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九州技報 第41号 論文

筑後川「久留米閘門」ゲート設備の紹介

九州地方整備局 安藤 泰宣


1 はじめに
筑後川は、古くから舟運が開けており、特に藩政時代から明治中期にかけて活躍したが、次第に減退し現在、小森野床固めの舟通しにおいては利用できない状況にあった。
しかし、平成7年阪神淡路大震災時に道路復旧までの繋ぎとして船舶による物資輸送が活用され、舟運のあり方について筑後川においても見直しが行われた。
また、国民のニーズの変化や河川法改正等により河川舟運の意義が重要視され、防災、観光、経済面や観光面から注目を集め、川を活かしたまちづくりとして久留米市が『久留米地域舟運再生検討委員会』を設立し、筑後川での舟運実施が地域再生計画のひとつとして平成16年12月に国に認定され、筑後川小森野床固めの舟通し施設(久留米閘門)の改修に至った。
今回、久留米閘門には上下流にそれぞれ閘門ゲートが設置されており、複雑なゲート操作が行われ、さらに上流側ゲートはライジングセクターゲートと呼ばれる特殊なゲートを採用しているので、そのゲート設備について紹介するものである。
 
2 閘門(舟通し)施設の概要
小森野床固めの箇所で上流と下流で通常1m程度の水位差がついているため、上流側から下流側へあるいは反対に下流側から上流側へ船が安全に行き来することができない。
そのため、水面の高さが異なる上流と下流を船が行き来するための船のエレベータのような役割を果たす閘門(舟通し)施設が必要となる。

写真-1 「久留米閘門」開通式

写真-2 施設全体写真

(1) 閘門(舟通し)
① 閘門の大きさ
幅10m×長さ30m
水深約2.5m~2.8m
② 通航可能船舶の大きさ
幅6m×長さ15m×喫水1.5m
③ 通航時間
最大15分以内
(2) ゲート設備
① 上流側ゲート
型式:ライジングセクターゲート
寸法:幅10m×高さ2.8m×1門
開閉方式:油圧モータラック式
② 下流側ゲート
型式:マイターゲート
寸法:幅10m×高さ4.1m×1門
開閉方式:油圧シリンダー式
③ 充水、排水用ゲート
型式:スライドゲート
寸法:幅1.2m×高さ1.2m×4門
開閉方式:油圧シリンダー式
④ 油圧ユニット
電動機出力:15kw

図-1 施設全体図
 


3 閘門(舟通し)通航の概要
閘門を船舶が上流側から通航する時、下流側から通航する時のそれぞれケースにおいて、上・下流ゲート、充・排水ゲートは複雑な動きをする。上流側ゲート、下流側ゲートの動き、閘室内の水面高さの状況を図-2、図-3に示す。

図-2 通航イメージ

(下流から上流へ通航の場合)

 

図-3 通航イメージ

(上流から下流へ通航の場合)

  
4 ゲート設備の概要
(1) 上流側ゲート
今回、上流側ゲートには、ライジングセクターゲートと呼ばれている形式のゲートを採用した。
九州では2例目で全国的にも数例の実績のみの珍しい形式ゲートである。

写真-3 上流側ゲート(ライジングセクターゲート)
図-4の構造図のように、端部の円盤(端盤)に固定された扉体を端盤が回転することで、ゲートの開閉を行う構造である。
図-5の開閉動作図に示すように、船舶が通過できる全開状態では、扉体は床版の下に収まり、船舶の通航の阻害にならない状態となる。また、端盤が回転することで、ゲートが起き上がり、ゲートは全閉状態で水流を遮断する状態となる。さらに回転して、扉体をすべて地上に露出させることができ、ドライの状態で点検作業が可能となり、確実な点検が可能となる。

 

図-4 ライジングセクターゲートの構造図
 

 

