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九州技報 第42号 論文
伊良部大橋の耐久性向上を目的としたコンクリート調査・検討について
沖縄県 砂川 勇二
沖縄県 川田 佳之
 
1 はじめに
伊良部大橋は、沖縄本島の南西約300kmに位置する宮古島と伊良部島を結ぶ延長約4.3kmの離島架橋で、本橋部3,540m、海中道路(埋立)部600m、取付橋梁170mで構成される。
伊良部島は、離島であるが故に医療、教育、福祉等の面において多大な不利・不便を余儀なくされており、過疎化の進行や産業の衰退等といった離島特有の諸課題を抱えている状況である。この様な離島苦解消を図るため、昭和49年に当時の伊良部村から国への架橋要請活動を皮切りに、継続的に要請活動が展開されてきた。
沖縄県では、平成4年度から基礎調査を開始し、平成17年度までには、県の環境影響評価条例に基づく手続きやその他の条件整備を整え、平成18年3月に起工式を行って工事に本格着工している。
伊良部大橋の建設は、平成17年10月に合併により誕生した宮古島市の一体化と効率的な行政を支援するとともに、伊良部島の医療・教育・福祉の向上、架橋による物流コストの低減や市場拡大による地域経済の活性化等、宮古圏域の地域振興に大きく寄与するものと期待されている。
本橋は、亜熱帯海洋性の島嶼環境下にある海上長大橋であり、ひとたび劣化を生じると維持管理に膨大な費用・時間を要することが容易に想定される。このような厳しい環境の中で、道路橋示方書に示される100年耐用を目標とする本橋の設計・施工に際しては、最も厳しい環境条件を考慮する必要がある。そのため、本橋では100年耐用を目標としたコンクリートの耐久性について検討を行ってきており、今回は主に材料的な観点から調査検討を行った内容について報告する。
 
2 コンクリート調査概要
コンクリートの耐久性を阻害する主な劣化原因は、塩害とアルカリ骨材反応(以下、ASRという)である。今回の調査は、主にASRに対する耐久性の向上を目指し、劣化を生じた既存構造物の調査を実施してその原因を把握するとともに、材料的な観点から検討を行う事により、伊良部大橋建設に用いる最適なコンクリート材料を選定することを目的として実施した。
 

図-1 位置図及び伊良部大橋一般図

 
.1 調査項目
調査は以下の項目について行い、主に資料収集、現地調査、室内試験を行い、材料の検討にあたっては、コンクリート耐久性検討委員会を設置し、委員会の中で審議・検討して頂いた。
1)宮古島における骨材の使用状況
2)宮古島で使用されている骨材を用いた構造物のASR発生事例調査及びASR発生実構造物の調査(沖縄本島、宮古島)
 
3 コンクリート調査結果
.1 宮古島での骨材使用状況
現在、宮古島には6社のJIS認定生コン工場があり、伊良部島には2社の生コン工場があるが、JIS認定を受けていない。
出荷の内訳は、公共事業がJIS規格品で骨材に台湾産川砂利・川砂、沖縄本島本部産砕石、中国産川砂が使用され、民間事業がJIS規格外品で骨材に地元産砕石(琉球石灰岩の砕石:白バラス)、台湾産川砂利・川砂、中国産川砂となっており、出荷割合は半々程度である。(表3-1参照)
 

 
公共事業では、粗骨材に一部本部産砕石が使用されているが、基本的には粗骨材に台湾産川砂利、細骨材に台湾産川砂(いずれも台湾花蓮産)が使用されている状況である。
なお、中国産川砂は最近輸入され始めた骨材で使用実績が少なく、ASRに対する影響が不明確であることから検討対象から除いたが、その後中国側で輸出が禁止となり現在は使用されていない。
.2 ASR発生事例
県内において宮古島で使用されている骨材を用いた構造物で、ASRが発生している実構造物の事例を調査した。表3-2に一覧表を示す。表で、宮古島、石垣島と記載されている構造物以外は、沖縄本島における事例である。
 

