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白川市街部改修について

熊本工事事務所
調査第一課長
渡 部 秀 之

1 まえがき
白川は,人口約57万人の熊本市市街部を貫流する流域面積480km2,幹線流路延長74kmの一級河川である。白川では,昭和28年6月26日に最大流量3,400m3/sという出水をみ,多数の死者と流失家屋を出す大水害を受けたことを契機として,直轄改修が開始されている。
現行の工事実施基本計画では,基本高水のピーク流量3,400m3/sのうち上流立野ダムで400m3/sの洪水調節を行い,計画高水流量を3,000m3/sとしている。

現在,熊本市市街部の白川沿川は「森の都」としての街づくりを目指す熊本県や熊本市の貴重な緑地空間として位置付けられており,市民の憩いの場となっている。しかし,沿川緑地のある区間は川幅80m(上下流は約120m)と狭窄部となっていることから,計画高水流量の約半分1,500m3/s程度の流下能力しかなく,改修計画では40m程度拡幅することとなっている。このため,沿川のビル・家屋のほか緑地・公園施設が用地買収区域にかかることになる。
ここでは,当地区の改修促進方策として検討した各種対策工法案について紹介する。

2 白川沿川の状況
(1)土地利用状況
① 右岸側は,主に商業地域に指定されており,熊本市の中心市街部を形成し,土地の高度利用が進んでいる。
② 左岸側は,大甲橋上流が主に第2種住居専用地域であり,今後中高層住宅の建設も予想されるが,現在は木造低層を中心とする住宅地である。また,大甲橋下流は商業地域および病院敷地であり,商業地域においては,中高層のマンション・ホテルの新築が目立つ。
③ 銀座橋下流右岸は,幹線道路である一般国道3号が白川沿いに走っている。
④ 大甲橋~明午橋区間右岸は,通称「鶴田公園」と呼ばれる良好な沿川緑地となっているが,この緑地に隣接して郵便貯金会館・農専ビル等の堅固で新しい建物が建っている。また,この上流区間は明午橋まで密集住宅地である。
⑤ 明午橋上流右岸側は,藤崎八幡宮をはじめ神社・仏閣があり,比較的家並が古い住宅が密集する。
(2)白川沿川緑地の状況
熊本中心市街部にあたる代継橋から明午橋までの約2kmの白川沿川の区間(左右)には約1,000本の樹木が生い茂っている。そのうち幹径が30cm以上あるものが3割程度,60cm以上の大木が40本程度分布する。
樹木の樹種としては,サクラが最も多く,次いでエノキ・クスノキ・イチョウ等が生育している。

3 対策工法の検討
白川の治水対策については,地元地域の有識者より現況の沿川緑地を保全したいとする観点から各種の提案が出されており,これらの提案を検証する意味から,また,市街地中心部での用地買収などの事業の円滑な推進を図り,改修後においても極力良好な河川環境が保全または創出されることを願い,当事務所においても各種の対策案の検討を行ってきている。
対策案としては,大きく分けて①河道の流下能力増大と②流域の遊水保水能力増大を図る案が考えられ,表ー3に各案の検討結果を示す。各案とも,現改修計画と比べて,多額の費用を要し,土地利用への影響も大きい。
これらの検討結果は対しては,①各案を色々と組み合わせることで良案とならないか,②町づくりの視点からも検討できないか,③植樹を可能とする対策はないか,等の様々な意見が提起されている。

4 対応状況
本件に関するこれまでの経緯を表ー4に示す。
当事務所では,都市河川白川が抱える諸問題を解決するため,昨年4月に国県市の行政担当者と学識経験者からなる「白川河川懇談会」を発足させ,これまで2回会合を開き,地域の方々が考える治水対策案および緑地保全案について意見交換を行ってきた。
さらに本年4月には,国県市の行政担当者からなる「白川市街部改修協議会」を設置し,河川事業だけでなく地域整備および環境整備事業などを合わせて実施するための調整活動を開始している。

5 おわりに
ここに紹介した検討結果に加え,さらに様々なケースについて検討を行い,事業の円滑な推進に向けて,具体的な事業計画の策定を進めていきたいと考えている。

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