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九州技報 第41号 整備局だより

九州地方整備局における庁舎の耐震改修について

九州地方整備局 湯浅 芳和


 
1 はじめに
九州地方整備局では、河川・道路及び公園関係の事務所において約250棟の施設を管理している。そのうち、約73%が耐震改修の必要がない施設もしくは耐震改修を完了しており、残る約27%について、今後計画的な耐震対策を行っていくこととしている。
耐震対策工法については、従来耐震壁や鉄骨ブレースによる補強が一般的であったが、耐震壁等による建物内部空間の機能上の問題や荷重増による基礎杭への影響、施工条件の制約、改修コスト等を考慮し、近年では他工法も採用しているところである。
ここでは、昨年度施工したプレキャスト・プレストレストコンクリート及びプレキャスト・プレストレストコンクリートとPC鋼材の組み合わせによって耐震補強した事例について紹介する。
 
2 耐震性能の目標について
国土交通省が建設した国家機関の建築物及びその付帯施設は、建設当時の法律(建築基準法)に基づき、それを満足するように設計・施工されている。
建築基準法の構造規定は、地震被害等を反映して過去(昭和46年、昭和56年)に大きな改正が行われており、現在では、平成7年の「阪神・淡路大地震」を踏まえて、平成8年10月に制定された「官庁施設の総合耐震計画基準」及び「官庁施設の総合耐震診断・改修基準」に準拠して、より厳しい基準で耐震診断及び耐震改修を進めている。
総合耐震診断で想定している大地震動については、「建築物の耐用年限中に一度遭遇するかもしれない程度の地震動(地動の最大加速度は300~400ガル程度)を想定しており、これは、「関東大震災級の地震動」で、「気象庁震度階の震度6強~7程度(※注)」に相当する。
「総合耐震計画基準」では、官庁施設の整備にあたって、施設の有する機能、施設が被害を受けた場合の社会的影響及び施設が立地する地域的条件を考慮し、施設を分類し、構造体、建築非構造部材、建築設備について大地震動時に対して施設が持つべき耐震安全性の目標を定め、その確保を図ることとし、特に災害対策の指揮及び情報伝達、救護、消火活動等の災害応急対策活動に必要な施設、危険物を貯蔵又は使用する施設、多数の者が利用する施設等の人命及び物品の安全性確保が特に必要な施設については、他の施設に比べ、大地震動に対しても耐震性能に余裕を持たせることを目標としている。
各施設の機能及び用途に応じた耐震安全性の分類及び目標は、表-1の「耐震安全性の分類及び目標」のとおりである。このうち、「耐震安全性の目標」の構造物の分類については、Ⅲ類が現行の建築基準法と同レベルに設定されており、Ⅰ類及びⅡ類については、必要保有水平耐力(建物が保有する必要がある、地震による水平力に対する強さ)をⅢ類のそれぞれ1.5倍、1.25倍に割り増すことにより、必要な耐震性能を確保することとしている。
このうち国土交通省における庁舎は「災害対策の指揮、情報伝達等のための施設」と位置づけられているため、耐震安全性の構造体はⅠ類又はⅡ類としている。
(※注)地震動の規模を震度階で表現するにあたっては明確な基準がないため、震度階の数値は目安を示すものである。
表-1


3 耐震工法の選定経緯
3-1 長崎河川国道事務所庁舎
鉄筋コンクリート造3階建て、延面積2,650㎡の規模を持つ事務所庁舎で昭和57年に建築されたものであり、耐震安全性の分類によるⅠ類の構造強度を満たさない施設であった。
耐震性能を向上させるためには、壁を増設するなどして水平耐力及びじん性の向上を行う必要があるが、一般的な耐震壁の増設等では改修箇所が建物内部各所に点在するため、執務室が分断され、空気調和設備や電気配線など機能的にも問題が生じることが予想された。よって、耐震改修工事を行うにあたって、執務上の連続性や工事工程などを考慮し、仮設の検討も含めて調整した結果、「外フレーム」による補強工法(PCアウトフレーム工法)を採用することとした。(図-1参照)
3-2 鹿児島維持出張所庁舎
鉄筋コンクリート造3階建て、延面積558.75㎡の規模を持つ出張所庁舎で平成10年度に建築されたものであるが、耐震安全性の分類によるⅠ類の構造強度を満たさない施設であった。
耐震性を向上させるためには、内部を含む壁の増設による従来の補強方法があるが、今回の耐震補強工事は執務を行いながらの施工が前提でありまた無線機器などの重要機器、空気調和設備への影響及び隣地境界が近接している現地状況を考慮し外部における耐震補強が可能なパラレル構法を採用することとした。(図-2参照)

