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雲仙水無川遊砂地における堆積土砂除去の
無人化施工計画について

(財)砂防・地すべり技術センター
 火山砂防部長
林  久 雄

1 はじめに
雲仙・普賢岳は,平成2年11月に噴火して以来降灰や火砕流が頻発し続けており,平成3年6月3日には大規模な火砕流により尊い人命が失なわれた。また,降灰や火砕流は水無川流域の源頭部を中心に大量に堆積し,その結果,土石流が多発するようになり,下流の保全対象地域に多大な被害を及ぼしている。
この土石流災害から地域住民の生命,財産をまもり,安全な地域を確保することを目的とした砂防計画の基本構想が策定(平成4年2月22日,平成4年10月13日一部見直し)された(図ー1)。
しかし,雲仙普賢岳の火山活動は依然として活発な状況にあり,基本計画で示されている砂防ダム群の計画区域は,警戒区域に設定されたままである。
現在,建設省および長崎県では土石流災害から地域住民の生命,財産を保全するために警戒区域外で土石流対策のため導流堤の建設を急ぐとともに,当面の土石流災害防止のための応急対策として1号~4号遊砂地(4号は未施工)の建設を行っている。
しかし,ここしばらくの間,火山活動の終息は期待できない状況のもと,抜本的土石流対策としての砂防ダム群の建設が強く望まれているので,警戒区域内での施工のための方策を検討する必要が生じている。

2 無人化施工の検討
砂防計画が実行されない状況において,土石流の発生は繰り返されており,1号~3号遊砂地は土石流の堆積で満砂状態になっている。1号および2号遊砂地は10月20日現在では避難勧告区域であり安全対策を十分検討すれば堆積土砂の除去は有人施工で可能である。
3号遊砂地は依然として警戒区域に指定されており,有人施工は不可能である。
そこで平成5年度より創設された「試験フィールド制度」を活用し,無人化施工に関する技術公募を行うことになった。「試験フィールド制度」の内容は下記のとおりである。
(1)制度の概要
将来に向けて行政ニーズが高く,現場での技術的検証を通じて完成度を高める必要のある技術を対象に,実際の現場において試験フィールド(新技術の実施工事現場)を設定し,実大構造物を建設して各種試験等を実施する試験フィールド制度を平成5年度より創設された。
① 対象とする技術
a.技術の確立により建設事業の施工の合理化・安全性などが図られる技術
b.技術開発主体:官単独,官民共同または、民単独
c.技術開発段階:現場での検証実験が残されている開発段階の技術
② 試験フィールド
建設省の直轄の現場等
③ 試験フィールドの実施内容
①に該当する新技術について試験施工を行い,技術内容等の検証に資する各種試験計測等の実証実験もあわせて行う。
(2)制度の運用
① 地方建設局主体の試験フィールド制度
本制度は,現場のかかえる技術的課題に柔軟に対応できることを目的としていることから,実際に事業を遂行している地方建設局を主体に行うことを基本としている。
試験フィールドで活用する技術課題を地方建設局で決定し,官単独または官民共同研究での成果はもとより技術課題に沿った技術提案を民間からも公募し,そのなかで試験フィールドとして適用するにふさわしい新技術を決定し,各種試験等を通じ技術の完成度を高め,一般工法としての普及をめざす。
② 本省主体の試験フィールド制度
国の施策上,緊急に技術開発すべきテーマ(緊急災害対策技術,大規模プロジェクト活用技術等)については,試験フィールドで活用する技術課題を本省で決定し,以下は地方建設局主体の試験フィールド制度に準じて行う。
(3)なお,本「雲仙における無人化施工」の公募は,試験フィールド制度の最初の事例となる。

3 無人化施工に関する技術提案の公募
下記のとおり水無川3号遊砂地堆積土砂の除去を目的として無人化技術の提案公募を行った。
これは建設省が行うものであるが,公募にかかる事務の一部を財団法人,砂防・地すべり技術センターが代行している。

雲仙における無人化施工に関しての技術提案公募について
(1)目 的
雲仙・普賢岳における水無川砂防基本計画は,水無川と赤松谷川の合流点下流付近から上流の砂防ダム群と,その下流の導流堤から構成されている。しかし,雲仙・普賢岳の火山活動は依然として活発であり有人による施工は危険なため,計画の基幹となる上流砂防ダム群の設置や下流の遊砂地の常時の容量確保について無人化を前提に検討することが必要である。
そこで,無人化施工に関して具体的に試験フィールド制度を利用した現地施工をすることを前提として,当面以下の内容にあう技術提案を公募するものである。
(2)内 容
(テーマ)
土石流発生後に遊砂地等において緊急除石を実施するため,無人化により土砂掘削・搬出を継続的に行う一連の技術
(想定試験フィールド)
雲仙・普賢岳東麓,水無川遊砂地
規模:遊砂地 幅約200m,長さ約300m,掘削深約4m
対象(除石)土砂量:遊砂地(3号遊砂地)約20万m3

(3)公募技術の審査と試行する技術の決定について
公募いただいた技術提案について学識経験者等からなる委員会で審査いただき,その結果をもとに試行する技術を建設省が決定する。

4 無人化施工にかかる技術提案の説明会と応募状況
今回の「雲仙における無人化施工」の公募は試験フィールド制度の最初の事例である。説明会は7月23日に東京で行った。
当日はアメリカ企業2社を含む92法人約200人以上が参加している。
公募締切りの8月24日までに34社45件の応募があった(表ー1)。

5 応募内容について
今回の応募内容はいずれも真剣に検討され,できれば施工したいという熱意が感じられた。
内容としては特別なアイデアはなく,ごく平凡な重機械の組合せが多かった。34社45件のうち4件は要求技術を満たしていないため除外すると,41件の技術提案が委員会での審査対象となる。
次に41件の提案内容について概要を説明する。41件のうち34件が重機投入型(ブルドーザ,ショベル,ダンプ,ブレーカー)の提案であり,7件が設備設置型(走行クレーン,ベルトコンベアーパイプ輸送および人工導流溝輸送)であった。重機投入型は更に施工重視型と技術重視型に分類できる。

① 100m以上の遠隔操作が可能なもの。
② 本年度内に着手出来るものであること。
③ 直径2~3mの礫を遠隔操作で破砕が可能であること。
④ 一時的に温度100℃,湿度100%程度の状況下でも運転可能であること。

6 今後の予定
34社45件の応募についてヒヤリングを行った後,学識経験者等からなる「雲仙における無人化施工に関する委員会」が提案内容の審査を行い,最終的に建設省が試行技術を決定することになる。

7 おわりに
技術提案公募に関する事項について説明してきたが,来年の出水期までには遊砂地の堆積土砂除去が完了することを祈っている。
更に雲仙・普通岳が早期に鎮静化し砂防計画が施工され,住民の皆さんが安心して生活できるよう願っている。

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