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8.6鹿児島豪雨災害

鹿児島県土木部河川課長
山 下 文 洋

1 はじめに
近年,世界各地で異常気象による災害が発生しておりますが,本県もこの夏,異常な降雨に見舞われ,離島を除く県内各地で河川,道路など一般公共土木施設や農地,治山など広範囲かつ大規模な被害が発生している。

2 今年の降雨状況について
鹿児島県を含む九州南部は,5月21日梅雨入りし,7月9日に梅雨明け宣言がなされたものの,その後も雨天が続き,特に7月31日から8月2日にかけて,県中部を中心に集中豪雨が襲い,追い討ちをかけるように,8月5日から6日にかけて鹿児島を中心に局地的な集中豪雨が襲った。
さらに,8月9日に台風7号,9月13日には戦後最大級と言われた台風13号が来襲し,県内各地に大雨をもたらし,鹿児島気象台は8月31日に今年の梅雨明はわからないと,7月9日に発表した梅雨明け宣言を取り消している。
今年の雨量を鹿児島気象台で見てみると,梅雨期間50日間の雨量が1,433ミリと平年の梅雨の637ミリの2.24倍,6月の雨量が775ミリで平年の1.94倍,7月が1,055ミリで平年の3.47倍,さらに今年の総雨量が9月23日現在,3,724ミリで,既に年間の総雨量の最高であった明治38年の3,550ミリを更新している。

このように,たて続けに襲った豪雨に加え,本県は南九州特有のシラスに覆われているため,シラス崖地帯を中心に県内各地で甚大な被害が発生し,10月7日現在の被害は表ー3のとおりとなっている。

また,今回の一連の豪雨により,国道3号,国道10号,九州縦貫自動車道をはじめとする県内の広域幹線道路は,大きな被害を受け,交通不能となり,県都鹿児島市や鹿児島空港が孤立するなどした。
これらの豪雨の中で,8月6日に鹿児島市を中心に襲った豪雨では,市内を流れる甲突川,稲荷川,新川などの2級河川が氾濫し,市街地の500ヘクタール,13,000戸余りが浸水被害を受けた。

3 甲突川の河川災害について
鹿児島地方は,8月6日,それまで降り続いていた雨が午後4時頃から強まり,午後7時までの3時間に147ミリの降雨を記録した。
「平成5年8月6日豪雨」と命名されたこの集中豪雨では,鹿児島市の中心部を流れる甲突川の氾濫による浸水被害が著しく,直前の6月,7月の2箇月雨量が1,900ミリと平年の2.6倍近くもあったうえ,甲突川上流部の日置郡郡山町役場において,日雨量が384ミリ,しかも,時間最大雨量が99.5ミリと,短時間に極めて強い雨が集中した未曾有の豪雨であったため,甲突川の水位は急激に上昇して氾濫し,家屋の浸水や水道施設の被災,橋の流失等により,交通,電気,通信,水道等ライフラインの途絶など未だかって経験のない災害となり,市民生活に大きな混乱を与えた。

なかでも市の中心部を貫流する甲突川は,下流鹿児島市から上流郡山町まで,浸水被害や護岸決壊,橋の流失など激甚な被害を受けた。
甲突川には,藩政時代に肥後の石工,岩永三五郎が作った,いずれも四連以上の5つのアーチ石造橋があり,県民に親しまれ,また文化財としての価値も高い評価を受けていたが,このなかで新上橋と武之橋の2橋が流失した。

今回の甲突川の洪水流量は,雨量,被災水位,浸水区域等についての調査で約700m3/sと推定され現在の流下能力が300m3/sしかなく,河川堤防が決壊,溢水して,周辺下流へ溢れている。
甲突川は,基本高水流量1,000m3/sとして,現況流下能力が300m3/sしかないため,昭和46年から河川改修事業に着手していた。
沿川は市街化しており,川幅の全面的な拡幅は困難なため,改修方法としては,部分的な拡幅と河床をできるだけ掘削することとし,あわせて,ダム,遊水池放水路を組み合わせた治水対策とし,まず河床掘削で流下能力を上げることにした。
甲突川には江戸末期に造られた石橋が架っており,この石橋を保護するため,河床には石張をしてあることから,河床が高い状況にある。河川改修において河床を掘り下げるためには,石積を移設して保存する方法で提案していたが,石橋の取扱いについて,現地保存,移設保存と両論が並立したことから,論議の推移を見守るとともに,石橋を残したままで治水安全度を上げる方法はないかとダム,遊水池,放水路などいろいろな案を検討してきた。どの案も長期間を要することや,石橋の安全性や耐久性にも問題があった。甲突川の改修は昭和46年度から,護岸の整備や堤防の嵩上げを,都市中小河川改修事業で実施してきていた。
しかしながら,8月6日の甲突川の氾濫は,全区間にわたり溢水したことにより,下流部市街地部では約11,500戸の家屋浸水があったことから,本川は,河川激甚災害対策特別緊急事業,中流部では河川災害復旧助成事業等の改良復旧事業で,また上流部では,新規に河川改修を導入するなど,技本的改修に取り組むことにしている。
また,同様な被害を受けた稲荷川,新川についても中小河川改修事業とあわせて,県単事業などを導入して,県都鹿児島市が安全で住みよい街づくりのため,河川整備を進めていくことにしている。

4 あとがき
甲突川の整備にあたっては,建設省の御支援,御指導を受けながら,治水安全度の向上はもとより,これまで進めてきた河川景観とともに,河川に生息する動植物にも配慮しながら,安全でうるおいのある川づくりを行い,再度このような災害が起らないような河川の整備に努めていきたい。

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