図-5 ライジングセクターゲートの開閉動作図
今回、上流側ゲートとして、ライジングセクターゲートを採用した理由は、以下のとおりである。
① 通常時は、上流側ゲートは、全閉状態(ゲートで水流を遮断した状態)、洪水時は全開状態のため、洪水時は全閉状態から全開状態に移行する時、上下流側で水位差があってもゲートが確実に開閉できるようなゲート形式にする必要がある。
② ゲート前面に土砂が堆積した場合でも、フラッシング機能があり、土砂排出が期待できる。
(2) 下流側ゲート
下流側ゲートは、左右2枚のゲートで観音開きの動きをするマイターゲートである。通常時、洪水時とも全開状態(流水を遮断しない状態)である。
操作時は、常に上流側ゲートが全閉状態のため、下流側ゲートの上・下流側で水位差のないバランス状態での操作となり、開閉力が比較的必要でないことから、構造的に簡単で経済的で、舟通し等にも実績のあるマイターゲートを採用した。
開閉方式は、ゲートの回転軸に取り付けた油圧シリンダーの伸縮でゲートを回転させる構造である。

写真-4 下流側ゲート(マイターゲート)
(3) 充・排水ゲート
閘室内の水面を上流側水面高さにあるいは、下流側水面高さに合わせるために、充水用、排水用水路が設置され、この水路から閘室内に河川水を充水したり、排水したりしている。
充水用の水路は、上流側の河川水を閘室内に導くために上流側ゲートを迂回して配置され、また排水用の水路は閘室内の河川水を下流側へ排水するために下流側ゲートを迂回して配置されている。充・排水用の水路は閘室の両側にそれぞれ設置されており、水路の中のスライドゲートにより、充水、排水をコントロールしている。
充水・排水専用の施設により、水面の上昇、下降の状況があまり変化しないことから、閘室内の船舶の安定性が確保できる。
(4) ゲート設備の創意工夫
① 操作支援システムの導入
閘門施設の操作は、左岸側堤防上に設置された操作室から操作画面、監視カメラ、目視により状況を判断して行うこととなる。しかしながら、複数のゲート操作や水位、船舶の状況を見ながらの操作となり、非常に複雑な操作が強いられることから、操作人の誤操作が懸念される。
これらを解決するために、次にどの操作を実施しなければならないのか、操作人が判断できるように操作画面にメッセージを表示したり、押しボタンが点滅して次に押すボタンを指定したりするように、操作を支援するシステムを導入している。これにより、慣れていない操作人への操作支援や誤操作防止に大いに効果があると考える。

写真-5 操作設備

写真-6 操作画面

写真-7 操作ボタン

② 散水式遮断装置の設置
開操作時、ライジングセクターゲートは、扉体が水面に潜っていくため、ゲートがどの状態にあるのか船舶からは判らないため、ゲートが所定の位置に収まらないうちに船舶が航行するとゲートに衝突する可能性がある。このため、ゲートが動いている間は、船舶が航行できないように、閘門の両岸からゲート付近を噴水で遮断する装置を設置した。

写真-8 散水式遮断装置
③ 排砂装置の設置
ライジングセクターゲートの端部の戸溝に土砂が堆積しやすいため、堆積土砂を排除しやすいように端部に排砂管を設置し、常時、上流側の河川水を少量流すことで、土砂の堆積を防止できる構造となっている。
④ ステンレス扉体の景観の考慮
今回のゲート設備の扉体は、塗装塗り替えが要らないようにメンテナンスを考慮して、全てステンレス構造としているが、現場が運動公園に面していることから、景観に考慮するため、ゲート表面にブラストをかけてステンレスのテカリを無くす工夫をしている。
⑤ 油圧作動油に生分解性作動油の使用
今回のゲート設備は、油圧ユニットからの作動油により油圧モータ、油圧シリンダーを作動させることで、ゲート設備を駆動している。このため、万が一、作動油の漏油による油流出が発生した場合には、環境に甚大な被害が発生することから、作動油に生分解性の作動油を使用し、環境への負荷を低減するようにしている。
 
5 おわりに
「久留米閘門」は、平成15年度から、改築工事を進めてきたが、平成18年度、残りのゲート設備に着手し完成した。平成19年3月21日には、久留米市主催の「菜の花まつり」において開通式も催され、計画通りの機能が発揮された。
今後は、有明海から船舶の行き来が可能となり、大規模災害が起こって道路交通が麻痺した場合の物流、平常時の新たな交通手段、観光に筑後川の利用の広がりが期待できるものと思われる。
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