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大牟田連続高架橋(渡河部)
5径間連続鋼・コンクリート混合箱桁橋の設計・施工

国土交通省 九州地方整備局
 福岡国道事務所 有明海沿岸道路出張所
吉 開 亮 介

1 はじめに
大牟田連続高架橋は、福岡県大牟田市と佐賀県鹿島市を結ぶ有明海沿岸道路の中で現在事業推進中の橋梁で橋長1,140m、PC連結少主桁橋と鋼・コンクリート混合箱桁橋からなる構造である。そのうち大牟田川渡河部架橋地点は海苔の生産地として有名な有明海に近く、漁船基地にもなっており、河川を航行する船舶に影響を与えないよう河川内に橋脚を設けず3径間連続鋼床版箱桁橋で計画されていた。

図-1 位置図

設計の見直し時に異種材料を組み合わせた混合橋を採用し(表1)、鋼箱桁使用区間を短縮、橋長354mの5径間連続鋼・コンクリート混合箱桁橋とすることでコスト縮減を図っている。
本報告では、5径間連続鋼・コンクリート混合箱桁橋の設計・施工事例について示す。

表-1 橋種比較表

2 鋼・コンクリート混合箱桁 橋の概要
2.1 従来橋梁での課題
従来形式の連続橋では経済性、構造性から最適支間比を狙った設計をすることとなっている。交差条件から中央径間のみに長支間が必要な場合にもバランス上必要な長さの側径間を設けることとなるため、全体の橋長が長くなり、建設コストの支配的要因となる。

2.2 鋼・コンクリート混合橋の長所
交差条件により長支間が必要となる場合でも、中央径間に軽い鋼桁、支間長を短くしたい側径間に重いコンクリート桁とした混合橋を採用することで、支間比が悪い場合でも断面力バランスの大幅な改善が可能となり、上部工のコスト縮減効果がある。本橋においては渡河部である中央径間部の鋼床版箱桁部を支間150m、PC箱桁を組み合わせた側径間側は支間約50mと抑えている。
2.3 鋼・コンクリート混合橋の概要
鋼・コンクリート混合構造形式の上部工は、1991年に供用された生口橋をはじめ、多々羅大橋や木曽川橋・揖斐川橋、新川橋など近年実績が徐々に増えてきている。本橋は、軸圧縮力が作用しない桁橋形式の混合橋であり、支間長(最大支間)が150m、河川上で張出架設を採用する、ほとんど実績のないものとなった。下記に本橋の概要を示す。
① 主桁断面形状は、箱幅4.5mの1室箱断面を採用、桁高は渡河部の航路限界、PC桁との整合、運搬および施工性を配慮し、2.8~5.5mの変断面を採用。
② PC桁は、鋼断面との整合、経済性等に考慮しPCポストテンション1室箱桁を採用。
③ 構造解析は、PC桁架設、鋼桁(TCベント架設)、鋼桁(張出し架設)の架設ステップを考慮したFEM解析を実施。

図-2 大牟田連続高架橋(渡河部)橋梁一般図

3 鋼・コンクリート接合部の設計
3.1 接合部の位置
桁橋では断面力として曲げモーメントの作用が支配的で、桁の上下で引張力と圧縮力が作用し、引張応力が作用する側はコンクリートに引張応力が作用しないようプレストレスを導入するPC鋼材が必要となる。接合部は複雑な構造となるため構造上の弱点とならないよう断面力が小さい箇所に設けることが望ましい。また、接合部を曲げモーメントの正負が交番する位置とした場合、接合部の上下にそれぞれPC鋼材が必要となるため、経済性に劣ることになる。そのため、接合部位置は曲げモーメントが小さく、正負が交番しない位置を選ぶことになる。(図3)
鋼コンクリート混合桁を選択した目的が側径間部の短縮とPC箱桁への変更によるコスト縮減にあるため、鋼箱桁部をできるだけ短縮した位置に接合部を設置することにより上部工のコスト、耐風安定性から有利な結果となる。ただし、PC箱桁部が長くなると上部工重量が大きくなることから基礎工の規模が大きくなり下部工費用増によりコストが逆転することとなる。これらの検討の結果、コストが最適となるP1-P2間、P3-P4間に接合部を設けることとした。

