと考える。さらに、今年の第7回九州川のワークショップin別府に参加することによって、大分大学などのネットワークができればとても災害対策ができると考えられる。よって、大学生が地域のネットワークをつくり、最終的に九州が中心となって災害に強い、日本をつくりあげていく必要があると考えられる。
 

写真-7 小牧酒造での聞き取り調査

写真-8 JOCのネットワーク

 
5 まとめ
ゲストティーチャーの効果でもあげたように、小学生が川にふれあう自然体験をすると川に関心が持つようになり、道徳観・正義感が増し、将来の国土づくりの第1歩になるのではないかと考える。なぜこのように、私が説明するかというと、今後の日本を背負うのは今から社会に出る若者が中心となっていくからである。そう考えたら、私たちがとても近い将来、活躍することができる存在であるから、若者が積極的に小学生にゲストティーチャーとしてその流域で生息している淡水魚を説明すると小学生は「自然体験」ができ、また、大学生はネットワークを築くことができとても住みやすい社会になると考えられる。その他にも、災害ボランティアに参加し、なかなか地域の連携がとれないでいるなか、私たち大学生・若者が中心となってネットワークを築き誰もが安心して暮らせるまちを造っていきたいと考えている。そうすることによって、川というものがとても身近な存在へと変わり、たくさんの人が川に集まり、川が安全でかつ教育の場ともなりえるのではないかと考える。この2つのことから、ゲストティーチャーを通して、自然豊な川をつくって行き、そして、災害対策として若者がネットワークを作り、国土を造っていけば、誰もが住みやすいまちになるのではないかと考える。
  
参考文献
 1)関正和:大地の川
 2)高辻伸彰:川を活かしたまちづくり事業の比較分析に関する研究,福岡大学工学部卒業論文,2005.
 
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