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豊かな自然の中建設が進む福智山ダム

福岡県土木部河川開発課
 建設係長
岡 田 裕 彰

福岡県土木部河川開発課
 主任技師
藤 吉 哲 也

1 はじめに
福智山ダムは,一級河川遠賀川に沿って開けた筑豊平野の中央,福岡県直方市の福地川に建設中の多目的ダムで,福地川総合開発の一環をなすものである。
ダムは高さ64.5mの重力式コンクリートダムで昭和54年度に建設事業に採択され,平成10年度よりダム本体工事に着手,平成14年度より試験湛水を行っている。
本ダムの事業区域は,北九州国定公園および筑豊県立自然公園内に位置する豊かな自然環境に恵まれた福智山山麓中腹部にあり,ダム本体の打設工法の選定や原石山の選定等において,極力掘削のり面を少なくする計画とする等,周辺環境に配慮し工事を実施している。
本報文では、福智山ダム建設工事の概要について報告する。
なお、福智山ダムの位置図,ダム諸元,ダム下流面図,標準断面図を図ー1,2,3および表ー1に示す。

2 流域の概要
福地川は福智山に源を発し,一級河川遠賀川水系彦山川に合流する流域面積15.7㎢,流路延長7.8kmの小河川である。
またダムの位置する直方市は,人口約62,000人の筑豊地区の中核都市である。市の中央部を流れる遠賀川を挟んで左岸側は行政・商業地区として市街地が形成され,右岸側は近年,新興住宅地の開発等が進み,都市化が広がっている。

3 事業の目的
(1)洪水調節
福地川の洪水被害の軽減をはかるため,ダム地点の計画高水流量100㎥/sのうち,88㎥/sの洪水調節を行う。
(2)既得用水の安定化・河川環境の保全等
ダム地点下流の福地川沿の既得用水の補給を行う等,河川の本来持っている機能を維持するための流量を確保する。
(3)水道用水の確保
直方市の水道用水として,ダム地点において一日最大2,500㎥/日を新規に開発する。

4 ダムサイトの地形地質
(1)ダムサイトの地形
ダムサイト周辺には,福智山(900.6m),尺岳(608m)をはじめ標高600m以上の急峻な山地が連なっており,ダムサイトの左右岸の山腹は約30°~40゜の比較的急な斜面からなっている。
(2)ダムサイトの地質
ダムサイトの地質断面図を図ー4に示す。

ダムサイト周辺に分布する地質は,古生代二畳紀の泥質岩ホルンフェルスを基盤岩としこれらを覆って末固結被覆層・段丘堆積層が2m程度の厚さで分布している。
基盤岩は塊状をなし,岩質的には著しく堅硬.緻密である。断層等は幅5~30cm程度の断層が12条確認されたが,破砕帯は再固結が進み堅硬な岩盤であることが確認された。
このようにダムサイトの基礎岩盤はCH~CM級岩盤を主体とする非常に良好な岩盤からなり,65m級のダム基礎として強度的な問題点は認められなかった。
また,基礎岩盤の透水性に関しては全体的に小さいが,地表付近のCM級岩盤に20LU以上の高透水な部分が認められ,またこの部分の限界圧が5kg/㎠と小さいため,グラウチングを実施した場合岩盤変位やリークが生じることが懸念された。このためこの地表付近の高透水部については掘削除去することとした。

5 ダム工事施工計画
ダムサイトは,右岸上流から左岸下流にかけてダム軸を斜断する形で北九州国定公園と福岡県立自然公園の境界線が通り,上流側が北九州国定公園,下流側が福岡県立自然公園に指定されている。
ダムサイト付近の北九州国定公園の地域区分は,第二種特別地域および第三種特別地域であり,一方福岡県立自然公園は普通地域に指定され,ダムサイトを含む一体はキャンプや福智山登山を楽しむ行楽の地として親しまれている。
このため,付け替え道路やダム施工設備の配置計画においては,ダムサイト周辺の自然環境に配慮し,現地形の改変が極力少なくなるよう付け替え道路のルートを選定した。
また原石山,骨材製造設備,コンクリート製造設備,濁水処理設備等を貯水池内に配置することにより,貯水池上部の掘削のり面が極力少なくなるよう計画した。

(1)施工設備・施工計画の検討
①コンクリート運搬・打設設備
当ダムの施工設備・施工計画を策定するにあたり,国定公園の環境保全上ダム天端より上部に大きな土工事を要する仮設備を設けない計画とすることとした。
このため,コンクリートの運搬打設工法の検討において在来工法として走行式ジブクレーン工法,定置式タワークレーン工法,RCD工法としてダンプ直送方式,インクライン方式および拡張レアー工法の比較検討を行った。
その結果在来工法の2方式はRCD工法に比較してコンクリート打設期間が約4ヶ月ほど長くなり,経済的に大幅に不利になることが判明した。
またRCD工法と拡張レアー工法については,
(a)ダム軸上流側の地形が比較的緩傾斜でコンクリート運搬路の設置に好都合である
(b)河床部施工時からダム天端施工時まで全工期において車両の進入が可能であり,機材や資材の搬入が容易である。
(c)コンクリートプラントから打設位置に運搬するまでコンクリートの積み替えが無く作業性がよい。
(d)他案に比較して経済的である。
等の理由からRCDダンプトラック直送方式を採用した。
設備については,コンクリート量20万1000㎥に対し,月最大打設量16,000m3,打設期間20ヶ月で計画した。