図-3 主桁曲げモーメント図

3.2 接合部の設計方針
接合部は、橋梁構造の弱点とならないよう十分な耐力を確保する必要があるため、作用断面力に対して鋼およびコンクリート断面が各々単独で負担できる断面とした。
本橋は桁橋形式であるため、断面力は曲げモーメントが卓越する。接合部の鋼殻セル位置は、負の曲げモーメント領域としているため、上フランジには引張り、下フランジには圧縮応力が作用する。ずれ止めと後面支圧板の荷重分担率は、同種橋梁事例および鋼殻セル部のFEM解析の結果を基に設定した。
3.3 接合部の構造
接合部は剛性の異なる鋼箱桁とPC箱桁間の応力伝達がスムーズに行える構造とする必要があるため、接合部形式には「中詰めコンクリート後面プレート方式」を採用した(図4)。この形式は鋼箱桁断面の周縁とウェブ部をマルチセル断面とし、鋼殻セル内に中詰めコンクリートを充填した後面プレート構造である。なお、本形式は混合斜張橋だけでなく、桁橋での実績もあるものである。また、中詰め部とPC桁でコンクリートが連続一体化していることにより、力の伝達性に優れ、接合面での応力集中の軽減が期待できる。
鋼殻セル内のずれ止めには、「孔明き鋼板ジベル」を採用した。従来の頭付きスタッドが鋼フランジに1個ずつ溶植する必要があるのに対して、孔明き鋼鈑ジベルは鋼板に孔を開けるだけでよく、製作・施工が容易である。また、供用荷重レベルではずれの少ない力学特性を有し、かつ疲労の影響を受けにくいため、混合桁接合部のずれ止め構造に適している。

図-4 接合部構造

3.4 接合部のFEM解析
「中詰めコンクリート後面支圧板方式」は、ずれ止めと後面支圧板によって応力伝達する構造であるが、本橋において、以下の2点が課題となった。
① 桁橋形式のため、接合部で曲げモーメントが卓越し、引張応力が発生する。
② 本橋の1室箱断面は、多室箱断面に比べ局部的な応力集中が危惧される。
接合部の応力伝達およびその近傍での鋼桁・PC桁の応力性状を把握し、設計計算の妥当性を確認するため、接合部全体をモデル化した立体FEM解析を実施した。
解析の結果、設計計算上での応力度とFEM解析での応力度は概ね一致しており、設計計算の妥当性を確認した。(図5、図6)

図-5 コンクリート部の軸方向応力度

図-6 鋼桁部の主応力度

4 施工実施状況
4.1 施工ステップ
河川内を使用できないという条件から中央径間でのベント設置なしでの架設工法が前提となった。側径間のコンクリート桁部を先行架設し、カウンターウェイトとして利用しながら中央径間を片持式張出架設工法で施工を行い、最後は、河川中央で調整ブロックによる桁閉合を行った。
4.2 接合部
接合部は鋼殻セル内に鉄筋を配置し、コンクリートを充填する構造であるため、締め固めが不可能であることから高流動コンクリートを使用した。高流動コンクリートの性能確認は流動性と骨材分離抵抗を確認するため打設前にスランプフロー試験、間隙通過性試験(写真1)を実施した。
施工に際しては、鋼殻セル内へのコンクリート到達状況を確認するために、セル天井部にセンサーを設置し充填状況の確認を行った。

写真-1 スランプフロー試験、間隙透過性試験

4.3 調整ブロック
コンクリート桁部を先行して施工することから、PC緊張後の架設期間中のクリープ変形が鋼桁の施工時の精度管理に影響を与える。
本橋梁では、あらかじめクリープ変形の発現状況を測量にて確認し、調整しろを切断後に現場へ搬入した。気温が低く、桁の伸縮が安定している早朝より調整ブロックの架設を行った。

写真-2 閉合ブロックの架設状況

5 おわりに
本橋は、桁橋形式の混合橋として実績の少ない支間長(最大支間150m)を有している。
本橋梁形式は、地形及び河川等の交差条件により支間長の大きくなる都市部や山間部、渡河部等でコスト縮減に有効なものであり、本事例が今後の更なる構造の合理化、技術確立に向けた検討の一助となれば幸いである。

図-7 完成イメージ

参考文献
1 横峰正二、貴志友基、石倉昇、崎本繁治、中山元:鋼・コンクリート混合桁形式を採用した大牟田連続高架橋(仮称)の接合構造の設計、第6回複合構造の活用に関するシンポジウム

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