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道守九州会議交流会 みちづくしin 佐賀2011
~未来をひらく つながりの道~
児玉敏幸

キーワード:道守九州会議、みちづくし、交流会

1.はじめに

九州の道守が一堂に会する「みちづくしin 佐賀」が平成23年11月2日、3日に佐賀市で開催された。「みちづくし」は平成16年に熊本で始まり、今年で8回目。今回の開催で「みちづくし」を九州全県で行うことができ、主催である道守佐賀会議では平成23年6月に実行委員会を立ち上げ、おもてなしの心で手作りの大会になるよう検討を進めた。今回は九州各県より道守会員などが340人、参加した。

実行委員長の山﨑昌治氏の挨拶(写真-1)から始まり、樗木武道守九州会議代表世話人、古川康佐賀県知事、秀島敏行佐賀市長、山内正彦九州地方整備局道路部長から挨拶をいただいた。岡本博国土地理院長から「安全・安心を守る道」と題し講演、また対談では佐賀県道路愛護協会会長である横尾俊彦多久市長を交え、「道」について意見を交わした。
みちづくしの場を借り、道守佐賀会議で行った「道の絵コンテスト」の表彰式を行い、小学生から大人までの受賞作品を紹介した。
パネル・フロアディスカッションでは各県代表から活発な意見が飛び交い、熱い議論が行われた。
最後に未来をひらく大会宣言を行い、会場からの大きな拍手で終えた。平成24 年度は熊本にて「みちづくし」が行われる予定。
(基調講演などの詳しい情報は、道守九州会議のホームページで公開しています。http://www.qsr.mlit.go.jp/n-michi/michimori/


2.基調講演

岡本博国土地理院長(写真-2)からの講演。
テーマは「安全・安心を守る道」。概要は次のとおり。

東日本大震災が3 月11 日に発生し、その中で「道」はどういう役割を果たしたのか。日本付近でマグニチュード9を経験したのは初めてで、大きかったのが津波。死者・行方不明者が2万人弱の被害がでた。津波で海岸沿いの道路が特に被害を受けた。国土交通省では「くしの歯作戦」を実施。救援物資を届けようと高速道路、国道を幹にし、海岸までの道路を震災翌日には16本中、11本を通行可能とした。とにかく道を広げてくことを、災害時協定を結んでいる地元建設会社と共に行った。
また道は、命を守るものになった。盛土して造られた地上高の高い道路は防波堤となり、避難ルートとなり、そして救援物資を運ぶ非常に大事な道であった。阪神・淡路大震災などを経験し、橋の補強も進めていた。さらには道の駅が防災の拠点として活躍した。
日本は残念ながらプレートの上に乗っているため、数百年の周期で必ず地震、そして災害は起こる。道路の整備が未来をひらく、そしてつながる大事な物になってくる。大事なことは、自助、公助、共助。まず自分で逃げる。子どもたちには「逃げる」という教育を行う。高速道路の整備、有事の際は自衛隊や消防隊を派遣するなどの公共団体の防災力向上も大事。そして一人だけではなく、みんなで助け合うこと。道守活動はこの共助の大きなきっかけとなる。これからもこの共助の目をしっかりと育てていただきたい。


3.対談

国土地理院長に横尾俊彦佐賀県道路愛護協会会
長(佐賀県多久市長)(写真-3)を交え、対談。概要は次のとおり。

横尾 岡本院長は道守会議の生みの親と聞いている。
岡本 生みの親ということではなく、たくさん親の方がいらっしゃる。ボランティアをされている方は、元々、たくさんいらっしゃる訳だが、あちこちで掃除などをされている方のご意見を伺う場所、そこで会議を開いた。道路を作っている側も皆さんとお会いして非常に良い刺激を受け、元気になる。第8回まで続き、大変ありがたい。
横尾 8回まで続けば、まだまだ続く。道路を作る側が一番嬉しいのは「良かったよ」など声を掛けてもらうこと。苦情は多いが、「ありがとう」は意外に少ない。暮らしに必要な道、産業に欠かせない道、それ以上に重要なことは命を守る道と痛切に感じる。
岡本 平成21年に宮崎に台風が来て大きな土砂崩れが起きた。夜通し作業を行い、片側一車線だけでも通れるようにと努力した。
横尾 災害の復旧は危険極まりない作業で大事だが、道のゴミ拾いなどの輪も本当に重要。その絆を大切にして色々な連携を地域で行っている。道守は「みちのかみ」と書くが。
岡本 みんなの思いを一番素直に表している言葉。
横尾 本当にわかりやすい。
岡本 掃除をやっているだけでなく、掃除をやっている人が知り合いだとゴミ捨てがなくなる。ゴミを捨てちゃダメだと気持ちが伝わっていく。
横尾 私も市長就任時は朝、掃除をして登庁した。今もボランティアの皆さんと一緒にゴミ拾いを行う。「出会ったゴミは拾いなさい」という有名な言葉がある。捨てる人がまず減っていく。感心して見ている人は多く、「こういうことは大事だよな」と思った人が増えていくと綺麗な街になり、人が集まる。ここにお集まりの方は、それ以上に活動されていると思うので、是非、今後もがんばってやっていただきたい。