 
本調査の結果から、宮古島で主に用いられている台湾産川砂利及び川砂は、ASRを発生させる可能性があることが判った。また、本部産砕石はその主岩種の石灰岩がASRを発生させるのではなく、火山岩の貫入層が混入した場合にASRを発生させる可能性があることが判っている。
.2.1 沖縄本島におけるASR発生事例
本調査は、構造物の外観調査及びコア採取を行い、室内試験により骨材に含まれるASR反応性骨材の確認及び生成ゲル(アルカリシリカゲル)の確認を行った。
 反応性骨材の確認は、抜き取ったコアから薄片試料を取り出し、偏光顕微鏡観察によりASRを引き起こす可能性のある岩種の有無を確認した。生成ゲルの確認は、SEM(走査電子顕微鏡)観察により、コンクリート内に存在するゲル状物質の形状を観察し、併せてEPMA(電子線マイクロアナライザ)により各試料に含まれる元素の化学分析を行った。分析によりSi、Na、K等のアルカリ成分を含むゲルは、アルカリシリカゲルであると判断できる。
ここでは、主に外観調査及び生成ゲルの確認について記載する。
1)山下垣花高架橋(粗骨材:台湾産川砂利)
山下垣花高架橋は、台湾産と本部産の粗骨材を混合で使用して昭和58年に建設されている。外観調査では、最大で1.0㎜程度のひび割れが認められた(写真3-1、図3-1)。
 

写真3-1 山下垣花高架橋橋脚部ひび割れ状況

 

図3-1 ひびわれ状況図

 
SEM観察により、ASR生成物質の特徴である白色のゲル状物質が認められ、EPMA分析による化学組成はSi、Na、Kが含まれることから、ゲルはアルカリシリカゲルであると判断された(写真3-2、3-3)。
 

写真3-2 ゲルの生成状況

写真3-3 赤枠の拡大写真とゲルの組成分析

 
2)C橋(細骨材:台湾産川砂)
C橋は、粗骨材に本部産砕石、細骨材に台湾産川砂を使用して昭和61年に建設されている。ひひび割れ幅は最大で0.25㎜と軽微であるが、網目状のひび割れが発生している(写真3-4)。
 

写真3-4 C橋橋脚部ひび割れ状況

 
偏光顕微鏡観察では、細骨材に反応性骨材が確認された。コア内の細骨材の周囲にゲル状の物質が見られ、SEM観察、EPMA分析の結果からアルカリシリカゲルであることが確認された(写真3-5、3-6)。
 

写真3-5 ゲルの生成状況

写真3-6 赤枠の拡大写真とゲルの組成分析

 
.2.2 宮古島におけるASR発生事例
これまで、宮古島にはASR発生事例はないと言われていたが、現地調査を行ったところ、D橋及び世渡橋にて明らかにASRと思われる事例が見つかった。
 検討委員会において、自然環境下の実構造物には、外部から塩分の浸透はあってもアルカリの浸透はないとの意見と、海洋環境下では海水から塩分・アルカリ両方の浸透があり、両者がASRに何らかの影響を及ぼしているとの意見があったことから、D橋のASR発生箇所において、塩分・アルカリの浸透状況も確認した。
1)D橋(細骨材:台湾産川砂)
D橋橋脚のひび割れは、主に南側面の海面上0.7mから4m付近に多く発生していた。橋脚梁部の南側面にも若干のひび割れが確認できた(写真3-7、図3-2)。
 

写真3-7 D橋橋脚部ひびわれ状況

図3-2 ひび割れ状況図

 
D橋は粗骨材に本部産砕石、細骨材に台湾産川砂が使用され、平成3年に建設されている。採取されたコアのSEM観察、EPMA分析の結果、コアの細骨材周辺からアルカリシリカゲルが確認された(写真3-8、3-9)。
 

写真3-8 ゲルの生成状況

写真3-9 赤枠の拡大写真とゲルの組成分析

 
また、全塩分量分析の結果から、W/C=50%のコンクリートで建設後14年後において鋼材腐食発生限界濃度である1.2kg/m3に近い相当量の塩分量が浸透している事が確認された(図3-3)。
 

