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九州技報 第42号 トピックス
宮崎市北部の海岸における侵食防止対策
九州地方整備局 酒井 俊次
 
1 はじめに
宮崎の海岸は、「観光みやざき」の象徴の一つとして、宮崎県民のみならず、宮崎を訪れる多くの観光客にも魅力的な存在である。しかし、かつて直線の砂浜が続いていた宮崎市中央部の大淀川と市北部の一ツ瀬川の間の海岸(図-1)は、昭和50年代頃より海岸侵食が顕著になり、かつての面影がなくなりつつある。この影響は景観のみならず、背後地の公的施設や住宅地への安全性や、環境、利用など様々な点において地域に影響を及ぼし始めている。
このような海岸侵食を防止するために、宮崎県では、昭和57年より護岸や離岸堤の設置などによる対策を実施しているが、侵食の速度がそれを上回っているのが現状である。このため、侵食が顕著ではあるが十分な海岸保全対策が行われていない一ツ葉有料道路シーガイアICから一ツ瀬川間の海岸について、国の直轄事業による対策の実施に向けて準備をしているところである。
本報では、宮崎市北部の海岸の侵食防止対策に関する現状と課題を報告する。
 
2 侵食の現状とその要因
宮崎市北部の海岸は、かつて運動会やソフトボールができるほど広大な砂浜であったが、現在、広い砂浜は残っていない。約20年前にはあった砂浜が、現在では完全に消失した場所もある(写真-1)。航空写真の比較によれば、侵食の程度を示す指標の一つである水際線の後退量は、この40年程度の間に平均40m、最大で90m程度にも及ぶと推定されている(写真-2)。
 

図-1 宮崎市北部海岸位置図

 

昭和60年   写真-1 海岸の変化の様子(一ツ葉有料道路PA付近)

平成19年

 

写真-2 宮崎市北部の海岸の変化の様子

 
その結果として、
1)背後に存在する一ツ葉有料道路の通行止め回数の増加
2)県の天然記念物であるアカウミガメの産卵、孵化数の減少
3)国際大会も開催されていたサーフィンをはじめとしたマリンスポーツを行える場の減少
などが既に生じている。さらに侵食が進行すれば、これらへの影響がさらに顕著になる他、石崎川から一ツ瀬川にかけた旧佐土原町地域の低平地の住宅地への浸水被害等も懸念される。
侵食の要因は、複合的なものと考えられ、複数の要因がどの程度の影響力をもっているのか断定することは困難であるが、主なものとしては次のようなことが挙げられる。
短期的な要因としては高波浪がある。この海岸は日向灘に面しており、台風襲来時は南側から、
冬期は外洋のうねりによる北側からの高波浪が卓越し海岸に打ち付ける。この高波浪により、海岸が削り取られて浜崖ができ、前述した一ツ葉有料道路では道路の際まで崖が迫ったこともある(写真-3、写真-4)。なお、当該箇所には、現在、護岸が設置されている。ただし、高波浪は海岸を削り取るエネルギーも大きいが、土砂の運搬エネルギーも大きく、海岸全体としてみれば土砂を供給する役割も果たしている。
 

写真-3 平成10 年低気圧通過時に発生した浜崖(現在は護岸が設置されている) (宮崎県提供)

 

写真-4 一ツ葉有料道路に迫る浜崖(平成10 年)(宮崎県提供)

 

 
長期的な要因としては、大きく2 つ挙げられる。一つは、ダム建設や河川改修、かつて行われていた砂利採取などにより、河川を経て到達し、海岸を形作るために必要となる土砂量が減少したことである。もう一つは、導流堤や港湾、空港など海岸沿いに建設された構造物による、沿岸流とそれに伴う漂砂の動きの変化である。沿岸流は、北(一ツ瀬川側)から南(大淀川側)への流れが卓越しているが、海岸に突出した構造物がこの流れを変化させた結果、海岸全体としては侵食が進んだが、一方で、一ツ瀬川導流堤や宮崎港の北側、宮崎港内の遮蔽区域内など局所的に堆積している場所もある。また、侵食ではないが、砂浜幅の減少という観点から見れば、海岸背後に飛砂や潮害防止を目的に設けられた保安林の海側への前進も影響している。
 
3 侵食対策の実施状況
宮崎県では、宮崎市北部の海岸のうち、石崎川以南の住吉海岸(L=7,020m)について海岸保全区域に指定し、昭和57年から侵食防止対策事業を実施してきている。対策としては、港湾区域より北側を対象に、緩傾斜護岸や離岸堤(平成10年から実施。一部、養浜工も含む。)を設置している。この他に、海岸の背後に存在する保安林の防護を目的として護岸が設置されている箇所もある。また、石崎川以北の大炊田(おおいだ)海岸(L=1,836m)についても平成17年に海岸保全区域に指定している。
しかし、シーガイアIC以北については、侵食の進行が顕著であるものの、保安林の保護を目的とした護岸を除き海岸保全対策が行われていない。
また、これまで設置してきた護岸等の構造物も、高波浪により被災が頻発している(写真-5)。このため、まだ十分な対策が行われていない海岸に対して、早急に、かつ集中的に海岸保全に向けた対策を実施することが求められている。このような状況を踏まえて、シーガイアIC以北の住吉海岸から大炊田海岸にかけての区間(ただし、石崎川河川区域を除く)6,856m について、国の直轄事業として対策を実施できるよう準備を進めているところである。
 

