一般社団法人

九州地方計画協会

  • 文字サイズ
  • 背景色

一般社団法人

九州地方計画協会

  •                                        
熊本工事事務所事業概要

建設省 熊本工事事務所
 所長
望 月 達 也

1 はじめに
熊本県を構成する94市町村のうち,58市町村が過疎地域となっており,また,熊本県の高齢人口比率は19.6%と全国平均の15.7%に比べかなり高く,少子化・高齢化社会の進展による生産年齢人口の減少といった問題が顕在化している。
このような過疎地域は,わが国の重要な食料・木材供給基地となっているとともに,豊富な自然景観に恵まれた多自然居住地域の基盤となる地域である。また,近年の地球温暖化問題等への対応のためにも当地域の森林の保全の観点から重要な役割を担っている。
しかしながら,熊本県の社会資本の整備状況を見ると,河川の整備率や下水道の普及率,一般国道指定区間の整備率などにおいて全国平均を下回っている状況にある。また,熊本県においては,域内総生産に占める公共投資や建設業の生産割合が高く,完全失業率も全国平均4.7%に比べ5.2%と高い状況にあり,公共事業が地域経済へ与える影響は大きい。
こうした厳しい環境の中で,当地域が自立的発展を図るためには,生活の安全を確保したうえで,地域の特色ある資源を活用した魅力ある地域づくりを進め,人の交流と経済活動を促進させることが重要であり,そのためにも河川整備や交通基盤整備などが必要不可欠である。

2 河川事業
改正河川法が施行されて早2年が過ぎ,河川行政をとりまく情勢が変貌していく中,白川・緑川における取り組みについて述べてみる。
(1)白 川
白川は,66万都市熊本市の中心部を貫流する都市河川であるが,治水安全度が1/10という,九州の直轄河川の中でも,全国の都市河川の中でも最も治水安全度が低い河川である。都市河川であることを含め,白川が抱える独自の課題に対しての取り組みの中から幾つかを紹介する。
 ① 白川流域住民委員会
平成11年2月,流域内の住民意見を聴取,集約整理し,河川管理者に提言をいただく第三者組織として「白川流域住民委員会」を発足させた。委員会は,既に4回開催しており,現在は流域内および氾濫区域内の約14万世帯のアンケート調査に加えて,住民からの意見を聴取する「住民部会」を開催中である。今年度内にはこの意見をもとに河川整備計画の原案を作成することとしている。
 ② 白川技術委員会
河川事業の主要テーマの一つである治水と環境の折り合いを河道計画にどのように反映させるかなど,観測データ,検証データなどをもとに,白川流域の技術的課題に対して検討を加えている。
 ③ 白川洪水危機管理検討委員会
今後20~30年で上流黒川遊水地群,立野ダムの建設,市街部改修の概成をもっても,約1/30程度の治水安全度と想定される状況において,超過洪水対策としての危機管理体制のあり方が非常に重要になってくる。情報伝達網,避難ルート・場所などの整備,行政・マスコミ・ライフライン・自衛隊・警察・消防などの役割分担,それに住民の自主防災に対する啓発など,ひとたび氾濫が発生すると壊滅的なダメージが予想される白川独自の危機管理体制について検討を加えている。
 ④ 熊本地域水循環研究会
飲料水を全量地下水で賄っている熊本地域は全国的にみても水資源に恵まれた地域である。しかし,土地利用の変化による涵養量の減少や水質汚染の問題が顕在化しており,これらの現象を踏まえて熊本地域の水循環機構の解明とともに,健全なる水循環のあり方について研究に取り組んでいる。

(2)緑 川
緑川は,支川加勢川・浜戸川,本川下流高潮区間の治水整備が急務であるが,一方では自然豊かな中流を中心に訪れる人も多く,環境教育の推進などを望む声が高い河川でもある。
 ① 加勢川流域懇談会
平成11年6月,加藤清正の治水事業以来,約400年を経て左岸堤防並びに六間堰改築によって,浸水常襲地帯解消という悲願が達成された。名実ともに“ふるさとの川モデル河川”になるべく,流域住民と行政の連携による河川整備計画の策定と流域づくりに向けて動き出している。
 ② 緑川の日実行委員会・緑川流域こども同盟
大人はもちろんのこと,子供だけの流域連携による川づくりを推進中である。

(3)今後の展開
改正河川法は,今一度ふるさとを流れる川を住民自ら守り育てるしくみを構築することにある。もはや河川管理者だけでは,これからの河川行政は成り立たない状態といえる。社会情勢の変化とともにまちづくり,村づくりが変化してきている。これからの川づくりは,意見の違う流域住民一人一人と行政,学識経験者が同じテーブルにつき治水・利水・環境の折り合いについて意見を交えることから始まるのである。治水が著しく遅れている白川,流域の活性化に川を生かそうとしている緑川,特徴の違う二つの川について,将来を見据えながら,まずは“安全で親しみある川”にするために“住民が考える”テーブルを,行政として可能な限り用意することに,今は意を注ぎたいと考えている。

3 道路事業
熊本工事事務所は,国道3号,国道57号,国道208号の改築(地域高規格道路2事業,一般二次改築7事業)および管理(管理延長270km)を所管している。
地域高規格道路は熊本天草幹線道路(熊本市~本渡市間延長約70km)の熊本市~三角町間および中九州横断道路(熊本市~大分市間延長約120km)の熊本県内の区間を当事務所で整備する。本年5月に,両路線の一部を構成する熊本宇土道路,阿蘇大津道路の環境影響評価の手続きを完了したところであり,引き続き,路線測量や詳細設計を進める計画である。
一般二次改築は,都市周辺の交通渋滞解消,地域間交通の円滑化による道路交通機能の確保および老朽橋の架替を目的に,一般国道3号池田橋,植木バイパス,熊本北バイパス,川尻バイパス,一般国道57号立野拡幅,大津バイパス,一般国道208号玉名バイパスの整備を行う。このうち,熊本北バイパスについては,昨年12月に新たに龍田町陳内~清水町麻生田間(3.2km)を暫定供用しており,直接的な効果として相当の時間短縮効果(従来22分→供用後5分)が現れているとともに,国道57号熊本東バイパスの交通量が約5%減少するなど,都市圏の交通の円滑化に大きく寄与している。今後とも計画的に用地買収および事業の促進を図る。

4 おわりに
21世紀に向けて建設行政に対する期待と要望はますます増大し,多岐に亘るものと思われますが,「魅力にあふれる住みよい九州」を目指して,安全で安心して暮らせる九州,豊かな自然を活かし快適で高質な生活を実現する九州,活力と豊かな想像力を生み出す九州,アジア地域に拡がる多様な交流・連携を育む九州を実現するために一層努力して参りますので,ご理解とご支援のほど宜しくお願いいたします。

上の記事には似た記事があります

すべて表示

カテゴリ一覧