4.道の絵コンテスト表彰式

道守佐賀会議で実施した「道の絵コンテスト」の表彰式(写真-4)を行った。佐賀県内の小学生から大人まで募集を行い、応募された総数179通から優秀作品を選定した。審査員を務めた山田直行佐賀女子短期大学学長は、「小中学生からは夢のあるカラフルな作品、表現豊かな道と自然を感じる心、大人の作品からは人生の哲学やその人その人の豊かな人生観、家族の温かさを感じさせる作品が目立った。」と講評した。
道守佐賀会議では、「道守」をもっと若い世代に知ってもらおうと道の絵(ハガキサイズ)を募集した企画。身近な道を様々な視点から捉えた作品に驚かされた。道をテーマとした企画でもっと多くの方に「道」を考え、伝えてもらいたい。「道」は世代を越え、人々の笑顔が集まる場所だから。


5.パネル・フロアディスカッション

九州各県の代表で行ったパネル・フロアディス
カッション(写真-5)。テーマは「未来をひらく&nbsp:つながりの道」。概要は次のとおり。

○パネリスト
道守ふくおか会議:山田三代子さん
道守佐賀会議:日隈諒さん
道守長崎会議:宮田隆さん
道守くまもと会議:岡田敏代さん
道守大分会議:古庄京子さん
道守みやざき会議:新名典忠さん
道守かごしま会議:神田橋万聖さん

○コーディネーター
川上義幸&nbsp:佐賀大学監事

川 上 平成10 年にNPO法ができ、地域の方が活用しやすい仕組みができ、お互いが進化してきた。今日はそれぞれの各県で活躍されている皆さんに活動紹介・提案をいただきたい。
宮 田 岡本院長から講演があった東日本大震災、私もバスで南三陸町に行ってきた。その姿はまさに壮絶。道も死んでいる。命の道、自分たちで作る道、そしてそういうものをどうやって維持するか、つくづく考え、道のありがたみ、重さを感じた。
日 隈 私は佐賀の大学生で商店街にサテライト施設を作り、若者と街をつなぐ架け橋となる団体で活動している。道ができるには人が存在して、またその土地に愛着があり、より良くしていきたいと思うからこそ道を造っていくんだと私は思う。自分たちの街に愛着を持つような、また持ってもらえるような活動を目指したい。
岡 田 熊本では九州新幹線の全線開業という日を迎えた。新幹線の駅が県内に4つでき、皆さんをお迎えしようと花いっぱい活動を行っている。今までのローカル線は本当に地域を、命をつないでいる道。道路と一緒に鉄道も大事な道。東北では第三セクターの三陸鉄道が大きな被害にあった。私も現地に入り、我々にできる活動を聞いてきた。今、八代駅で鉄道会社のグッズを販売し、支援を訴えている。
神田橋 町内会を始め、老人会や企業などの団体が協力して国道の手入れをバラで有名な大隅半島にある町で行っている。なかなか広がりを見せずにもう少しという気持ちがある。好意的に皆さんが感じているが、参加者の固定化が進み、これからの課題。
新 名 道守活動の課題は、人材、高齢化、固定化。そして財源。宮崎では社会実験として花壇に企業広告を設置し、来春から本格的な始動につなげていく予定。道守のそれぞれのつながりとともに、このようなシステムの継続、そして人のつながり、絆の輪を広げていきたい。
古 庄 道を早く作ってくれという要請活動から、道づくりは人づくり、人づくりは道づくりと気づき、道守会議に出会った。他の団体の方と行動しながら道路の草取り、花植えを楽しんでいる。地域の子どもたちが私たちの後ろ姿を見て、道は自分たちで守ることを感じてくれ、道守に参加してくれた。このような輪を広げていきたい。
山 田 福岡の県南、柳川では観光客にきれいな柳川の街をと思い、清掃から始めた。今では600 名ぐらいの参加があり、国土交通大臣賞をいただいた。無理をしないで、できることをできる人がやりましょうと常に頭において活動をしたい。できるだけ多くの人が参加すれば、若い人の目にも止まる。道守活動の姿を若い人に見てもらうことが将来の道づくりにつながる。
川 上 道守の第二ステージでは、まず、関係者を増やさないといけない。「老・中・若」、幅広い三世代共同参画で広がりを見せないといけない。その関係者をつなぐ、つなぎ役が必要。それをどうやって育てるか。また現実的な話では、お金がないとなかなか回らない。志、夢を片手に持ったら、もう一つの手にはそろばんを持って継続的な仕組みが必要。各団体にはノウハウがあるので、色々な知恵をお互い情報交換しながら良い形で第二ステージの道守会議が進むことを祈念する。


