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JATA(日本旅行業協会)と連携した耶馬渓ダム
インフラツーリズムの取り組みについて

国土交通省 九州地方整備局 
山国川河川事務所 ダム管理課長
堀 江 隆 一

キーワード:耶馬渓ダム、インフラツーリズム、メイプル耶馬サイクリングロード

1.はじめに
九州地方整備局では、既存のインフラや工事中のインフラを対象に、観光交流の増進による地域活性化を目指したインフラツーリズムの取り組みを進めている。
今回は、平成28 年度開催された「第1 回インフラツーリズム見学会(松原ダム・下筌ダム)」に引き続き第2 回として「インフラツーリズム見学会 ~タンデム自転車で巡る日本遺産と耶馬渓ダム見学ツアー~」を開催したもので、JATA(日本旅行業協会)の方々にインフラの役割・魅力についての体験と中津市耶馬渓の観光資源を組み合わせた見学により、ツアー企画の開発に繋げて頂くことを期待したものである。

2.耶馬渓ダム
耶馬渓ダムは、一級河川山国川の中流部で本川に合流する支川山移川に昭和60 年に建設された多目的重力式コンクリートダムである。
ダム湖には、水質保全を目的とした噴水設備等があり、季節(稼働:基本的に5 ~ 9 月迄、水質状況により11 月頃迄)によっては、高さ35m、直径50m の噴水が観光名所にもなっている。
また、年間を通じて小学校の総合学習の場として活用され、年間約900 名の小学生(4 年生)が訪れている他、地域イベント開催時にダム見学などを組み込んで、一般の方にもダムの役割などをPR している。

3.耶馬渓ダム周辺の観光資源
ダム周辺は、深耶馬渓、裏耶馬渓・奥耶馬渓、青の洞門、競秀峰きょうしゅうほうをはじめとした自然豊かな自然観光資源に恵まれている。
ダム湖を活用した耶馬溪アクアパークでは、水上スキーやウエイクボード、バナナボート、湖面遊覧が楽しめ、毎年水上スキー、ウエイクボードの国際大会や全国大会などが開催されており、世界各地から選手が訪れるなど地域振興の一躍を担っている。

また、平成29 年度には、「やばけい遊覧 ~大地に描いた山水絵巻の道をゆく~ 中津市・玖珠町」として日本遺産に認定(文化庁)され、観光地としての期待が益々高まっている。

4.観光地の選定
今回の見学会は、耶馬渓ダムの見学ツアーと周辺の観光地を組み合わせて行ったものである。中津市耶馬渓周辺は、観光資源に恵まれ、「青の洞門、競秀峰」など有名な観光地が、各旅行会社からツアー商品として既に販売されていることから今回の試みは、穴場スポット的な観光地を巡る旅とし、中津市企画観光部や観光協会と連携しながら候補地の選定を行った。

選定にあたっては、福岡からの日帰りである事を考慮し、限られた時間の中でよりインパクトが高い場所として、2 カ所を選定した。
1 箇所目は、山国川本川上流部に位置する「魔林峡・猿飛千壺峡まばやしきょうさるとびせんつぼきょう」(中津市山国町)である。猿飛千壺峡はその昔、山猿が現れて岩から岩に飛び回っていたことから「猿飛」と名付けられた。長い間かけられて造られた無数の甌穴(おうけつ)が広がり自然の素晴らしさを満喫できるスポットである。また、魔林峡は猿飛甌穴群の下流1.5㎞に延びる渓谷で、岩と岩の間が狭い「峡谷」となっており、遊歩道と展望台から四季折々の景色を楽しむ事が出来る。

2 箇所目は、メイプル耶馬サイクリングロードである。メイプル耶馬サイクリングロードは山国川を沿うように走る自転車専用道路で、中津駅から上流の旧守実温泉駅までの全長約36㎞。耶馬溪鉄道廃線跡地を利用したトンネルや鉄橋など変化に富み、山国川の景観と相まって四季を感じることが出来る初心者にもお勧めのサイクリングコースである。
中津市は、台湾の台中市と「サイクルツーリズム及び観光友好交流の促進に関する協定」を結んでおり、台中市に本社がある世界最大の自転車メーカーであるGiant 社製自転車を今年度50 台購入した。また、前後2 人乗りのタンデム自転車の公道走行も大分県内全域で解禁されている。
今回は、実際に自転車にまたがりサイクリングコースを体験して頂くものとした。コースは、耶馬溪サイクリングターミナルから青の洞門までの約11㎞のコースを設定した。

5.「自転車で巡る日本遺産と耶馬渓ダム見学ツアー」
当日は、JATA21 名、中津市8 名、中津耶馬溪観光協会3 名、整備局6 名、事務所6 名、総勢44 名の参加があった。
当日の行程は、①魔林峡・猿飛千壺峡、②メイプル耶馬サイクリング体験、③「競秀峰」を眺めながらの昼食、④耶馬渓ダム見学、⑤意見交換会と予定どおり時間内に行程を終えることができた。

①魔林峡・猿飛千壺峡

観光ガイドさんの案内により、「魔林峡」から「猿飛千壺峡」までを約30 分かけて散策。甌穴がどのうに出来たかなど参加者は熱心に聞き入っていた。

②メイプル耶馬サイクリング体験

③昼食

④耶馬渓ダム見学

⑤意見交換会
意見交換会のテーマの1 つとして「耶馬渓ダムを人気スポットとするためのポイントについて」JATA 参加者より積極的な意見が出された。

<主な意見>
・ダムカレーを造って欲しい。
・ダムカレー以外のものがあっても良い。メニュー開発しても良いのではないか。
・ダム湖がきれいなので、休憩施設があれば良い。タンデム自転車でダム1 周や遊覧等ができると良い。
・バーベキューができれば集客力が向上するのではないか。
・中には入れるのは良いと思うので、週末の定期的なツアーを組むなどできると良い。
・ダムの中が殺風景なので、写真等掲示しても良いのではないか。
・ダムは全体的に暗いので、インスタ映えするような明るい場所(場面)がほしい。
・ダムの中に入らず、通常立入禁止となっているダム直下から放水を自由に眺めることができると良い。

<その他主な意見>
・日本遺産では集客力がないので、日本遺産自体のPRがいるのではないか。
・観光スポットで名物の販売や飲食サービスがほしい。地域にお金が落ちる仕組みがいるのでは。
・青地区の堤防は、大規模な洪水を受けて整備されているが、青の洞門や競秀峰の景色に合わせて、石材の材質や色合いなど細かいところに配慮されて整備されている事に驚いた。インフラにもストーリーが欲しい。

6.おわりに
耶馬渓ダムでは、年間約1,000 名以上の方が見学に訪れているが、約9 割が小学生の総合学習によるものである。今後はツアー参加者や一般の個人観光客に、もっと興味をもって頂けるよう今回の貴重な意見を参考にし、創意工夫を行い、できるところから改善を図っていきたい。

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