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九州技報 第41号 論文

骨材製造過程で発生する脱水ケーキの有効利用

佐賀県 満原 一徳


1 はじめに
近年、循環型社会の形成に向けた取組みが推進されており、建設工事の分野においても建設副産物のリサイクルが重要な課題となっている。また、昨今の厳しい財政事情の下、限られた財源を効率的に活用するため、建設コストの縮減が強く求められている。
このような背景の下、中木庭ダム建設工事においては、環境への負荷を軽減するとともに、建設コストの縮減を図る事を目的とし、ダム建設工事により膨大に発生する「伐採材」及び、「脱水ケーキ」を良好な緑化用資材へと改良し、法面吹付の植生基盤材として有効利用する事で、建設廃棄物の再資源化及び、建設コストの縮減を図った。

図-1 資源循環の概念図
 
2 中木庭ダムの概要
中木庭ダムは、佐賀県鹿島市を流下する2級鹿島川水系中川において洪水調整、流水の正常な機能の維持及び、水道用水の供給を目的に建設される多目的ダムである。
当ダムの諸元を図-3に示す。
当ダムは本体工事を平成13年10月に着手し、平成15年9月からコンクリート打設を開始しており、平成17年12月に本体コンクリート打設を完了した。

 

図-2 中木庭ダム位置図

図-3 中木庭ダムの諸元

写真-1 中木庭ダム建設状況
 
3 脱水ケーキの土壌化
今回、伐採材と脱水ケーキを用いて植生基盤材を製造するに当たり、先ずはそれぞれの特性を把握する必要がある。
伐採材はチップ化を行い堆肥化することで容易に再利用可能な状態にすることが出来る。しかしながら、脱水ケーキは脱水時の高圧処理と凝集剤混合の影響で、表-1に示されるよう緻密な単粒構造となっており、ミネラル等の栄養分を豊富に含む反面、有機物を含まず、植物の育成阻害成分である可溶性アルミニウムを多く含むといった特性がある。
表-1 中木庭ダムの脱水ケーキの特性

 
したがって、このまま使用した場合、植物の根の発達が阻害され、植物が正常に生育できない可能性が高いことが考えられた。
このため、脱水ケーキの特性を改良する必要があるが、今回は、安易に多量の化成肥料に頼らず、土としての基本性能を重視することとした。
具体的には、脱水ケーキと伐採材の生チップを混合し、伐採材チップに付着している微生物の活動により、植物の生育に悪影響を及ぼす物質の無害化処理を行うとともに、微生物が発生する粘着物質によって土を団粒化させ、空隙を発生させることで、脱水ケーキを水はけや水持ちが良く、栄養分に富む良好な土壌へと改良していく方法を試みた。
これにより、各特性を以下のように改良する。
① 物理特性については、団粒化構造に改良する。
② 化学特性については、脱水ケーキの生成過程において添加された凝集剤に含まれる物質が植生の生育に悪影響を及ぼす可能性があるため、無害化する。
③ 生物特性については、脱水ケーキは微生物が殆どいないか、若しくは微生物相が単調であるため、バランスの良い微生物相に変える。
脱水ケーキの土壌化の概念図を図-4に示す。

図-4 脱水ケーキの土壌化の概念図
 
4 試験内容
今回実施した試験の流れを図-5に示す。
先ずは、伐採材チップと脱水ケーキの混合割合を決定するため、室内にて発酵シミュレーション試験を実施した。
次に室内試験結果を踏まえ、現場にて土壌化試験を実施し、現場での伐採材チップと脱水ケーキの混合割合や養生方法等の確認を行った。
その後吹付試験を実施し、法面吹付の施工性を確認するとともに、植物の生育状況を調査することで本試験の総合評価を行った。
以上の試験結果を踏まえ、本施工を実施した。

図-5 試験の流れ


5 発酵シミュレーション試験
現場試験に先立ち、室内試験を実施した。室内試験としては脱水ケーキと伐採材チップに発酵促進材を加えていき、ミキサーにより90秒間横枠・混合後、微生物の変化や化学反応を測定する発酵シミュレーション試験を実施した。
配合量としては脱水ケーキ:伐採材チップが9:1 (重量比)で混合し、発酵促進材を5%添加した場合に良好な結果を得られたため、ここでは発酵促進材を添加しない「試験1」と、5%添加した「試験2」の2ケース結果を示す。各ケースの配合量は表-2のとおりである。
表-2 発酵シミュレーション試験ケース

 
5-1 発酵シミュレーション試験結果
発酵シミュレーション試験結果を表-3、図-6に示す。

 

