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音楽が聞こえる道路

国土交通省 九州地方整備局 佐伯河川国道事務
 竹田維持出張所 所長
總 﨑 裕 二

国土交通省 九州地方整備局 佐伯河川国道事務
 竹田維持出張所 管理係長
岩 永 敏 孝

1 はじめに
大分県竹田市は、九重連山、阿蘇外輪山、それから祖母傾山系に囲まれた自然環境豊かな風光明媚な町で、農業と観光が基幹産業である。また、滝廉太郎氏ゆかりの地でもある。その竹田市を東西に横断する幹線道路が、大分市と熊本市を結ぶ国道57号である。
国道57号を車で、熊本阿蘇から外輪山を竹田方面に上ると視界が開ける。(図-1、写真-1参照)この区間は、平坦で直線が続き線形もよく、制限速度を超えて走る車や、追い越し等による危険運転が懸念される道路である。
このため、速度抑制や居眠り防止の観点から、音楽が聞こえる道路の舗装としてグルービング工法にて試験的に施工した。

図―1 位置図(施工箇所)

写真―1 施工箇所

2 グルービングの概要
1)グルービングの概要
グルービングとは、路面に細かい溝を刻む工法である。降雨時あるいは融雪時の水を速やかに排除することにより、湿潤路面を高速走行するときのハイドロプレーニングの防止や航空機の離着時にタイヤと路面との摩擦係数を高め制動距離の短縮をはかることが出来るとされている。
2)音楽が聞こえる仕組み
通常のグルービング施工が施された道路を車で走行すると、ガーッといった道路交通騒音がするが、今回の施工箇所では、グルービングの間隔を調整することによって、音楽が聞こえるようにした。このように音楽の聞こえる道路は、北海道を皮切りに2004年から全国数カ所で施工されている。
音程はタイヤと溝入り路面との摩擦により、周波数の変化によって認識される。図-2、3に示すように、溝と溝の間隔が狭ければ周波数は高くなり高音に、広ければ周波数は低くなって低音となって認識される。

図―2 高い音 ※溝間隔が小さい—高周波

図―3 低い音 ※溝間隔が大きい—低周波

この原理を利用し、舗装上部の連続した所定の間隔の横断方向溝を構築し、その上を一定スピード(設計速度)で走行することにより、音楽を聞くことが可能となる。

3 設計速度及び選曲
設定速度は、当箇所の制限速度が時速60㎞であるため、国道57号に引っ掛けて時速57㎞とした。曲の選定にあたっては、竹田市にゆかりのある滝廉太郎氏が作曲した「花」を採用した。

4 施工手順
現地のマーキングを行い、グルービングを行う。(写真-2、3、4参照)

写真―2 マーキング状況(横断方向溝)

写真―3 マーキング状況(1音程の長さ)

写真―4 グルービング切削状況

5 完成状況
今回施工した、「花」の歌いだしは「はるのうららのすみだがわ」 である。歌いだしの部分の音程を比較すると、「は」 が低音、「ら」 が高音であるため、「は」の部分と「ら」の部分のピッチは、それぞれ、94ミリと63ミリになる。(写真-5、6参照)

写真―5 「は」の部分のピッチ

写真―6 「ら」の部分のピッチ

6 音楽の状況
音楽の聞こえ方は、車種や天候によっても変化する。
1)よく聞き取れる場合
天気がよくて風もなく、道路が乾いているときに、普通車で、同じ速度で走るのがもっともよく聞こえるようである。
2)よく聞き取れない場合
トラック、バス、オートバイはエンジン音が大きいため聞き取りにくい。また、スタッドレスタイヤは道路との摩擦音が大きく、雨や風のときは周囲の音が大きいため、それぞれ聞き取りにくいようである。

写真―7 完成後の現地

7 効 果
現地にグルービング工法を採用することにより、
1)リズムを規制速度以下に設定することによるスピード抑制・追い越しの減少
2)メロディーを聴こうとすることによる車間距離の確保・快適走行
3)音を発することによる居眠り防止
4)路面の粗面化による滑り摩擦抵抗の向上と排水機能による路面凍結抑制
5)竹田市ゆかりの滝廉太郎氏の曲目を採用することによる地域活性化
など安全運転に加え、多種多様な相乗効果にもつながっていくのではないかと期待している。

8 おわりに
グルービングによる音楽演奏にどれくらいの耐用年数があるのか、車の種類やタイヤの形状にも、「よく聞こえる」「聞こえない」があり、今後調査・検討の必要がある。
また、国道502号の緒方町から竹田市に入る場所に、竹田土木事務所が「荒城の月」を施工した。交通安全に加え滝廉太郎氏の二曲により更なる地域活性化にも期待している。

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