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簡易橋梁点検システムの開発
三浦成治

キーワード:橋梁点検ロボット、カメラ映像、歩道規制

1.はじめに
九州地方整備局(以下、九州地整)において直轄管理する橋梁のうち、建設後50 年以上経過した橋梁が増加してきている。直轄管理の橋梁においては、5 年に一度の近接目視による定期点検を実施しており、そこで判明した進行性のある損傷箇所については、定期的な経過観察を行っていくことが重要である。
しかしながら、橋梁点検においては、交通規制や費用などの面で簡単に行えないことが問題であった。
今回、簡易に橋梁下の点検を行える機械を開発したので報告するものである(写真-1参照)。

2.橋梁点検の現状
2.1 橋梁の高齢化
九州地整が管理する3200 を超える橋梁のうち、建設後50 年以上経過した橋梁の割合は現在28%であるが、20 年後には65%まで増加する(図-1参照)。
橋梁が高齢化・老朽化するにつれ、コンクリート等の劣化や損傷の可能性が高くなり、補修・修繕を行わなければ、最終的には架け替えを余儀なくされることも考えられる。そのため、定期的に点検を行い、早期に損傷を発見することにより、補修箇所が小さいうちに対策を行うことで、橋梁の長寿命化やライフサイクルコストの縮減を図ることが有効である。

2.2 橋梁点検の現状と課題
損傷の早期発見を目的に行われている橋梁点検のなかでも、5 年に一度行う定期点検は近接目視・打音検査を主とし、最も効果の高い点検手法の一つである。
定期点検で判明した損傷のうち、補修に至らず進行状況を経過観察する程度の損傷については、補修が行われるまで定期的に追跡調査を行っていく必要があるが、足場や橋梁点検車を用いた近接目視では、確実性はあるものの車道規制や点検費用のコスト増加、また、熟練の操作員(橋梁点検車の操作)の確保等が課題となっている(写真-2、3参照)。

3.開発の概要
3.1 開発コンセプト
橋梁点検の現状と課題から、主に追跡調査を対象に、熟練の点検者、機器の操作員を必要とせず、また、円滑な交通流の確保、コスト縮減を図ることを前提として、以下のとおり開発コンセプトを設定した。
① 少人数での機器設置が可能であること。
② 車道規制を必要とせず、路肩や歩道の確保により点検可能なこと。
③ 映像機器を用いた点検手法とし、事務所等へ映像伝送できること。

3.2 試作機の製作条件
試作機は、操作性、機器重量、開発期間等より、以下のとおり条件設定を行った。
① 対面交通(2 車線)の道路橋に絞り、全幅員6m~12m を対象とする。
② 歩道の有無は問わないが、規制によって歩行者が通行できなくなるような狭い歩道・路肩は対象外とする。
③ 4 人程度で設置できること。
④ 橋梁用防護柵を対象とし、壁高欄は対象外とする。

3.3 試作機の概要
試作機の設置イメージを図―2、概略仕様を表―1、試作機の設置・撤去、点検に関する一連の流れを表―2に示す

4.試作機による現場実証実験
4.1 実験概要(実験状況等は写真-4~7 参照)
 場   所:国道202 号 78k500 柳渡瀬橋(佐賀県西松浦郡有田町)
 橋梁概要:全幅員12.3m,橋長56.5m,PC 単純桁,両側歩道有り

  

  

4.2 実験結果
① 今回の現場では歩道規制で行えたが、規制幅は1m以上無いと作業員の安全確保が難しい。
② 設置・撤去は4 人程度で可能だが、今回は設置2 時間、撤去1.5 時間程度必要であった。
③ カメラ映像は、連続的に吹く風によりブレが大きい。
④ 現場での映像伝送は出来なかったが、事務所において確認できた。

5.おわりに
今回の簡易橋梁点検システムにおいては、当初の目的である歩道・路肩規制で桁下の損傷を確認することができ、実証実験において良好な結果が得られた。しかし、システムの設置・撤去に時間を要すなど、実用化するには改良が必要である。
今後は、改良を行い、現場での実証を積み重ね、直轄は元より地方自治体への貸出しも視野に入れ、橋梁の適切な維持管理の一助となれるよう検討を進めていく予定である。

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