写真-5 平成17 年台風14 号来襲時に被災した緩傾斜護岸および自然海浜

 
4 新たな侵食対策の検討状況
平成11年の海岸法の改正により、海岸保全対策を行う際は防護のみならず利用や環境への配慮が求められるようになった。そのため、新たな侵食対策法についての検討を行っている。
まず、学識者と行政関係機関からなる住吉海岸技術検討委員会が、平成15年より県の主催により行われてきた。委員会では、侵食のメカニズムや、突堤や離岸堤など様々な海岸保全対策法の比較検討などを、平成19年3月まで6回にわたって行った。委員会では侵食対策の考え方について、以下のようにまとめている。
1)侵食対策としては、砂浜を回復させるための養浜工と、土砂の沿岸方向の移動を抑制する構造物の組み合わせが適している
2)地域や関係者間における侵食対策への共通認識を得ることが必要である
3)防護だけでなく、環境や利用との共生に、より一層配慮する
4)流砂系における土砂移動の適正化が必要である
この委員会を受け、直轄事業化に向けた準備を行っている国も主体として加わるとともに、利用や環境の観点に精通した学識者や地域住民等を新たに委員に加えた宮崎海岸侵食対策検討委員会(委員長佐藤愼司 東京大学教授、22名)を設立した。
新委員会の第一回会合は平成19年9月7日に開催された。第一回委員会では、これまでの検討経緯や、委員会に先立ち6月に地域住民を対象として行った懇親会で出された意見の紹介等を行った。また、委員会前には、対象海岸の現地視察を行い現状を確認した。
この中で、これまでの委員会での検討を踏まえ、現時点における侵食対策の基本案と考えている、人工的に砂を海岸に運び入れる「養浜」と、砂の移動を制御する構造物(ヘッドランド)を併用する案を提示している(図-2)。
 

図-2 現在提案している侵食対策案のイメージ

 
海岸保全施設として通常考えられるものとしては、護岸や離岸堤、突堤などがある。これらの施設は防護の観点ではある程度有効であるが、サーフィンや漁業、アカウミガメの上陸など、利用及び環境の観点からすると、海岸に占める構造物の割合が高くなることからあまり好ましくない。また、砂浜が消失した場所の護岸が、高波浪により、過去何度も被災していることを考慮すると、大きな外力に構造物の保有する耐力のみに期待して対抗するには限界がある。これに対して、砂浜は、環境やマリンスポーツ等利用の観点からはもちろん、形を変えながら波のエネルギーを吸収する、いわば緩衝装置として作用するため防護の観点からも大きな役割を果たす。従って、いずれの観点からも適切な機能を有する砂浜を海岸保全施設の一つと位置づけ、これを確保すべく、失われた砂を人工的に運び入れる「養浜」が基本的な対策と考えている。
しかし、海岸侵食のメカニズム自体は何も変わっていないことから、養浜を行うだけの対策では、いずれ侵食され元の状態に戻る。従って、砂浜を一定量確保するためには、養浜を継続的に行う必要がある。深浅測量や航空写真等から分析したデータによれば、当該海岸からは毎年20~30万m3 程度の砂が消失していると考えられている。これは言い換えると、毎年20~30万m3の砂を供給し続けなければ現状維持すらできないことを意味するが、これを継続的に行うことは、経済的な観点から、現時点では課題が多いと考えられる。従って、経済的にも、長期的に砂浜の機能を保持できるようにするという観点から、沿岸漂砂の移動を制御し、できる限り養浜した砂が安定してとどまることができるような構造物を合わせて設置することが適切と考えられる。構造物は、前述の通り、設置の仕方によっては環境や利用の観点から影響が大きくなる可能性がある。しかし、砂の移動を適度に制御できる程度にとどめることで、漁業やマリンスポーツなどの海域の利用、カメの上陸の妨げなどへの影響を最小限に止めることができると考えられる。
 
5 まとめと今後の課題
ここまで、侵食対策の現状について述べてきたが、今後行う対策については、委員会での審議や地域住民の声を踏まえて更なる検討が必要である。例えば、養浜を行うとしても、土砂の供給先の確保や、生態系への影響評価など課題は多い。なお、養浜に関しては、昨年度、大淀川の河道掘削土砂の一部を石崎浜に運搬し試験養浜を実施している。
今年の台風4、5号で大部分が砂浜から流出したが、その移動状況や環境への影響などをモニタリングし、データを蓄積しているところである。実際の対策も、このようなことを少しずつ実行しながらモニタリングをし、その都度、効果や影響等を検討しながら次のステップに進むという順応的な対応により事業を推進することになると考えられる。
また、やや長期的な取り組みとなるが、河川からの土砂の供給量を増やす対策として、河川管理者のみならず、ダムや森林の管理者や学識者が加わった宮崎県中部流砂系検討委員会を平成19年10月に設立している。
海岸侵食問題は、様々な要因が複合しているだけに簡単に解決することは困難であるが、できることから少しずつでも実行していくことが鍵になると考えられる。
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