表-3 微生物の変化

図-6 温度、CO2の変化
 
試験結果より、発酵促進材を混合していない「試験1」では、温度の上昇、耐熱性菌の増加、炭素ガスの発生が確認されなかったため、微生物は活動していないものと考えられる。
これに対し、発酵促進材を混合した「試験2」では、温度の上昇、耐熱性菌の増加、炭素ガスの発生が確認され、活発な微生物活動が起こったものと考えられる。また、温度上昇に伴い一時的に糸状菌と放線菌が減少している。温度低下後は耐熱性菌が分解しなかったものおよび、微生物遺体を分解できる放線菌が増えてくることが予想される。
このことから、発酵促進材を添加した「試験2」において、土壌化(団粒化)が促進されやすい環境になったことが判明した。
これより、通気や温度環境が長ければ発酵促進材を添加することで伐採材チップの堆肥化が進行し、脱水ケーキはそのときの微生物活動に伴って発生する粘着物質によって団粒化されるものと考えられる。
 
6 現場試験
現場試験では実施工における土壌化技術を確立することを目的とした。
6-1 土壌化試験
発酵シミュレーション試験結果を踏まえ、土壌化試験を行った。脱水ケーキと伐採材チップの配合設定については、発酵シミュレーション試験を基にこれを再現したケース1と、ケース1の養生方法を簡略化するためエアレーションを省略したケース2。それに加え、現場では気温や通気条件が発酵シミュレーション試験より厳しいため、土壌化がうまくいかない場合を考慮し,通気性を向上させる事と、好気性発酵を促進する土壌中の有機物を増やす事の目的で伐採材チップを増量したケース3と、そのエアレーションを省略したケース4を追加した。(表-4)
表-4 土壌化試験ケース

6-1-1 土壌化試験方法
脱水ケーキと伐採材チップ及び発酵促進材の混合は、2段階に分け入念に実施した。その後シート養生を行い、養生期間中は土壌化物の温度やpHを計測しつつ、適時に切返しを実施した。なお、エアレーションを実施したケース1、3では空気供給設備を設け、発酵に必要な風量を1日当たり8時間送気した。

図-7 土壌化試験の作業手順
 

写真-2 土壌化試験の作業状況
6-1-2 土壌化試験結果
土壌化試験より次の結果を得た。(図-8)
① ケース1、3ではケース2、4に比べて急激な温度上昇を示し、条件の厳しい冬季にも関わらず、開始から約2週間後には土壌温度が約60℃ を上回った。
② ケース1、3では、土壌温度が急激に上昇した後、約1ケ月後から緩やかな減少傾向を示した。
この結果より、エアレーションを行うことで、発酵に必要な空気量が確保され、早期に良好な好気性発酵が促進することを確認できた。また、発酵のピークを越えた1ヶ月後頃が切返しに適した時期であると考えられる。

図-8 温度、pH、水分、ECの経時変化
6-1-3 土壌化物の評価
表-5のとおり土壌化物の物理・化学性の分析を行った。
① 窒素、有機炭素(有機物含有物)有効態リン酸が増加し、土の養分が増加した。
② 土の細粒子が団粒化し、有効水分量が増加した。
等、この土壌化物の品質は既存の基準と照らし合わせても遜色ないと判断された。
以上より、脱水ケーキに混合する伐採材チップの割合や、発酵処理での通気条件に関係なく、土壌化物は軽微な改良により緑化用土壌として利用できると評価した。
また、土壌化物を用いて幼植物の生育試験を併せて実施した。(写真-3)
幼植物試験を踏まえ、土壌化物の品質について表-6に示すとおり評価した。
土壌化物の緑化用土壌としての品質を評価した結果、自然に戻す物として、現時点ではケース3が最良の植生基盤材料と判断された。
なお、ケース2、4はエアレーションを実施しなかったことで、土壌化物の発酵が未熟であったため、一般的な指標では把握できない生育阻害の可能性があることが確認でき、土壌化物としては未熟であり、利用するにはさらに時間が必要であると考えられる。
表-5 物理性・化学性評価の結果

 

図-9 有効水分の変化
 

写真-3 幼植物試験
 
表-6 土壌化物の品質評価の結果

6-2 吹付試験
土壌化試験で使用した土壌化物を用いて吹付試験を実施した。
この際、土壌化物が細かな粘性土から構成されているため、次に示すような要因によりホースや吹付機内部が閉塞した場合、閉塞を解除するために多大な時間と労力を要するため施工能率が著しく低下する問題が発生する可能性があると考えられる。
① 材料中に長い木片又は、大きな固形物の混入が多く、搬送時に材料が絡み合う
② プラントと吹付地点との高低差が大きく、搬送距離が長い
③ 粘性土において細粒分がホースや吹付機の内壁に付着する
このことから、吹付試験では土壌化物のpH調整を目的として添加する土壌改良材(ピートモス)の割合を変化させ実施することで、法面吹付の施工性の確認を行った。
6-2-1 吹付試験結果
吹付試験の結果、土壌化物とピートモスの配合量次第では、写真-4に示すように吹付機内部で材料が付着することによるトラブルが発生した。各ケースの材料に対して、閉塞のトラブルも無く、かつ安定した排出量が確保できたピートモスの最小添加量を表-7に示す。

