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霧島山(新燃岳)火山噴火への防災対応について
奥野博史

キーワード:火山噴火降灰対応、土石流対策、自治体支援

1.はじめに

平成23年1月19日に霧島山系新燃岳において空振を伴う噴火があり、1月22日、1月26日と断続的な噴火が確認された。1月27日15時41分には52年ぶりとなる爆発的噴火があり、噴煙は火口から2,500m上空の高さまで上がり、火口付近では火山雷なども起き、火口内では火口湖が消失していた。
新燃岳の噴火を受けて、宮崎県高原町は30日深夜、「火山が非常に危険な状態にある」として火口の東側にある町内の512世帯約1,150人に避難勧告を出している。また、新燃岳に噴火警戒レベルが導入されて以来、レベル2から初めてレベル3へと引き上げられた。
噴出した火山灰は、新燃岳の東側にあたる高原町、都城市、宮崎市、日南市等に降灰し、鉄道の運休、道路通行止、空港の閉鎖、農作物の生育不良や汚損などの多くの被害が発生した。
九州地方整備局では、国道における降灰除去事業、降雨による土石流発生防止のための緊急除石事業を実施するほか、地元自治体への復旧・復興支援を実施しているところであり、本稿ではその概要について述べる(4月14日時点の状況)。

2.直轄管理区域で実施している対策
1)火山噴火の火口監視
監視カメラ4台(既設2台に加えて新たに2台)により火山活動を監視するとともに、ヘリコプター「はるかぜ号」により溶岩ドームや降灰の状況等を調査(14回)。

2)土石流監視体制の強化

  1. 渓流監視カメラ17台(既設10台に加え新たに7台)により土石流発生状況を監視
  2. 土石流センサー15箇所(既設6箇所に加え新たに9箇所)の土石流センサーを設置し監視
  3. 降雨時の渓流の状況や土石流の発生状況を監視。カメラ映像を県や市町に配信

3)土砂災害に関する緊急調査
砂防専門の職員が現地に集結し(延べ約600名)、降灰量・土石流発生状況の調査、土石流氾濫シミュレーション、土石流危険渓流調査、土石流対策検討等を、改正土砂法(H23.5.1施行)の施行に先立ち実施。

4)緊急的除石工事(高原町)
直轄砂防事業の区域内において、降灰が著しい箇所の下流地域の安全を確保するため既設砂防堰堤上流の除石を緊急的に実施(3月31日までに約25,200m3の土砂を除去)。

5)大型土のう設置による応急対策
火山灰を有効利用した大型土のうを製作し、町と共同で調査の上、応急的な氾濫対策が必要な箇所に974個設置。

6)直轄国道の管理
国が管理する国道10号、国道220号の降灰除去のための路面清掃を実施(約2,300m3を処理)。

3.国としての県、市町への復旧・復興支援
1)市町村へリアルタイム情報を提供するとともにマスコミを通じた一般市民への周知

  1. 定点監視カメラ3台、臨時設置カメラ1台からの火山活動監視映像を、県や市町に配信
  2. 渓流監視用カメラ17台の映像を市町に配信
  3. 土石流センサー15箇所の情報を、市町職員の携帯へ自動メール配信

2)関係機関との連携・支援

  1. 地方自治体との情報共有及び連携・支援を行うため、宮崎県庁、都城市役所、高原町役場、鹿児島県庁、霧島市役所へ情報連絡担当官(リエゾン)を派遣
  2. 国、県、市町との情報共有(調査結果の共有、監視映像・ヘリ映像の配信等)を行い、土砂災害対策の検討等を実施
  3. 降灰量・土石流発生状況調査、土石流氾濫シミュレーション、土石流危険渓流調査、土石流対策工事検討等を市町に説明し、市町が行う避難警戒体制の判断及び対策の検討を支援

3)緊急土石流対策工事(都城市)
県からの要請を受け、国による既設砂防堰堤上流の土砂の除去を実施するとともに、仮設導流堤の工事を実施(3月31日までに約27,400m3の土砂を除去)。

4)降灰除去作業に係る車両の派遣
宮崎県及び鹿児島県からの支援要請を受け、国土交通省の各地方整備局が保有する路面清掃車、散水車、歩道清掃車、降灰防御対応車の派遣を実施(九州含む全8地整と北海道開発局から延べ約2,300台の支援)。

4.おわりに

九州地方は、地形、地質、気象などの自然的条件から、火山噴火、台風、豪雨、豪雪、洪水、土砂災害、地震、津波・高潮などによる災害が発生しやすい国土となっており、毎年のように、これらの災害により多くの尊い人命・財産が失われている。
また、東北地方の想定を超えた津波、全国各地で発生している大規模な地すべりや局所的な豪雨による突発的な河川氾濫など、地方自治体の対応能力を超えた災害が多発してきている。被災した地方自治体に対して、国土交通省及び関係団体等が有する人材、資機材、ノウハウ等を活用した連携支援の重要性は、ますます高まるものとみられる。
一方、災対法第三条第1項において、国の責務として「組織及び機能のすべてをあげて防災に関し万全の措置を講ずる責務を有する」とあり、災害対応の専心に万全を期すことが国の役割として求められている。
これらを踏まえて、現在東日本大震災に対しても、先遣調査、排水指導及び情報通信支援等を行っているところであり、今後も早期避難や応急対策等の迅速・的確な対応のための防災情報共有、緊急災害対策派遣隊(TEC-FORCE)の体制強化など、地方自治体との連携・支援体制を進め、地域の総合的な防災対応能力の向上に努めていきたいと考えている。

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