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熊本県の県営住宅における
ユニバーサルデザインの取り組みについて

熊本県 土木部
 住宅課 参事
佐 澤  毅

1 はじめに
熊本県では、超高齢社会の進行や多様化する住宅ニーズに対応するため、平成18年度に策定した住生活基本計画において「ユニバーサルデザインの理念に基づき誰もが安全・安心・快適に暮らせる住まいづくり・まちづくり」を基本目標の一つに掲げ、各種住宅施策に取り組んでいる。
県営住宅については、現状で、住戸内に2箇所以上の手摺設置や床段差の解消、幅の広い廊下の全てを満たす住戸が1割程度という状況であるが、これを平成27年度には3割まで引き上げることを目標に、老朽化・陳腐化した住宅の建替え時にユニバーサルデザイン化を図り、比較的新しい住棟については住戸改善工事を行い、高齢者をはじめ誰もが使いやすい住宅の整備を進めている。

2 建替事例(九品寺団地 H18年度竣工)
九品寺団地は、熊本市中央部の市街地から南東に1㎞ほどに位置する団地で、旧住宅(RC造3階建て2棟)は昭和28年度に建設されており、老朽化が著しく、安全面での問題も抱えていた。また、60歳以上の入居者が7割を占めており、早急な建替えとともにユニバーサルデザインによる団地整備が求められていた。

県営住宅九品寺団地

(1)事業概要
 ○所在地  熊本市九品寺3丁目
 ○構造規模 RC造6階建て片廊下式
 ○床面積  3,407.30m2
 ○整備戸数 48戸
 ○竣工年度 平成18年度

(2)事業の特徴
① 住戸内は段差無しとし、各部屋の出入口は、開閉や通過のし易さを考慮し全て幅80㎝以上の引戸とした。また、引戸とすることで2室を1室として使用することができ、入居者のライフスタイルに合わせ、柔軟な空間構成が可能となった。
また、ワイドスイッチを採用し、コンセントの取付け高さも使いやすさを考慮し決定した。

住戸内部

② 1階住戸は高齢者向けの住戸とし、玄関ドアに引戸を採用した。また、玄関横には電動車いす用の電源を設置した。
③ 浴室は、火傷や転倒防止等のためサーモ付き水栓、低床式ユニットバスを採用した。また、扉も引戸とし有効幅80㎝以上とした。

浴室

④ 階段は緩勾配(踏面30㎝、蹴上げ15.8㎝)とし、両側に手摺を設置した。また、廊下幅員は150㎝を確保した。

屋外階段

⑤ 車いす及び視聴覚障害者用対応のエレベータ
⑥ その他、玄関や便所、浴室内に手摺を設置し、ベランダ側窓サッシにも持ち手を取付けたり、押入れの棚板の高さが変えられるようにするなどの工夫をしている。

窓持ち手

押し入れ

3 住戸改善事例(H19年度 150戸施工)
既存の県営住宅のうち今後も引き続き長期間の使用が見込まれる住棟について、住戸内の床段差の解消や手摺設置等の住戸改善工事を行っており、平成18年度から毎年150戸ずつ実施し、平成27年度までの10年間で1500戸の整備を行う予定である。
平成18、19年度は、対象となる団地住棟の1階住戸を重点的に整備した。
(1)事業の特徴
① 改善工事は、入居者が居住したままで施工している。このため、入居されている方々に理解し、協力していただくことが不可欠であり、対象住棟の入居者(平成19年度までは1階のみ)に対し、事前に事業の説明を十分行い、内容を理解していただいたうえで、改善工事の希望があった住戸のみを行うこととしている。
② また、工事期間についても可能な限り短縮するように努め、1住戸当たり概ね6日のサイクルで施工している。
③ 改善工事完了後に、入居者に対して改善工事に対する評価についてアンケート調査を行い、その結果や寄せられた意見を翌年度の事業に活かしていくこととしている。
(2)改善の内容
工事内容については、次に掲げる項目を標準として施工を行っている。
 ① 床面の段差解消
 ② 玄関、浴室、便所への手摺設置
 ③ 浴槽、洗面化粧台の取替え
 ④ 3点給湯(台所、浴室、洗面)
 ⑤ ドアホンの設置、スイッチのワイド化など

工事の概要

4 おわりに
本県の高齢化率は24%を超え、全国平均を大きく上回っている状況であり、公営住宅を含む社会資本の整備においては、超高齢社会に対応するためにもユニバーサルデザインの理念に基づき着実に整備を進めていく必要がある。  
今回建替えを行った九品寺団地については、ユニバーサルデザインの考えに、基づく整備を行った古庭坊団地(H15年度竣工)、健軍団地(H16年度竣工)での実績を踏まえ、さらなる工夫を凝らしながら整備を行っている。
また、住戸改善工事については、これまでは1階住戸を重点的に整備してきたが、2階以上の住戸にも床段差の解消や手摺設置などを必要とする方が入居されているという実態も踏まえ、今年度からは2階以上にも対象範囲を広げて実施することとしており、住民への周知の方法や工事を実施する住戸の選定方法等について検討を行っている。

浴室段差解消、浴槽取替え、手摺設置

便所出入口段差解消、手摺設置

洗面化粧台取替え

スイッチのワイド化、給湯器リモコン設置

本県での取り組みについても、まだまだ見直しの余地が残っており、今後も入居者の方が安全・安心・快適に暮らせる住まいづくりの手法やデザインを追い求め続けていくことが重要であると感じている。
本県の事例が、県内外の自治体や民間住宅における取り組みの参考となることを期待している。

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