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九州技報 第42号 論文
鷹島肥前大橋(仮称)の建設について
長崎県  松尾 勝
長崎県 中村 泰博
 
1 はじめに
平成18年1月1日の市町村合併により松浦市となった鷹島町は、九州の西北端伊万里湾の入口に位置する面積約17km2、人口約2,500人の「しま」である。
産業としては農業・漁業・石材加工業が盛んであるが、島外への交通手段がフェリーのみであるため島民の通勤・通学、買物などの日常生活は不便を強いられている。
特に、救急医療時における本土への搬送については深刻な問題となっている。
また、物資輸送のコスト高により、産業・経済の発展にも支障をきたしている。
さらに、モンゴルとの歴史的な繋がりから、平成5年に開村したモンゴル村を中心とした観光振興を図っているものの、人口減少と高齢化を止めるには至っていない。
このため、鷹島肥前大橋(仮称)の整備は「短い時間で、いつでも、確実に」本土との往来を可能にすることで、救急医療がより迅速に行えるようになるなど「安心で安全で便利な生活」を確保し、輸送手段の改善による「活きのいい産業」の振興や「より大きな観光ネットワーク」の形成を促進し、地域の発展に大きく寄与するものとして平成9年度から国庫補助事業として採択され平成20年度完成を目標に事業を推進している。
鷹島肥前大橋(仮称)は長崎県と佐賀県を1,251mの橋梁で跨ぐ大規模橋梁であり、建設に当たっては設計段階から様々なライフサイクルコストの縮減対策を検討してきた。
本報では、鷹島肥前大橋の概要ならびにコスト縮減に向けた取り組みについて報告を行うものである。
 

写真-1 架設地点空撮

 
2 一般県道鷹島肥前線の概要
① 区 間
  長崎県松浦市鷹島町~佐賀県唐津市肥前町
② 延 長 5.13km
  (長崎側陸上部2.5km、橋梁部1.25km、佐賀側陸上部1.38km)
③ 道路規格 第3種第3級
④ 設計速度 50km/h
⑤ 車線 数 2車線
⑥ 幅  員 6.0(10.0)m{橋梁部6.0(9.75)m}
 

図-1 一般県道鷹島肥前線平面図

図-2 鷹島肥前大橋(仮称)橋梁一般図

 
図-2 鷹島肥前大橋(仮称)橋梁一般図
 
3 斜長橋部の概要
3-1 設計の概要
① 橋梁諸元
 橋梁形式:5径間連続複合斜長橋
      主塔(RC構造)、主桁(鋼構造)
 活荷 重:低減活荷重
 橋  長:840m
 支  間:75+145+400+145+75m
 主塔 高:100m
 航路 高:27m
 基本風速:45m/s
 架設方法:側径 間(大ブロック架設)
      中央径間(張出架設)
② 橋梁形式の選定
橋梁形式の選定については、学識経験者、官庁関係者からなる鷹島肥前大橋(仮称)橋梁技術検討委員会(WG検討会)により審議を重ね検討を行った。
委員会(WG検討会)は平成12年から平成16年までの計6回(WG検討会は9回)開催され、コストミニマムを念頭に置いた橋梁形式が採用された。
以下に、採用された形式、検討内容について簡潔に述べる。
(1) 橋梁形式の選定
トラス橋、斜張橋、吊橋の3橋種で比較検討を行い、最も経済的となった中央支間長400mの斜張橋を選定した。
(2) 支間割の選定
3径間連続斜張橋の場合に側径間端橋脚部で死荷重時に発生する負反力対策として、中間橋脚を設けた5径間連続構造を選定した。
(3) 主塔形式の選定
RC主塔と鋼製主塔を比較検討し、工程面では劣るが経済性に有利なRC主塔を選定した。
なお、本主塔は海上部に構築されるため、道路橋示方書の塩害に対する検討に従い、かぶり等による塩害対策を行った。
主塔は海面上からの高さが105mと非常に高い。海面からの飛来塩分の到達距離は、コンクリート標準示方書(施工編)の「塩化物イオンによる鋼材の腐食の照査」によると、水平方向到達距離に対し、高さ方向到達距離は1/25としている。しかし、この根拠については明示されてなく、またこの値は現地の特性により変化するため、安全性を考慮し高さ方向の距離を海岸線からの距離とし対策区分を以下のように設定した。
 

