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車両大型化に伴う山鹿大橋の補修補強工事について(パートⅡ)

建設省熊本工事事務所
 所長
高 野 安 二

建設省熊本工事事務所
 道路管理第二課長
内 田 導 博

建設省熊本工事事務所
 道路管理第二課
 修繕係長
田 中 育 穂

建設省九州地方建設局
 道路部交通対策課
 特殊車両係長
下 山 道 秋

1 まえがき
山鹿大橋は,昭和28年に一般国道3号に架設された橋長176.00mの7径間鉄筋コンクリートゲルバーT桁橋である。
本橋は,車両大型化に伴い構造的弱点となるゲルバーヒンジ部の補強が必要であるため,ゲルバーヒンジ部のRC連結連続化による補強工事を実施し,7径間連続桁構造に構造変更を行った。
構造変更の概要はすでに平成7年度に報告をしたところであるが,今回は,工事完了に伴い実施した,載荷試験による補強効果確認の結果について報告するものである。

2 ゲルバーヒンジ部RC連結連続化工法の概要
(1)RC連結連続化工法の特徴
RC連結連続化工法は,既設ゲルバーヒンジ部の上下面を鉄筋で連結し,ゲルバーヒンジ部の遊間を間詰めすることにより,RC部材として全径間連続桁構造に構造系を変更し桁かけ違い部の構造的弱点を解消する工法である。
連結連続化工法の特徴は以下の通りである
① ゲルバ一部を無くし,構造形式を替える工法である。
② 連続化によりヒンジ部切り欠きによる構造的弱点が解消され,さらにヒンジ部の耐震補強も不要となる。
③ 本工法のRC連続化は,ヒンジ部遊間のモルタル充填と桁上下面に配置した鉄筋で部材を構成している。
④ 全径間連続化により,主桁の応力状態が変化する。定着桁および橋脚支点上では曲げ応力が減少するが,吊り桁では増加するため,吊り桁部はヒンジ部連結とともに主桁曲げ補強を行う必要がある。補強方法としては,桁下面に補強鉄筋を配置するが,この場合ヒンジ部遊間の連結鉄筋を兼ねて両側橋脚付近まで延長して配置している。
⑤ 既設支承はピン支承であるため,連続化した場合の温度伸縮による水平力の影響が非常に大きくなることから,既設支承をゴム支承に交換し,ゴムの剪断変形により温度変化の水平力を分散することとした。この場合,地震時水平力についてもほほ均等に分散させ,耐震上も有利な構造とした。
(2)RC連結連続化工法の構造
RC連結連続化工法は,以下の配筋図に示す補強構造となる。

3 補強効果確認試験
(1)試験内容
補強効果確認試験は,動的・静的載荷試験および応力頻度計測により補強前と補強直後の主桁主鉄筋応力度および主桁たわみを実測した。
また,載荷試験荷重および設計活荷重に対する理論解析を行い,理論構造上の主桁主鉄筋応力度および主桁たわみを求めた。
これらの実測値と理論値を比較検討し補強効果について評価を行った。載荷試験と応力頻度測定の試験目的は次の通りである。
① 動的・静的載荷試験:荷重既知の載荷試験車により発生する応力度およびたわみの理論値と実測値を比較することにより,構造変更による実構造の有効性について検討した。
② 応力頻度測定:現況の供用実荷重に対する補強効果について検討し,実荷重に対する安全性を評価した。
計測位置を図ー2,計測内容を表ー2に示し,荷重載荷位置を図ー3,荷重試験状況を写真一1~5に示す。

(2)試験結果
ここでは静的載荷試験の結果に基づいて補強効果を検討した結果を述べる。
計測は次の3段階で実施した。
① 第1回計測:第一期施工着工前(補強を行う前の構造)
② 第2回計測:第一期施工完了直後(試験的にP6-A2間のみ連続化した構造)
③ 第3回計測:第二期施工完了直後(全径間を連続化した構造)
静的載荷試験により発生する主鉄筋応力度を表ー3に,主桁変位を表ー4に示す。また各段階における応力度および変位の変化率を表ー5,6に示す。

上記表より考察されることを以下に述べる。
① 表ー5,表ー6より第三回計測で全区間連続化した後の構造の当初構造に対する鉄筋応力度および主桁変位の変化率をみると,実測変化率と理論変化率の値が概ね一致していることから,ほほ理論構造に近い挙動を示していることが確認できた。
② 表ー5より,既設鉄筋応力度の実測変化率が0.6~0.5の値を示していることから,当初構造に対し約1.6~2.0倍の耐荷力向上が得られていると者えられる。また,表ー6からは,主桁変位の実測変化率が0.7~0.3の値を示していることから,当初構造に対し約1.4~3.0倍の剛性の向上が得られていると考えられる。いずれも,ほぼ理論上期待した値が得られている。
③ 表ー3より,吊り桁において既設主鉄筋応力度の実測値が理論値の約50%程度の値を示しているのに比べ,補強鉄筋は80%の値を示している。
これは,理論上よりも実構造上の補強鉄筋がより有効に作用していることを示しており,理論上の期待値より高い補強効果を得ていると考えられる。
④ 表ー4より,連続化後の第3回計測結果を見ると,主桁たわみは理論値よりも実測値がやや上回っている結果となっている。この結果から本橋の実構造は理論構造よりも剛性がやや小さいものと思われる。これは,本橋の有する豆板等脆弱部・ひびわれ等損傷の点在およびコンクリート劣化により剛性および実弾性係数が低下していることに起因することが考えられる。

4 まとめ
山鹿大橋における,コンクリートゲルバー橋の連結連続化工法による補強は,概ね理論上と一致する挙動を示してることから,連続化工事完了直後ではほぼ期待した連続桁構造に完成していることが確認できた。また,吊り桁補強では,補強鉄筋が有効に作用しており,主桁下面付加鉄筋補強工法による桁補強も有効であることが確認できた。ただし,本橋コンクリートの劣化・損傷による剛性低下を生じており,長期供用を行う上で新たな損傷の発生原因となる可能性がある。

5 あとがき
完成直後の試験結果では,おおむね理論構造に一致する連続桁構造に完成していることが確認され,期待した補強効果は得られている。しかし,本補強工法は全国的にも初めての試みであり,また本橋も供用開始後43年経過しすでに多くの劣化・損傷が生じ,耐久性がかなり低下している状態での補修補強であることから,補強後の経過が未知数であり新たな損傷による補強効果の低下が生じる可能性も考えられるため,載荷試験を含めた長期の経過観測が必要であると考える。
今後は5か年の追跡調査を計画しており,本補強工法の問題点と有効性について検証していく予定である。

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