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九州技報 第41号 第3回「技報賞」懸賞論文佳作

「安心・安全な歩行空間の整備による「人」優先の国土づくりの提案」

福岡大学 工学部 社会デザイン工学科4年 森原由香理


 
1 はじめに
道路は私たちの生活の中で、なくてはならない存在である。2本足で歩く私たち人間が存在した時から道路を利用していた。道路は国土づくりの中で、最も古く、最も重要なものだろう。その中でも歩道は、都市部の道路においては歩行者空間としての役割のみならず、都市景観の形成、ライフライン等の収容空間、沿道へのアクセスのための空間等としても重要な役割をもっており、その必要性は高い。また地方部の幹線道路においても、歩行者が多い場合、これらの歩行者の通行の安全を図るうえで歩道の設置が必要である。私たちの生活を支えるこれからの国土づくりにおいて、高齢者や身体の不自由な人も抵抗なく安全に街に出られるように、バリアのない歩道づくりが必要となると私は考える。
 
2 道路のバリアとは
歩行者の中には、車いすを使用する人や身体の不自由な人がいる。そして、日本は世界でも類のない速さで高齢化が進んでいる。2015年には人口の5人に1人、2050年には3人に1人が65歳以上の高齢者になるといわれている。これから、身体が不自由な人は少数派ではない。
図-1に、昭和54年から平成13年までの年齢別交通事故死者数の推移を示す。交通事故死者数の65歳以上の割合は、昭和54年では19%であったのが徐々に増加を続け、平成元年には23%、平成13年には37%となっている。交通事故死者数は平成4年を期に減少しているのに対し、65歳以上比率は例年右肩上がりとなっており、深刻な間題となっている。高齢者の交通事故件数が増加している中で、平成12年11月に交通バリアフリー法が施行された。幅員の広い歩道の整備や歩道のフラット化、歩行者を優先する道路構造の形成、自動車よりも歩行者の安全・快適な利用を優先する形成などを図ることとしており、これらは高齢者等の事故防止にもつながるものと考えられる。
 
3 安心して歩ける道路をつくるために
高齢者や身体の不自由な人に対するバリアを一つひとつ取り除いていくという意味の「バリアフリー」の考え方をもう一歩進めた「ユニバーサルデザイン」という概念がある。これは今あるバリアを取り除くのではなく、初めからバリアのない、誰でもが使いやすく、使い方のミスが少ないデザインを目指すものである。

出典:国土交通省ホームページ
 
図-2は平成17年高齢者交通事故死者状態別の人数をグラフに示したものである。高齢者は歩行中に交通事故に遭う率が著しく高い。これは、高齢者の身体能力の低下に原因がある。

出典:警視庁ホームページ
 
歩道など歩行空間が途切れている場合や、歩行空間の幅員が狭い場合などは、高齢者や身体の不自由な人の通行に対して問題となる。これらの問題点を改善していくことは、歩行空間におけるバリアフリー化を進める第一歩となると考えられる。具体的なバリアフリー化の着眼点は次のように整理できる。
1.歩行者のための空間が連続的に広がるように計画・整備する。
2.高齢者・障害者が安心して通行できる空間・幅員を確保する。
3.勾配を小さくし、段差は適切な処理をして、高齢者・障害者が支障なく通行できるようにする。
4.疲れたり迷ったりすることなく通行できるように、各種施設を適切に配備する。
以上のことを十分に踏まえ「人」優先の考えの下、歩道を積極的に整備することで、安全で安心な歩行空間を得ることができる。
 
4 歩道整備の現状
道路においては、高齢者、身体障害者等の移動の円滑化を図るために、車いす使用者がいつでもすれ違える幅員を確保しなければならない。道路に設ける歩道等の有効幅員は、道路構造令に準じ、歩道においては3.5m (歩行者交通量の多い道路)又は2m (その他の道路)以上、自転車歩行者道においては4m(歩行者交通量の多い道路)又は3m (その他の道路)以上確保することとされている。
しかし、平成17年度の日本の歩道の設置率(歩道設置済道路延長/道路延長)は36.7%、そのうち幅員が8.5mの広幅員歩道設置率は12.6% (出典:平成17年度交通センサス)となっている。歩行者は、日本の7割弱の道路は快適に利用することができないという計算になる。依然として、日本は歩道の整備がこれからも必要になるように思われる。
 
5 まとめ
日本のバリアフリー化は、実際はまだまだ遅れている。近年、「人」優先の交通安全思想を基本とし、あらゆる施策が推進されている。年末には、新バリアフリー法が施行されるが、日本の福祉行政もこれまで、ハード面の整備が優先されてきた。しかし、誰がどう使うのかを理解せずに設備をつくっても、真のバリアフリーは実現できない。利用者の立場に立って、ハード面だけでなく、ソフト面も含めて、バリアフリー化を進めていくことが、これからの国土づくりのあるべき姿ではないだろうか。時間はかかるかもしれないが、地道に進めていってもらいたい。
そして、日本中をバリアフリー化し、誰もが安心して快適に過ごせるユニバーサルデザインの街づくりが私の夢である。
 
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