図-3 主塔対策区分

表-1 主塔塩害対策区分

 
また、主塔基礎については海底面からの支持層が4m~6m程度と浅いこと、水深が30m程度であり仮締め切りの適用が難しいことから鋼製ケーソンによる直接基礎とした。
 

写真-2 鋼製ケーソンとアルミ陽極

 
ケーソン基礎についてはRCケーソン、複合ケーソン、鋼製ケーソンの3案について検討を行い、複合ケーソンは製作工程の複雑さに見合うほどの経済性が無いこと、RCケーソン基礎は重量が重く現有の起重機船では吊上げが不可能なことから、鋼製ケーソンが製作・施工上の問題点が無く経済的であると判断した。
また、鋼製ケーソン海中部の防食については、多々羅大橋、来島大橋の防食方法として実績がある塗装を併用した50年耐用のアルミ陽極を工場にて設置し、50年後に陽極を海中で再取付けする流電陽極方式とした。
(4) 主桁形式の選定
鋼床版形式3案(1箱、2箱、2箱グレーチング)と合成桁を含むコンクリート床版形式3案(鋼I桁、鋼管桁、PC桁)の概略検討を行い、経済性及び維持管理性に優れ設計施工、維持管理に技術的課題が特にない鋼床版1箱桁を選定した。
また、桁の耐風設計においては「支間長/桁幅」パラメータ(この値が大きい、すなわち細い桁ほど耐風条件が厳しくなる)が重要であるが、既存斜張橋に対して本パラメータの目安となる「支間長/有効幅員」を比較した、本橋の幾何形状は国内最大の斜張橋である多々羅大橋と同程度に厳しい耐風設計条件であり、確実な耐風対策が必要であった。
 

表-2 国内斜張橋における最大支間長と「最大支間長/有効幅員」パラメータの比較

 
このような中、コスト縮減の可能性を追求した断面として、風洞試験により防護柵に物止め板を設置したフェアリング無し断面の耐風安定性を確認し、桁断面形状についてはフェアリングと地覆を設置しない構造を選定した。
 

(a)物止め板無し           (b)物止め板有り

写真-3 物止め板の整流効果

物止め板を設置することで、迎角3°の前縁上部の剥離を小さくしている。

 

写真-4 主桁部分模型

 
(5) 設計活荷重の低減
鷹島肥前大橋(仮称)の設計活荷重は、計画路線の位置づけと他の離島架橋における実情を把握して、安全性の確保を大前提としつつ、建設コストの縮減に結びつけられる合理的な設計活荷重として、低減活荷重を採用した。
 

図-4 B活荷重戴荷図

図-5 低減活荷重戴荷図

 
なお、床版・床組みに関しては疲労耐久性の確保に配慮して、現行の道路橋示方書のB活荷重を採用し、主桁・主塔・ケーブルについて活荷重を低減した。
内容としては、B活荷重に対して戴荷長10mを6m、主戴荷荷重のうち等分布荷重P2を従戴荷荷重程度に減じてP2/2とし、従戴荷重については、主戴荷荷重の戴荷箇所以外の部分にP2/2を戴荷した。また、道示の群集荷重は㎡当たり5人(60kg/人)の歩行者が同時に利用していることを想定しているが、長崎県の既設離島架橋の歩行者交通量調査の結果、歩行者が極めて少ないことから、群集荷重については3.0kN/㎡に対して1.0kN/㎡とした。
(6) ケーブルの種類、施工方法
斜張橋のケーブルには、実績が豊富にある工場製作ノングラウトケーブルと、新尾道大橋で採用されるなど、近年施工実績が増えてきた現場製作型ノングラウトケーブルの2種類について検討を行い、防錆面で問題が少なく、輸送・施工性及び経済性で有利な現場製作型ケーブルを選定した。
また、ケーブル施工方法については工期・工費・保護管の信頼性で優れる保護管先行方式を選定した。
 