写真-4 吹付機械内でのトラブル
 
表-7 吹付試験の結果

6-3 植生調査
吹付試験で確認されたピートモスの最適配合量を基に、在来工法を含めた6ケースの試料により吹付施工を実施し、その後定期的に植生調査を実施した。ピートモスの配合条件を表-8に示す。
表-8 ピートモスの配合条件

6-3-1 植生調査結果
植生調査により、次の結果が得られた。(図-10~12、写真-5)
① 全ケースで植物の発芽・生育を確認した。
② 全ケースでピートモスの改良効果によりpHが中性化した。
③ 在来工法の基材は、施工直後は電気伝導率や窒素・リン酸の量が土壌化物に比べて高かったが、3ケ月後には土壌化物とほぼ同程度となった。
④ ケース3-P30は、在来工法とほぼ同等の成長を示した。
⑤ ケース3-P30以外の試験区においては植物の生育が悪かったために、降雨の影響により植生基盤材は洗掘の被害を生じた。
以上の結果より、ケース3-P30が在来工法とほぼ同程度の成長を示し,他のケースに比べ優位であった。また、在来工法には化成肥料が極めて多く含まれているが、それでもケース3-P30は在来工法と比べて遜色ない結果を得ることが出来た。

図-10 pHとECの変化

 
図-12 植被率と草丈の変化(施工後3ケ月)

施工直後

施工後3ヶ月

図-11 窒素とリン酸の変化

  

写真-5 植被率と草丈の状況(施工後3ケ月)


7 本施工
以上の試験により、品質的に問題のない土壌化物が製造されたことを確認できたので、本施工の法面吹付工に採用した。
中木庭ダム建設工事では、図-13に示すとおり、貯水池内より発生する伐採材チップと骨材製造過程で発生する脱水ケーキにより植生基盤材を製造し、原石山切土法面(岩盤斜面)への吹付に有効利用する計画を立て、実施した。

図-13 中木庭ダムリサイクル計画概念図
 
土壌化ヤードでは、脱水ケーキと伐採材チップを重量比で7:3で混合し、発酵促進剤を5%加え、約3ケ月かけて土壌化物を製造した。
養生期間中では、エアレーションや温度計測を行うとともに室内分析を実施し、土壌化物の品質管理を行った。
養生の際はエアレーションの効果を十分に発揮できるように、土壌化物の積上げ高さを2m程度に抑えるようにした。
その後土壌化物を原石山に運搬し、ピートモスを体積比で30%、その他種子等を混合させ、法面吹付を実施した。
吹付施工においてはトラブルを防止するため、土壌化物を吹付プラントに投入する際、細かな石が混入しないように注意を要した。
また、今回土壌化ヤードや吹付施工箇所が離れていたことで脱水ケーキの運搬には注意を図っていたものの、運搬時の振動や風等により、どうしても脱水ケーキが飛散してしまうロスが発生した。
 
7-1 本施工後の状況
吹付後の状況を写真-6~10に示す。吹付約1ヶ月後で発芽している状況が伺える。吹付約6ヶ月後では、在来工法とほぼ同程度の生育状況が確認できた。

写真-6 原石山吹付状況(遠景)
 

7-2 コスト縮減
建設コストについて表-9に示すとおり、在来工法との比較を行った。
この結果、脱水ケーキと伐採材チップによる法面吹付工法は、在来工法に比して約10%のコスト縮減が図れることが確認できた。
表-9 在来工法とのコスト比較

 
8 まとめ
中木庭ダム建設工事において、環境への負荷を軽減するとともに、建設コストの縮減を図る事を目的とし、ダム建設工事により発生する「伐採材」及び、「脱水ケーキ」を改良し、法面吹付の植生基盤材への再資源化及び、建設コストの縮減を図った。
この結果、脱水ケーキと伐採材チップを同時発酵させることで無害化処理を行い、化成肥料を多量に使わなくても良好な緑化用資材としてリサイクルできることが確認できた。
また、全ての工程において特殊機械の使用や、作業員の熟練度に依存しなければならない工程が無く、在来工法と同等の機械・人員体制での施工が可能であった。
建設コスト面においては、脱水ケーキと伐採材チップによる法面吹付工法は、在来工法に比して約10%のコスト縮減が図れることが確認できた。
以上の結果より、今回の試みは今後の脱水ケーキの有効利用に大きな効果があるものと考えられる。
最後に今回の試験の計画立案及び実施にあたり、多大なるご協力をいただきました関係各位の皆様に厚くお礼申しあげます。
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