②原石山
本ダムの原石山は,付け替え道路より上位斜面が急峻であるのに加え,ダムサイトおよび貯水池近傍が北九州国定公園に位置していることをふまえ,掘削のり面が極力小さくなるようダム軸上流貯水池内に計画した。
原石山は、ダムサイトと同様泥質岩ホルンフェルスならびに礫質岩ホルンフェルスよりなり,いずれも著しく堅硬で,骨材試験結果でも,ダム用コンクリート骨材として特に大きな問題はなかった。
原石山における表土処理を除く岩掘削量は,約21万m3で,骨材製造までの歩留まりは約82%であった。

③骨材製造・貯蔵設備
骨材製造・貯蔵設備は地形上および環境保全上貯水池内に設置することとし上流端部右岸側の原石山上流とした。
事前の調査時点において,原石山の岩石中に濁沸石を含む白色細脈がわずかではあるが確認された。
濁沸石類は乾湿の繰り返しによりコンクリートを劣化させることもあるといわれており,施工前施工段階にかけてモルタルバーの暴露試験による確認,施工時に水洗により濁沸石除去を行うためのスクラバーを設置した。(写真ー2)その結果,外部コンクリート,RCDコンクリートとも濁沸石の含有量は1%以下となり,暴露試験の結果とあわせ問題ないことが確認された。
図ー5に骨材の製造と濁沸石への対応フローを示す。

④コンクリートプラント
コンクリート製造設備は,二軸強制練り4.5m3ミキサーを使用した。また,施工方法としてダンプトラック直送方式を採用するため,コンクリートプラントはコンクリート運搬路沿いのダム軸上流約150mの左岸平坦地とした。

⑤濁水処理設備
濁水の処理設備はまとまった用地の確保が困難であることからダムサイトと骨材製造設備の2ヶ所に分散して配置し機械処理脱水方式とした。
設備能力はそれぞれ150m3/h,530m3/hで,処理水はコンクリート混合水・グラウトミルク混合水以外は循環再利用することとした。
また、濁水処理で発生した汚泥は,ほぼ全量中間処理施設の許可を得たセメント工場まで運搬し処理した。
これは,低含水比のものは直接セメント原料に,高含水比のものは,工場内の固化設備を経由してセメント原料として再利用するもので,二次廃棄物は発生せずすべてがセメント工場でセメントとして生まれ変わるものである。(図ー6)

(2)貯水池周辺整備
福智山ダムの周辺整備に関しては,豊かな自然環境を保全するため,多方面からの意見を聞く場として,学識経験者や,地元代表者等からなる検討委員会およびワーキンググループにおいて検討を重ねた。
検討会等は平成5年から平成10年まで延べ13回開催し,これらの中で福智山山麓の良好な自然環境やダムによる新たな湖水を生かしたレクレーション空間,ダム周辺地域の活性化を目指した施設整備等,福智山周辺の自然環境を保全しながら魅力ある施設として整備をはかることとした。
また,ダム本体や周辺道路建設にあたり発生した掘削のり面については,元来あった植生環境に復元を目指す計画とした。
福智山ダム周辺の植生は,山腹にスギ檜の植裁された植林地,シイ・樫・コナラ等の常緑広葉樹林が広がっており,ダム周辺の自然林と一体化した生態回復を図ることを目指した。
このため,植生樹種の選定においては周辺植生調査を実施し,そのリストの中から選定を行ない緑化を行った。
また、ダム堤体については
①フーチングの大きさをそろえ,リズム感が得られるようにする。
②地山と縁部を形成するフーチング部に化粧型枠を設置し,人工構造物~周囲の自然にかけての自然なイメージを形成する。
③天端道路,洪水吐,ピア等の隅角部に円弧を挿入しダムの設置による人工的なイメージを和らげる,などの景観設計を行い周囲の景観とできるだけ調和するよう努めた。

6 おわりに
福智山ダムは,昨年7月に試験湛水を開始した直後の平成14年7月,8月にはダムサイトで平年雨量の17%という小雨にみまわれた。本年も出水期あけの9月,10月の降雨が平年雨量の21%と少雨傾向が続いているが,一日も早く試験湛水が完了し,このダムが今後,治水や直方市の水道用水の安定供給に大いに寄与し,福智山山麓の良好な自然環境やダムによる新たな湖水を生かしたレクレーション空間として,末永く親しまれていくことを期待する。

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