6.交流集会

交流会後の交流集会。総勢230 人余りの道守が集合した。会場ではすでに各県会議の活動の様子などを情報発信する「道守屋台」(写真-6)が熱気を帯びていた。

冒頭、牟田薫佐賀県副知事の挨拶から始まり、食事をしながら「道守屋台」を見学した。各県とも活動内容のパネルや地元の名産品を披露。そこら中で人混みができ、意見交換、そして高鳴る笑い声が響き渡った。
今回の佐賀県での開催で、九州全県で「みちづくし」が開催され、各県より九州一周の思い出話、苦労話を聞かせてもらった。佐賀会議からはお花、各県会議からは各地地元の名産品がプレゼントされた。


7.現地体験学習会

~シュガーロードとえべっさん~
北九州から長崎まで続く長崎街道。25の宿場で繋がれ、約224㎞の道のり。現在、シュガーロードと呼ばれている。海外から渡ってきた砂糖を使い、佐賀に名物菓子がたくさん生まれた。また、佐賀市は「えべっさん」(恵比須像 写真-8)が800体以上あり、その数、日本一。道沿いにある「えべっさん」は市民に身近な像として親しまれている。学習会には40 名余りが参加(写真-9)し、休憩に立ち寄った甘味処では佐賀の銘菓に舌鼓を打った。ガイドの話に耳を傾けながら、長崎街道の歴史、商売の神様「えべっさん」にまつわるエピソードを聞き、佐賀市内を学習した。

~嘉瀬フラワーロードとバルーンフェスタ~
早朝6時、30名弱が集合(写真-11)。一路バスで会場へ移動。車中で佐賀会議の「嘉瀬フラワーロード作戦会議」の松本さんより取組事例の紹介。
現地では1㎞以上に渡り、コスモスが満開(写真-10)で、バルーンの選手と観客を楽しませてくれる。通常10月上旬に開花するコスモスを長年の経験と知恵でバルーンフェスタに合わせて咲かせた。一斉に飛び立つバルーンとコスモスが美しい佐賀の朝であった。


8.おわりに

今回の開催で「みちづくし」を九州全県で行う
ことができました。この「みちづくし」に携わった皆様に深く感謝申し上げます。今回は限られた予算の中、手作りで行いたいという気持ちが道守佐賀会議に溢れ、世話人が中心となり、一致団結の心で大会を成功させました。大会の横断幕なども佐賀県立佐賀北高等学校書道部の皆さんに揮毫していただき、この場を借りてお礼申し上げます。「道」は私達みんなの暮らしの広場・空間であり、地域を育てるみんなの財産です。最後に今大会の大会宣言をご紹介し、終わりにしたいと思います。

「道」は世代を越え、人々の笑顔が集まる場所。私たちは花を植え、木を育て、ゴミを拾い、道で楽しみ、道を学び、守ってきました。これからも「道」が楽しめる場所で、それを次の世代へ伝えてもらえるように、皆様と道守活動を通じて「こころ」を育みましょう。
それが、「未来をひらく つながりの道」。

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