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一般国道497号(西九州自動車道)松浦佐々道路の概要
井本真樹男
佐野義尚

キーワード:西九州自動車道、整備効果

1.西九州自動車道の概要
西九州自動車道は、福岡県福岡市を起点とし、佐賀県唐津市・伊万里市、長崎県松浦市、佐世保市を経由して佐賀県武雄市で九州横断自動車道長崎大分線に接続する延長約150㎞の高規格幹線道路であり、沿線各都市間の所要時間短縮等により九州北西部の地域経済の活性化、高速定時性の確保に大きく貢献する道路である。

2.松浦佐々道路の事業目的及び概要
松浦佐々道路は、西九州自動車道の一部を構成する道路であり、長崎県北部に位置し、九州北西部の広域的な連携を図り、地域の活性化に大きく寄与する。
(区間)長崎県松浦市志佐町~同県北松浦郡佐々町
(延長)19.1㎞
(道路規格)第1種第3級
(車線数)2車線
(設計速度)80㎞ /h
(事業着手年度)平成26年度

3.長崎県北部地域の現状と課題
(1)地域・人口
松浦佐々道路が通過する地域は、長崎県の人口の約7%にあたる約10万人が居住しており、人口の推移については減少傾向である。
また、九十九島、平戸などの魅力的な観光地が存在し高いポテンシャルを有するものの長い時間距離により十分に活かされていない。

(2)生活
松浦市、平戸市、佐々町の世帯あたり自動車保有台数は年々増加しており、全国及び長崎県の平均を大きく上回っている。また、通勤通学時における移動交通手段の約7割以上を自動車に依存しており、その依存度は増加傾向である。

4.既供用区間の整備効果
松浦佐々道路は、伊万里松浦道路、佐々佐世保道路と接続し、西九州自動車道として一体となって整備効果を発揮する道路であり、現在、伊万里松浦道路(一部)、佐々佐世保道路(暫定2車)が供用し、沿線で既に整備効果をあげている状況である。
以下に既供用区間の整備効果を一部紹介する。

(1)進む企業立地(佐々佐世保道路・伊万里松浦道路)
西九州自動車道の供用に伴い、福岡都市圏や関西圏などと近いという好立地に加え、災害リスク(地震)が低いということから沿線地域※1の工業団地の造成が進み、製造品出荷額が向上するなどの第2次産業の活性化に寄与してきている。
今後も、新たな企業進出が見込まれ、道路整備による企業立地促進、一層の地域産業の活性化に期待がかかる。

(2)農産業、漁業での出荷量拡大(伊万里松浦道路)
沿線地域である松浦市では、地域ブランド「鷹ふく」として、養殖トラフグの収穫量が全国1位であるほか、「あじ※ 2」や「さば※ 3」なども全国有数の水揚量を誇り、多くが関西・中部・関東方面にトラックによる陸上輸送で出荷されている。当該道路の整備に伴う輸送時間の短縮や荷傷み軽減により、商品価値の更なる向上や取扱量の増加が見込まれる。
また、調川IC(仮)整備に伴い松浦魚市場のリニューアルを実施し、出荷量を1.3倍に拡大予定である。

また、伊万里松浦道路の利用による福岡や関東・関西方面への出荷をにらみ、松浦市にアスパラガス等の農場が新設された。
本農場では主力のアスパラガスの出荷量を平成28年度は約25トンを見込むが、平成31年度には九州最大規模となる約100トンを目指している。

(3)周辺地域の観光客が増加(平戸市・松浦市)
平成26年度の伊万里松浦道路の一部開通に伴い、福岡方面から平戸市への来訪者が約2割増加しており、観光できる地域の拡大や滞在時間の増加などの効果が発揮されている。
また、松浦市の道の駅「松浦海のふるさと館」では、平成27年度の買い物客が約10%増加し、賑わいをみせている。

(4)その他
○伊万里松浦道路の開通イベント
伊万里松浦道路では長崎県と佐賀県をまたぐ区間である山代久原IC~今福IC間(L= 5.5㎞)が平成27年3月14日に他区間に先駆けて開通した。
今後、他区間の開通とともに、松浦市や平戸市の長崎県北部地域と福岡都市圏が益々近くなる。

○道の駅(させぼっくす99)
佐々佐世保道路の相浦中里ICに近接した『「道の駅」させぼっくす99』が平成28年4月24日にオープンした。休憩機能と共に周遊観光拠点としてのゲートウェイの機能を持ち、地元特産品とグルメが満載で地域活性化に寄与している。

5.松浦佐々道路の整備効果
(1)地域間のアクセス性向上
長崎県の平均的な通勤時間は約30分となっており、松浦佐々道路の開通により平戸~松浦間がこの通勤圏内に入り、また、松浦~佐世保及び平戸~佐世保間も通勤時間が大幅に改善される。

(2)救急医療アクセスの改善
現況において第3次救急医療施設1時間到達圏は、平戸市の中心部付近までのエリアとなっている。松浦佐々道路の開通により、第3次救急医療施設1時間到達圏が拡大され、生月島まで1時間圏内に含まれるようになる。

また、平戸市役所~第3次救急医療施設である佐世保市立総合病院間の所要時間は53分から37分と16分短縮となり、迅速な搬送による救命率の向上が期待される。

(3)観光
北松地域は、歴史的な教会群等魅力的な地域資源を有しており、松浦佐々道路の開通により佐世保~平戸~松浦を周遊する広域ルートが形成され、平戸市から福岡市まで2時間圏内となり、観光面で大きな効果が期待される。

6.おわりに
松浦佐々道路は西九州自動車道の一部として長崎県内の時間短縮のみならず福岡都市圏などとの結びつきの強化により、観光や産業の活性化に寄与するものであり、有効かつ最大限に整備効果が発揮できるよう引き続き地域と一体となった整備を行っていきます。
最後に、整備効果把握に際し協力頂いた皆様に感謝申し上げます。

※1松浦市、平戸市、佐々町、佐世保市
※ 2、3 地域ブランドとして、五島海域から対馬海峡で4月から8月に獲れた1匹100g以上のマアジを「旬(とき)あじ」、一方、10月から翌年2月に獲れた一匹400g以上の寒さばを「旬(とき)さば」

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