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真空環流式路面清掃車による清掃作業の効率化について
九州地方整備局 長友久樹
1.はじめに

現在、市街地で使用されている真空環流式路面清掃車は、清掃時の粉塵の巻き上がりを防止する必要があり、散水車との組み合わせ施工となるため、清掃時の効率化及び交通渋滞の緩和が強く望まれているところである。
このため、現在の真空環流式路面清掃車での課題となっている作業効率の向上及び清掃作業時の安全性の向上を目的として検討を行った。検討フローを図-1に示す。
今回は、昨年度までの検討により清掃時の粉塵の巻き上がりを防止することが可能となる新しい方式により現場実証実験を行い、その効果について検証を行ったので紹介する。

2.検討概要
2-1. 清掃対象塵埃の堆積状況調査
ある一定量の散水の下に行われる路面清掃時の粉塵発生量は、塵埃の堆積量および含まれる土砂の粒度分布等に影響すると考えられることから、現道の塵埃堆積量および土砂の粒度分布調査を行った。
2-2. 清掃時における塵埃発生状況調査
現場における清掃は散水車を先行させて行うため、苦情が発生するような状況にはなっていないと想定される。このため、九州技術事務所構内において、試験用砂による清掃時における粉塵発生状況調査を行った。調査状況を写真-1に示す。

2-3. 粉塵抑制対策の概略検討
粉塵発生状況調査の結果をもとに、主たる粉塵発生部位の粉塵抑制対策について、清掃方法、ブラシ構造、フィルター技術、省散水技術の側面から17技術について必要動力、重量増加、費用等について概略検討し、実現性の高い技術を抽出した。ここで、17技術のうち類似した技術を除いた8技術の対策案を抜粋して表-1に示す。

2-4. 省散水化と粉塵巻き上がり防止対策
粉塵抑制対策の概略検討の結果、特に有効な3つの技術は下記のとおりである。
①水タンク容量を増やし散水に活用
追加容量は、搭載場所のスペース、車両の保安基準(タイヤ負荷率、最大安定傾斜角度)などを検討した結果、350Lの増加が可能である。
②側ブラシの回転数調整
側ブラシの回転数を現在の固定式から調整式(ブラシの駆動用油圧回路に圧力補償型可変バルブを挿入して油量を調整:90min-1~150min-1)に変えることで、塵埃量( 走行速度) に対応した回転数の調整によって発塵抑制を図る(図-2参照)。

③ブラシ経由給水方式
透光性遮音壁清掃機械やトンネル壁面清掃機械では、節水方法としてブラシに洗浄水を噴射し、ブラシの回転軸中心から洗浄水をにじみ出す構造を採用している。この技術を応用して節水を図る。

2-5. 節水効果試験
ブラシ経由給水方式(噴霧水をブラシに直接噴霧)について、適正な散水量、噴射ノズル、ノズルの噴霧位置、側ブラシの離隔、側ブラシ回転数の組合せに着目した定置での要素試験を行い、効率的な給水方式を可能とする最適な組合せを抽出した。節水効果試験の概略図を図-3に示す。

図-5はガッター側前方散水量に着目した検討結果である。各条件での結果のうち、清掃の進行方向に対してエリアⅠの散水量が多いほうが、ガッター部の塵埃に効率的に散水できると考える。高回転の試験No.3ではノズルの位置が縁石に近く実作業の際に縁石等に衝突する可能性があるため、実務では採用できない。中回転の試験No.12はBノズルが斜め進行方向であるため、直接路面に散水されるので、ブラシ経由給水方式の効果が低減されると考える。このため、ブラシ経由給水方式での最適な組合せは「45°下向きand120°下向き」であると考える(図-5の二重赤丸が該当する)。図-4にノズルの位置の条件を示す。

2-6. ブラシの摩耗試験
ブラシの摩耗試験(図-6、図-7参照)では、現状の散水方式とブラシ経由給水方式のブラシの磨耗量を定量的に評価し、その効果を確認した。
時間当たりの摩耗量(平均)は、現状の散水方式に比べてブラシ経由給水方式は摩耗量を約4割抑制でき、冷却および潤滑効果によりブラシの延命(コスト縮減)が図れた。

2-7. 構内試験
構内試験(図-8、写真-2参照)は、省散水式路面清掃車の実現に向けてブラシ経由給水方式に着眼し、水の効果的な配分を行う改良設計の検討資料を得ることを目的に実施した。
構内試験の概要は下記のとおりである。
  1. 塵埃の散布区間は15m(または30m)。
  2. 塵埃の含水状態は絶対乾燥状態。
  3. 路面清掃車により清掃を行い、粉塵量を測定位置で捕集して、後日試料を乾燥させ質量を計測。
路肩の塵埃量が多い(0.2m3/km)ケースの構内試験結果(表-2)から、最適な仕様を次のように確定した。
  1. 散水方式は「ブラシ経由の給水方式(45°下向きand120°下向き)」
  2. 最適な組合せは「中速度(6km/h)and低回転(90rpm)and散水(4L/min)」、または「低速度(3km/h)and低回転(90rpm)and散水(3L/min)」

3.現場実証実験
3-1. 実験の概要
現場実証実験は、現状の散水方式と比べたブラシ経由給水方式の省散水化の効果を客観的に評価するために、現行清掃方法と省散水化による清掃方法との比較実験として行った。なお、実験場所は福岡国道事務所管内の3箇所(古賀地区、筑紫野地区、粕屋地区)で11月と12月に各1回測定を行った。測定項目および測定方法は表-3のとおりである。写真-3に実験状況を示す。

3-2. 現場実証実験結果のとりまとめ・評価
現場実証実験結果のとりまとめ・評価を表-3に示す。ブラシ経由給水方式は現状の散水方式に比べて、粉塵発生量の抑制、ガッター部への散水量の低減、清掃効果の向上、ブラシ摩耗量の延命によるコスト縮減を図ることが可能である。これより、ブラシ経由給水方式による清掃方式は、散水車(事前散水)なしで路面清掃車の単独清掃が可能であると評価できる。

4.省散水化技術の提案・施工要領の作成

施工要領は、省散水化の基本的考え方を説明し、現場条件に応じた施工要領が選択できるように留意した。この検討における主たる項目と内容を表-4と表-5に示す。

5.まとめ

真空環流式路面清掃車の清掃時における粉塵の巻き上がりを防止する省散水化技術として、ブラシ経由給水方式を提案し、現場実証実験では現状の散水方式に比べて、粉塵発生量の抑制、ガッター部への散水量の低減、清掃効果の向上、およびブラシ摩耗量の延命によるコスト縮減を図ることが可能であると実証できた。
今回提案するブラシ経由給水方式は、2-4.②で説明した側ブラシの回転数調整バルブの取付と、ノズルの位置を変えるだけなので大幅な清掃車の改造が必要ない。また、散水車(事前散水)なしで真空環流式路面清掃車の単独清掃が可能となれば、機械維持費、人件費を含めたトータルコストの縮減が可能となり、かつ交通渋滞の緩和に効果があるものと考える。よって、これらのことより、現在の真空環流式路面清掃車での課題となっている作業効率の向上及び清掃作業時の安全性の向上が期待できる。
今後は、年間の清掃作業の中で最も清掃条件が厳しい時期(夏季)での現場試験運用を行い、あわせて施工歩掛かり策定のための調査を行う予定である。さらにはブラシにより清掃を行う他の清掃機械に対して、ブラシ経由給水方式への取り組み(応用)を行い、本検討の成果が幅広く活用されることを期待したい。

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