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「福岡県道路施設維持管理基本計画」策定の取組み

九州共立大学 工学部
 教授
牧 角 龍 憲
福岡県 道路維持課
補修係 係長
右 田 隆 雄

1 はじめに
最近、社会資本の老朽化・維持管理不足問題がクローズアップされるなかで、国をはじめ多くの自治体が、社会資本に対する維持管理問題に取り組み始めています。また、国の「橋梁の長寿命化修繕計画策定事業」では、長寿命化修繕計画を策定していない自治体(県5年以内、市町村7年以内に)には、補助金を交付しない方針が打ち出されています。
現在、福岡県におきましては、道路施設に対する定期点検制度や県下で統一した道路施設台帳の整備方針がなく、道路施設の計画的な維持管理に苦慮している状態です。
そこで、老朽化が進む道路施設による事故等を避け、効率的・効果的な維持管理を行うために、平成17年度から2ヵ年をかけて「福岡県道路施設維持管理基本計画」(以下「基本計画」という。)の策定に取り組みました。ここでは、その取り組みの経過と基本方針について紹介します。

2 基本計画の策定の流れ
基本計画の策定においては、出先土木事務所の実務者で構成する「作業部会」を組織して、
 ① 現場技術者が使いやすいものとなる
 ② 出先と本庁で情報の共有化が可能となる
 ③ 維持管理業務の効率化がはかれる
を念頭に、実作業レベルでの課題を洗い出し、確実に実行できる内容にすることから始めています。そして、「作業部会」での検討結果を、その上部組織であるワーキングや委員会(委員長:九州共立大学牧角教授)で、審議することとしました。基本計画策定の流れは、以下の通りです。

図-1 基本計画策定の流れ

3 出先土木事務所へのアンケート調査
県の出先土木事務所へ、以下の項目についてアンケート調査を行いました。

 1)人員体制について
 2)維持補修に関する技術について
 3)各土木事務所における苦情処理
 4)竣工台帳の引き継ぎ、保管状況
 5)施設台帳の状況
 6)現在、業務において困っていること
 7) 「こうしたらいいのになあ」と思うこと
 8)業務上、ムダな時間を要していること
 9) 8)に関する改善策、提案

図-2 2005年と2030年における福岡県が管理する橋梁の架設後経過年数

4 現状の課題についての整理
出先土木事務所のアンケート結果を踏まえ、道路施設の維持管理の現状課題として、以下の5つを整理しました。
1)大量更新時代の到来
福岡県における橋梁は、橋梁の寿命を概ね60年とすると、2005年現在で架設後60年を経過した橋梁数約800橋に対し、25年後の2030年には架設後60年を経過する橋梁数は約2000橋となり、福岡県が管理する橋梁の約半分が更新時期を迎えることになります。近い将来、大量の更新時代が到来することは明らかです。
2)予算の減少
福岡県土木部の予算は年々減少しており、特に道路関連の予算は、平成18年現在で、平成10年のピーク時に比べて約60%にまで減少しています。老朽化する道路施設に対する補修や更新のための予算の確保が、緊急の課題となっています。
3)職員の減少
福岡県土木部の技術系職員数は、過去3ヵ年で6%減少しており、社会資本に対する県民ニーズが多様化する中で、より一層の業務の効率化が求められています。

図-3 福岡県土木部の予算の推移

図-4 福岡県土木部の技術系職員数の推移

4)定期的点検および計画的対策の必要性
橋梁点検は毎年定期的に行われておらず、10年~15年毎に一斉点検を実施しています。今後ますます老朽化していくことが予想されることから、毎年計画的に点検と対策を実施していくことが必要です。

図-5 橋梁点検の状況

5)台帳の未整備
現在、福岡県において、道路施設台帳(諸元、図面、点検結果、工事履歴など)の統一した整備方針がなく、保存対象施設、保存方法(デジタルデータ、紙ベース)など、各出先機関で様々です。
また、道路施設台帳の更新方針も同様に統一されていないために、確実な更新が行われておらず、台帳が活用されていない現状があります。

写真-1 既存の施設台帳の一例

5 道路施設維持管理の理念・目標
基本計画では、道路施設を維持管理することにおいて、3つの理念と3つの目標を掲げています。

6 対応方針
道路施設維持管理の現状課題を踏まえながら、前述の目標を達成するため、基本計画では5つの対応方針を定めています。

7 おわりに
この基本計画は、今後の福岡県における道路施設維持管理のバイブルとなるものですが、約1年半という短い策定期間だったために、各対応方針にはまだ詰めきれてない部分が多々あります。
よって、平成19年度から約3ヵ年を試行期間と位置づけ、絶えずPDCAサイクルを回すことで、効率的・効果的な維持管理を着実に進めて行きたいと考えています。

写真-2 委員会開催状況

図-6 基本計画の対応方針相互の相関図

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