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阿波井堰(あばいぜき)
改築事業の完成を祝う会
神野隆司
下田勝典

キーワード:堰改築、竣工式

1.はじめに
一級河川川内川における浸水被害を防ぐために、川内川河川事務所と鹿児島県、湧水町、JNC株式会社が連携して整備を進めてきた、阿波井堰改築事業がこのほど竣工し、平成28年3月20日(日)鹿児島県湧水町川添地先にて、記念碑除幕式及び完成を祝う会を執り行った。
この阿波井堰改築事業は、平成20年度に着手し、8年の歳月をかけて平成27年度に竣工を迎えた。
今回、阿波井堰改築事業と完成を祝う会の概要について、この紙面にて報告する。

2.川内川流域の概要
川内川はその流域が鹿児島県、宮崎県、熊本県の3県、6市4町にまたがる幹川流路延長137㎞、流域面積1,600km2の一級河川である(図-1)。流域は狭窄部を挟んで複数の盆地がひょうたん型に直列に繋がる地形で、盆地や平野部に人口・資産が集中し、ひとたび氾濫すると甚大な被害が発生する地形的な特徴がある。
平成18年7月洪水では、記録的な豪雨により3市2町(薩摩川内市・さつま町・伊佐市・湧水町・えびの市)において、浸水家屋2,347戸に及ぶ甚大な被害が発生した。
このため、「河川激甚災害対策特別緊急事業(激特事業)」が採択され、阿波井堰についても激特事業と相まって、川内川上流域の洪水被害を軽減することを目的に、平成20年度から改築事業に着手した。

3.阿波井堰改築事業の概要
阿波井堰は、川内川本川91k500付近の狭窄部に位置し(図-2:左写真参照)、発電用取水堰として日本窒素肥料株式会社(現JNC 株式会社)が大正8年に築造した固定堰で、完成後約100年が経過し老朽化が進んでいた。治水的には洪水の流下を著しく阻害していたため、改築を実施し水位低減による治水安全度の向上を図る必要があった。
このため、関係機関との連携のもと堰下流域への影響を考慮し、必要な河川整備及び鶴田ダムの洪水調節機能の強化とあわせて、上下流バランスを考慮しつつ、堰の改築を実施した(図-2、写真-1)。

4.完成を祝う会
阿波井堰改築事業の完成を祝う会は、地元選出の国会議員、地元県・市・町の関係者をはじめ、用地協力者、工事関係者、設計関係者など約160名の出席のもと開催された。オープニングで地元湧水町の吉松幼稚園児によるマーチングが披露され(写真-2)、続いて、記念行事として地元湧水町役場が製作した記念碑の除幕を行い(写真-3)、その後、実際に新堰の制水ゲートを転倒させ、可動堰の効果を確認した(写真-4)。

引き続き、阿波井堰高水敷に設営された会場に場所を移し、川内川上流河川改修期成同盟会(以下「改修期成同盟会」)理事代理の時任良倫伊佐市副市長の開会の挨拶で完成を祝う会が始まり、主催者として鈴木弘之九州地方整備局長(写真-5)が関係者への感謝を述べると共に、「湧水町の皆様をはじめとする多くの方々からのお力添えを頂き、堰改築に着手できた。可動堰化したことにより、この地域の治水安全度が大幅に向上した。今後も川内川の防災・減災対策に積極的に取り組んでいく。」と挨拶。

同じく主催者である改修期成同盟会会長の村岡隆明えびの市長(写真-6)から「川内川上流に位置する宮崎県と鹿児島県の県境を越えた二市一町(えびの市、伊佐市、湧水町)が一丸となって、国に対し阿波井堰の改築を要望してきた。阿波井堰が完成したことで、今後流域住民の安心・安全に繋がっていく。」と挨拶。

地元を代表して米満重満湧水町長(写真-7)より「川内川上流域の関係者が連携して一心同体で進めることにより阿波井堰の改築が実現した。皆様には感謝の気持ちでいっぱい。」とお礼を述べ、大西亘水管理・国土保全局治水課長(写真-8)からは、「阿波井堰の改築で治水安全度が大きく上がった。ただ、最近の気象状況を考えると備えあれば憂いなしと油断をしてはいけない。やはり備えがあれば憂いが減らせるくらいの気持ちでいることが肝要。また、過去の水害や改築の経緯等を次世代に語り継いで頂きたい。愛情を持って阿波井堰と川内川を支えて頂きたい。」と挨拶。

その後、伊藤祐一郎鹿児島県知事、小里泰弘衆議院議員、古川禎久衆議院議員、尾辻秀久参議院議員から祝辞を頂き、改修期成同盟会理事の竹中雪宏えびの市議会議長の閉会の挨拶で締めくくられた。
最後に、アトラクションとして、郷土芸能川添太鼓踊りが披露され(写真-9)、完成を祝う会のすべての行事が終了した。

5.おわりに
このたび、阿波井堰が完成を迎えられたのは、用地を提供、工事に御協力を頂いた地元の方々、また、計画段階から御協力頂いた湧水町役場を始めとする行政関係の方々、堰の管理者であるJNC株式会社の方々、そして、種々の困難を乗り越えて施工にあたった設計・施工業者の皆様の御尽力によるものであり、事業に関係したすべての皆様に改めて厚く御礼申し上げたい。

【参考文献】
1)神野隆司、下田勝典:川内川阿波井堰改築事業について九州技報No.58(2016.3)P23 ~ 28

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