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福岡県流域下水道事務所における
事業概要と普及啓発に向けた取組み

福岡県 流城下水道事務所長
森  健 吾

1 はじめに
福岡県流域下水道事務所は,九州自動車道太宰府インターチェンジやJR鹿児島本線大野城駅,西鉄天神大牟田線白木原駅からほど近い,交通の便利な大野城市白木原に位置している。
当事務所は,その名のとおり流域下水道の施設建設に係る業務を専門に行う事務所であり,県内で唯一の下水道事務所である。
今回,当事務所で実施している事業を紹介するとともに,普及啓発に向けた取り組みについて報告したい。

2 福岡県の下水道
(1)地 理
福岡県は,九州の北端に位置し,九州と本州を結ぶ交通の要衝にあたり,九州の政治,経済,文化の中枢都市として発展した福岡・北九州の両政令市を含む96市町村から構成され,行政面積は4,972㎢4つの地方生活圏に500万人(市町村要覧H15年版)が居住している。

(2)歴史
福岡県における下水道の歴史は古く,大正7年に若松市(現北九州市若松区)において事業に着手したのをはじめとして,福岡市においては昭和5年に事業着手した。福岡・北九州の両政令市を除く他の都市における下水道事業の着手は,大牟田市が最も早く昭和32年である。
県事業である流域下水道事業は,昭和46年度に福岡市及びその周辺都市4市1町を対象とした御笠川那珂川流域下水道事業が着手された。

(3)現状と課題
平成14年度末現在,福岡県内21市31町1事務組合(1市1町)で下水道事業が進められており,うち16市20町1事務組合(1市1町)で供用開始している。
平成14年度末の下水道普及率は,66.5%と全国平均の65.2%を上回っているが,両政令市を除くと38.8%と低く今後も地方都市における下水道事業の促進が最重要課題である。
なお,流域関連市町における普及率は福岡市を除いても52.6%と高く,福岡県内においては流域下水道の貢献度が高いことがうかがえる。

3 流域下水道とは
流域下水道とは,特に水質を保全することが必要な重要水域を対象として,その流域内の2つ以上の市町村から発生する下水を行政界にとらわれずに効率的に集め,処理して河川等に放流するための根幹的な下水道施設である。
施設は幹線管きょとポンプ場,処理場により構成されており,原則として都道府県が設置し,管理する。
流域内の各都市で発生する下水はそれぞれの市町村が整備する流域関連公共下水道によって集められこれらの公共下水道が流域下水道の幹線管きょに接続されて処理場に導かれ,まとめて浄化される(図ー1)。

4 福岡県の流域下水道事業
福岡県で実施している流域下水道事業は御笠川那珂川,多々良川,宝満川,宝満川上流,筑後川中流右岸,遠賀川下流,矢部川及び遠賀川中流の8箇所であり,平成14年度末現在,御笠川那珂川,多々良川,宝満川及び宝満川上流については一部供用開始している。
当事務所ではこのうち,御笠川那珂川,多々良川,宝満川,宝満川上流及び筑後川中流右岸の5箇所で幹線管きょ築造工事並びにポンプ場及び処理場の建設工事を行っている。

5 各流域下水道事業の概要
当事務所で実施している各流域下水道事業の計画概要を,表ー1に示す。

(1)御笠川那珂川流域下水道
県内で最も歴史が古く,かつ最も規模の大きい流城下水道である。
御笠川浄化センターでは,増大する発生汚泥の減量化のため汚泥溶融施設を導入し,建設資材としての有効利用を図っている。さらに,平成12年度末には油温減圧式乾燥施設を運転開始して,汚泥の減量化に努めている。
また,水処理施設の覆蓋上部には多目的広場やテニスコートを含む約2.4haの屋上広場を設け,一般に開放して地域住民に親しまれている。

(2)多々良川流域下水道
福岡都市圏の西部に位置し,近年都市化の様相が著しい地域である。
供用開始直前の平成5年には,それまで多々良川では絶滅したと言われていたシロウオの姿が見られるようになり「シロウオを呼び戻す下水道」としてモデル事業の採択を受けている。

(3)宝満川流域下水道
福岡都市圏のベッドタウンとして新たに開発されたニュータウン建設にあわせて計画された。
昭和63年の供用開始後,宝満川の水質は良好に保全されており,なお一層の水質保全が期待されている。

(4)宝満川上流流域下水道
平成10年4月に,下流の宝満川浄化センターに汚水を圧送することによって供用開始した。
また,福岡県と佐賀県を流れる宝満川の水質保全を効率的,効果的に行うため2県にまたがって実施する,全国でも大変珍しい事業でもある。

(5)筑後川中流右岸流域下水道
平成16年には,上流の宝満川浄化センターに汚水を圧送することによって供用開始する予定である。
下流域では佐賀県鳥栖市が上水を取水していることもあり,今後の普及拡大による水質改善が期待されている。

6 普及啓発にむけた取り組み
生活環境を改善するとともに下水道によって河川や海などの公共用水域の水質を良好に保全するためには,1日も早い下水道への接続が必要であるとともに適正な施設の整備と維持管理が重要である。
このためには地元住民の理解と協力が必要不可欠であり,当事務所においては,工事説明会の実施やパンフレットの配布などを行っている(写真ー1)。

また平成15年度より,多々良川,宝満川の各浄化センターで毎年9月に行われている下水道展への参加,事務所のホームページ開設などの積極的な情報提供にも着手したところである(写真ー2,3)。

7 おわりに
当事務所で実施している事業は,既に供用開始から20年以上が経過し豊富な経験やデータが蓄積された御笠川那珂川から,ようやく供用開始を迎える筑後川中流右岸まで様々な地域にわたり.進捗率もまたそれぞれである。
従って,地元住民の求めるものは早期の供用開始,安定した放流水質の確保,より高度な処理による処理水の有効利用など,多種多様である。
本県における下水道普及率は地方部においてまだまだ低く,流域下水道に対する住民の期待や重要度は高い。このため,われわれに与えられた使命,そして説明責任といったものをひしひしと肌に感じている次第である。
最後に,当事務所ホームページ(アドレスhttp://ww4.et.tiki.ne.jp/~cross51/)は素人が作成したもので内容に乏しく,とても専門家の皆さんの目に耐えきれないものではあるが,是非ご覧いただきご助言をいただければ幸いである。

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