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火山活動の降灰に対する道路管理
本釜耕一

キーワード:降灰除去、桜島、霧島山(新燃岳)

1.はじめに
鹿児島では、桜島や霧島山(新燃岳)など活発な活動をしている火山が多いことから、全国的にもめずらしい取組である火山活動の降灰に対する道路管理について報告する。

2.桜島と霧島山(新燃岳)の火山活動について
(1)桜島について
桜島は誕生以来、現在までに17回に及ぶ大噴火を起こしている。
国内で20世紀最大の大噴火である大正噴火は、大正3年(1914年)1月12日に起きた。西と東の両山腹から噴火が起こり、その噴煙は上空8,000メートル以上にも達した。大量に流出した約30億トンもの溶岩により瀬戸海峡(幅300~400m、深さ70~80m)は埋没し、桜島と大隅半島は陸続きとなった。また、噴火の約8時間後には錦江湾内を震源とするM7.1の地震が発生している。
大正の大噴火とそれに伴う地震では、死者・行方不明者58名、負傷者112名、家屋の焼失2,148棟、家屋の全半壊315棟という甚大な被害が発生した。
以前は南岳山頂火口からの噴火が主であったが平成18年6月以降は、昭和火口での噴火が活発化している。平成23年は観測史上最多の爆発的噴火回数である996回を記録した。平成27年も過去5番目となる737回の爆発的噴火を観測するなど、現在も活発な状況が継続しており、警戒が必要な状況である。

(2)霧島山(新燃岳)について
霧島山(新燃岳)(以下、新燃岳という。)は平成23年1月より火山活動が活発になり、1月26日には52年ぶりに爆発的噴火が発生し、2月1日の爆発的噴火では、空振で多くの宿泊施設等で窓ガラスが割れるなどの被害が発生した。
2月1日に、立ち入り禁止区域が最大の火口から半径4㎞以内となったが、爆発的噴火も3月以降、観測はされず、段階的に規模が縮小され、平成25年10月22日からは、火口から半径1㎞以内が立入禁止区域になっている。しかし、2月には、火山性地震が増加しており、今後も警戒が必要な状況である。

3.火山活動の降灰に対する道路管理者としての対応
(1)桜島について
県では、危機管理局を中心に、降灰観測点を設定し、降灰量の測定を行っている。桜島から20㎞以内にある33地点の合計値で、平成27年の1年間で202㎏ /㎡となっており、桜島から噴出される降灰量が非常に多い状況である。また、桜島の爆発による降灰の範囲は、爆発時の風向きに大きく左右される。
桜島の降灰による被害として、積もった灰で区画線が見えにくくなり、通行車両により巻き上げられた灰で視界が不良になるなど、安全な道路交通に支障が生じる恐れがあることから、道路管理者として、安全な道路交通の確保のため、降灰除去作業に係る業務委託を年間契約で行い、保有している大型路面清掃車6台、小型路面清掃車2台を民間業者へ貸し付け、また、民間業者保有車両6台を確保し、合計14台の路面清掃車による降灰除去作業体制をとっている。

ただし、活動火山対策特別措置法が昭和53年に一部改正され、降灰除去制度が確立されたことに伴い、市街地及びその周辺地域の市町村道と市町村が管理する下水道・都市排水路・公園に係る、降灰の収集、運搬、処分に要する費用及び降灰除去作業に必要な機械購入費等について、補助採択されることになったが、県管理道路の降灰除去事業は対象となっていないことから、現在、単独費により実施している。県管理道路についても、補助の対象とするように、県開発促進協議会等を通じて、国に要望している。
また、昭和59年6月2~5日において、桜島爆発による鹿児島市街地方面の豪灰があり、旧県庁の観測点では、4日間で約4,300g/㎡、そのうち6月3日は約2,200g/㎡を記録するなど、交通が麻痺状態を起こし、路面清掃車32台と散水車10台で対応したが、台数不足、道路管理者間の対応が問題となった。
これを機に、降灰時における交通の安全確保を図るため、関係機関の相互連携を密にし、道路の早期降灰除去対策を推進することを目的に、昭和59年8月1 日、桜島の降灰除去に関係する国・県・市町の道路管理者及び警察本部、軌道管理者で構成される「道路の降灰除去に関する連絡調整会議」(以下「連絡調整会議」という。)を設立しました。連絡調整会議では、次の3つの事務を行っており、毎年1回定例会を開催する外、必要に応じて開催することとしている。
①関係機関の降灰対策に関する情報を交換降灰除去対策の円滑化及び効率化を図る
②豪灰時における降灰状況及び路線別の優先順位等を総合的に判断し、関係機関相互の路面清掃車等の配置について調整し、適切な運用を図る。
③降灰対策に関する技術向上を図るための検討を行う。

(2)霧島山(新燃岳)について
新燃岳については、平成23年1月26日の爆発により、県道2路線を通行止めとし、2月1日の爆発的噴火では、県道脇に落下した噴石により県道へ倒木が発生するなどの被害が発生したことなどを受け、立ち入り禁止区域が半径4㎞以内となったことから、さらに1路線通行止めとした。立ち入り禁止区域の縮小に伴い、順次、通行止めを解除し、現在は、県道の通行止め箇所はないが、一番長い県道で約1年半も通行止めを余儀なくされた。
また、宮崎県を中心に、鹿児島県でも降灰が観測されたが、52年ぶりに爆発的噴火が観測された平成23年1月26日の2日後の28 日から降灰除去作業を実施するなど、桜島での降灰除去作業体制を活用し、速やかな作業に取りかかれ、安全な道路交通の確保に努めたところである。
さらに、関係する国・県・市町の道路管理者及び県警本部が集まり、2月8日、3月22日と2回の連絡調整会議を開催し、路面清掃車等の貸し出しの手続き等について協議した。平成23年度には、これまで桜島への対応として開催していた連絡調整会議へ、新燃岳に関連する5機関を追加する規約改正を行い、桜島、新燃岳に関する連絡調整会議を一元化した。
新燃岳の火山活動は、長期化することが予想されたため、市町が行う降灰除去作業の「活動火山対策特別措置法」による補助事業採択に向けて、降灰除去事業実施要綱に基づく、降灰量測定地点の設置を行い、国土交通大臣へ届出を行った。
①霧島市 2点
②伊佐市 1点
③湧水町 1点

4.おわりに
今後とも連絡調整会議における相互連携等が充実し、降灰除去業務が円滑に進行することにより、道路交通の安全確保が図られるよう努めたい。

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