図-6 ケーブル断面図

図-7 桁側ケーブル定着構造模式図

 
また、主塔側定着鋼管については、将来的なメンテナンスを最小限に抑えるため表面処理についてはプラズワイヤー工法により施工した。プラズワイヤー工法とは、アルミ・マグネシウム合金をプラズマ溶射することにより100年以上錆を防ぐ工法であり、新技術に関する工法としてNETISにも登録されている。
 

写真-5 プラズワイヤー工法施工状況

 
3-2 施工の概要
① 海上橋脚の施工
1P・2P・5P橋脚は橋脚の柱の塑性ヒンジ発生位置を海上部に設け、海上部橋脚(上柱)と海中部橋脚(下柱)の2段構造とした。
塑性ヒンジは以下の理由から海上部に設けた。
・柱基部までの水深が深く地震後の復旧が困難なこと。
・海中部柱基部に塑性ヒンジを設けた場合と比較しても主塔の応答断面力は差が少なく塑性ヒンジの位置の違いによる塔への影響は小さいこと。
海中部橋脚の施工については、グラブ船によるオープン掘削の後、大型起重機船による設置フーチング基礎により施工を行った。
 

図-8 塑性ヒンジ位置図

 
下柱設置後、上柱の施工を行うことになるが、当施工箇所は海上であるため、工期短縮、省力化、安全性の向上を図ることを目的として、REED工法を採用した。
REED工法とは、柱の主鉄筋に代え突起付きH形鋼であるストライプHと本体の一部として適用可能な高耐久性埋設型枠であるSEEDフォームを組み合わせた鉄骨コンクリート複合構造形式の橋脚構築工法である。
 

図-9 REED工法

 
② 主桁架設工法
主桁架設については、側径間と中央径間に分割した架設方法を取ることにより経済性、作業性に有利な工法を選定した。
以下に、各工法についての説明を行う。
(1) 側径間大ブロック・塔付部FC架設工法
・架設ブロックは大型台船により台船係留地まで輸送後、FC船により架設現場まで吊り曳航を行う。
S1桁についてはFC船による大ブロック架設を行う。
・主塔付近ブロックは斜ベント設備を側径間側に1基設けFC船によるブロック架設を行う。このとき、直下吊りクレーンを搭載した桁については主塔側に引き込みを行う。
S2桁については、FC船による落し込み架設を行う。 
(2) 中央径間ブロック架設工法
中央径間ブロックは、台船で曳航した架設ブロックを直下吊りクレーンで水切り後、張り出し架設を行い、併せて中央径間、側径間のケーブル架設を行う。
 

図-10 架設ステップ図

 
 

写真-6 S1桁架設状況

写真-7 S2桁架設状況

 
4 まとめ
鷹島肥前大橋は、今後、各工場で製作されたブロック桁が順次輸送され桁架設が行われる。
中央径間閉合は平成20年の台風襲来期前を計画しているが、工程が順調に進むよう願うばかりである。
鋼製主塔と異なり鉄筋コンクリート主塔は塔内空間が狭く、既に長崎県内で供用済みである大島大橋や女神大橋の様に塔内エレベーターを設置できないため、維持管理の際は階段と梯子により塔頂まで上ることとなり、航空障害灯や主塔上に設置予定である監視カメラ等、機器の保守点検は困難が伴うことが予想される。
ライフサイクルコストの縮減を目指した橋梁形式として計画された橋梁であるが、完成後に悔いが残らないよう、考えられるだけのことは現場に反映させ早期供用を目指して行きたいと考えている。
 

図-11 鷹島肥前大橋(仮称)完成予想図

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