図-1 立面図(赤部分がPca・Pc構造体)
 

図-2 パラレル構法概要図
 
4 対策工法の概要
4-1 長崎河川国道事務所庁舎
既存建物の外側にプレキャスト・プレストレストコンクリート(Pca・PC)構造による新設フレームを設置し、既設フレームと新設フレームをスラブなどにより接合することで、水平力の伝達を計り既存建物の補強を行う工法で、既存建物を使用しながらの補強工事が可能となる工法である。
また、Pca・PC構造体は工場製作であるため、現場での施工は在来工法と比較すると工期短
縮が可能となり、併せて現場内において型枠等の建設廃棄物の縮減できる環境に配慮した施工方法である。(図-3参照)
今回の対策では、Pca・PC構造体は桁方向のみしか採用できなかったため、梁方向については執務機能に配慮しつつ、一部内部の既存壁を増設する補強工事が必要となっている。

図-3 PCアウトフレーム工法概念図
4-2 鹿児島維持出張所庁舎
パラレル構法(以下、本構法)は、図-4に示すパラレルフレームに地震力を負担させる耐震補強工法である。本構法は、既存建築物の外面に、新たに現場打ちプレストレスト鉄筋コンクリート造(以下、PRC造)の基礎を新設し、この上にプレキャストRC造の柱・梁(以下、PCa部材)を組み立てた後、PC鋼材を斜めに配置して初期緊張することにより補強フレーム(以下、パラレルフレーム)を構築する外付け耐震補強工法である。図-5にパラレルフレーム詳細図を示す。斜めPC鋼材緊張後、パラレル梁部で既存建物の梁とPC鋼棒で圧着し、パラレル基礎も既存基礎とあと施工アンカーにて接合する。本構法の地震力に対する抵抗の概念図を図-6に示す。
図-4 パラレルフレームの構成図
 
 
図-5 パラレルフレーム詳細図
図-6 地震力に対する抵抗概念図


5 施工手順
5-1 長崎河川国道事務所庁舎
まず、外フレーム基礎部分の施工を行い、その時に柱架設用のPC鋼棒をセットしておく、その後、架設用足場の組立、架設に支障となる庇のはつり、1階柱脚部のレベル調整モルタルの施工を行う。次に、1層目の柱、梁を架設し、柱の鋼棒を緊張する。その後、柱梁接合部の目地モルタルを打設し、梁のPC鋼材を緊張する。この作業を階層分繰り返し、全ての架構を完成させる。最後にグラウト注入、スラブ等の施工をし完了となる。

図-7 PCアウトフレーム工法フロー

図-8 パラレル構法施工フロー

5-2 鹿児島維持出張所庁舎
施工は準備作業の後、圧着面の目荒しと既存梁の鉄筋探査および穿孔工事から始まる。この穿孔位置の情報はPC工場にもたらされPCa梁の製作が開始される。同時に現場では、新設基礎の杭工事から配筋・型枠・斜めPCケーブルのアンカー設置・PC配線工事をしてコンクリートを打設する。その後、PCa部材の建て込みを行い、柱ジョイント部分の継ぎ手にグラウトを注入し、斜めPCケーブルを挿入して緊張する。緊張後、地中梁の目地にコンクリートを打設し、圧着面の目地には無収縮モルタルを注入して、強度確認後圧着してパラレルフレームが完成する。
 
6 おわりに
九州地方整備局の直轄施設においては、そのほとんどが災害応急活動に必要な施設としているため常にその機能を保有しなければならない。今後の耐震改修の工法選定にあたっても機能維持とコストのバランスを図りながら、より効果的で経済的な耐震補強の実現を目指し、計画的な整備を進めて行くものである。

長崎河川国道事務所外フレーム完成

鹿児島維持出張所改修完成
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