図3-3 含有塩分量分布

 
水溶性アルカリ分析結果からは、ひびわれの有無に関わらず外部からのアルカリ量の浸透が確認された(図3-4)。
 

図3-4 水溶性アルカリ量分布

 
D橋橋脚は塩分量、アルカリ総量規制が行われたコンクリートを使用しており、同様な品質で使用する伊良部大橋の下部工コンクリートにおいても、外部から相当量の塩分・アルカリが浸透することが十分考えられる。
塩分量、アルカリ量の浸透は、平成12年度に実施した池間大橋の調査においても同様の結果が得られている。
2)世渡橋(粗骨材:台湾産川砂利)
世渡橋は池間大橋の取付部に施工された橋梁で、
A1橋台にひび割れが発見された(写真3-10、図3-5)。使用した骨材の資料がないことから、コアを採取して原因がASRであるかの確認を行った。
コアの破断面を見ると、全てのコアで丸い川砂利が確認でき、粗骨材が本部産砕石ではなく、台湾産川砂利であると判断された。また、コアの破断面の骨材周辺に濡れ色を呈した白色析出物が見られ、ひび割れが鉄筋位置まで進行し鉄筋が腐食している状況も確認された(写真3-11)。このゲル状の析出物のSEM観察、EPMA分析の結果、アルカリシリカゲルであることが確認された(写真3-12、3-13)。
 

写真3-10 世渡橋橋台部ひび割れ状況

 

図3-5 ひび割れ状況図

写真3-11 採取コア破断面

写真3-12 ゲルの生成状況

写真3-13 赤枠の拡大写真とゲルの組成分析

 
 
4 コンクリート耐久性検討委員会
「伊良部大橋(仮称)コンクリート耐久性検討委員会」は、大城武委員長(琉球大学名誉教授)、川村満紀委員(金沢大学名誉教授)、松下博通委員(九州大学大学院工学研究院教授)、河野広隆委員(土木研究所 材料地盤研究グループ長)[役職は平成17年当時]の4人の委員で審議して頂き、次の提言を頂いた。
1)台湾花蓮産川砂利は、各種構造物調査結果からASRの発生に無害でないと言える。台湾花蓮産川砂についても、伊良部大橋と同様な過酷な海上環境においては、一部の構造物でASRが発生している。伊良部大橋は、さらに100年耐用という厳しい条件が期待されていることから、伊良部大橋に限定し、十分な品質管理が可能で過去にASRの損傷被害例のない沖縄本島本部産砕石と沖縄本島新川産海砂を使用することが望ましい。
2)県内で生産されているJIS-Ⅱ種規格のフライアッシュは、伊良部大橋で使用するコンクリート量に対して十分供給可能であることが確認されている。耐久性を向上させる観点からはフライアッシュの下部工に対する使用は推奨されるが、コスト面等の諸課題を十分考慮する必要がある。
 
5 調査・検討結果
今回の調査で、宮古島で使用されている台湾産骨材によるASRの発生が確認され、本橋と同様な環境で建設後十数年しか経過していない構造物で、相当量のアルカリや塩分の浸透も確認された。
100年耐用を目指す海上長大橋である伊良部大橋としては、委員会からの提言を受け、本橋に限り過去にASRの発生事例がない骨材である、粗骨材(本部産砕石)、細骨材(本部産砕砂と新川産海砂の混合)を使用することとした。
また、伊良部大橋と同様な環境下にある実橋梁から得られたデータから表面塩化物イオン濃度と塩化物イオン拡散係数を推定したところ、道示の塩害に対する耐久性の基となった「コンクリート橋の塩害対策資料集:国総研」に示される算定値より大きくなり、道示での想定以上に過酷な環境であることが判明した。この値では、「エポキシ樹脂塗装鉄筋を用いる鉄筋コンクリートの設計施工指針:土木学会」の塩化物イオン浸入に伴う鋼材腐食の照査を満足しない結果となる。
そのため、県内で産出されるⅡ種のフライアッシュを用いた配合試験を行い、施工性、強度発現等の性状を確認の上、内割20%(65kg)、外割25kgを配合したフライアッシュコンクリートを採用し、2基の下部工において打設を完了している。フライアッシュの検討詳細については、機会があれば別途報告したいと思います。
 
6 おわりに
100年後、本橋が健全な状態で供用されていることは残念ながら確認できない(私が生存していない?)と思いますが、本調査・検討で得られた成果により、孫の代まで利用される橋梁であって欲しいと期待しています。
最後に、本検討にあたり、多大なご協力を頂いた検討委員他多数の方々に、この場をお借りして感謝とお礼を申し上げます。
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