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池間大橋の設計と施工
(県道池間大浦線)

沖縄県土木建築部宮古土木事務所
所長
屋比久 孟 尚

沖縄県土木建築部宮古土木事務所
主幹
屋 良 朝 廣

沖縄県土木建築部宮古土木事務所
主任技師
仲宗根 朝 雄

1 まえがき
島しょ県である我が県には40余の有人島があり,そこに住む住民は教育,文化,医療,福祉等の面で離島苦に悩んできた。池間島もその例にもれず大きなハンディキャップを背負ってきた。
池間島は那覇から330km離れた宮古島の北西1.8kmに位置する面積2.81km2,人口千人余の漁業を基とする小さな島である。島と宮古本島を結ぶ定期船は池間~平良港間をフェリー(177t)が1日1往復,池間~狩俣間を小型船(13t)が1日7往復している。
しかしながら台風時や荒天時にはたびたび欠航するため,通勤や通学,急患の輸送,あるいは生活物資の輸送が途絶えて島の住民は多大な不便と犠牲をこうむってきた。従ってこれらを解消するためにも池間大橋の実現が長年の夢であった。その夢が昭和56年度に国庫補助事業としてスタートし現実のものとなった。

2 架橋地点の地質構造
架橋地点の地質は宮古島特有の海浜砂礫層,琉球石灰岩層,島尻層群で構成されている。GL-11m~-25m以下にほぼ平坦に島尻層群が分布し,その上に琉球石灰岩層が7m~14mの厚さで覆っている。琉球石灰岩層の上には2m~12mの厚さで海浜砂礫層が広く分布している。

3 下部工の設計と施工
3.1 設計条件
道路規格  第3種4級,設計速度50km/h
計画交通量 1,000台/日以上
橋  格  二等橋(T-20,L-14)
橋  長  1,425m   幅員 7.75m
構造形式  標準部 PC4~5径間連続箱桁橋(プレキャストブロック片持梁工法)
      航路部 PC3径間連続箱桁橋(現場打片持梁工法)
基礎形式  A1 A2橋台,P1~P24橋脚(P3,P5橋脚除く) 先掘鋼管杭基礎
      P3,P5橋脚  直接基礎
橋梁の基礎形式としては一般に直接基礎,杭基礎,鋼管ウェル基礎,PCウェル基礎,ケーソン基礎の5形式が考えられる。これらの形式のうちから最適な基礎形式を選定するには土質状況,荷重,構造物の特性および工期等に問題がなく,かつ工費面でも有利なものを選定すべきである。
架橋地点の土質状況は,前述の図ー2からもわかるように琉球石灰岩が広く分布しており,標準貫入試験の結果からみてもN値のバラツキが著しい。また,N値のバラツキは垂直方向にも水平方向にも不連続で複雑な状況を呈しているのが本架橋地点の特徴である。従って基礎形式の選定にあたっては,この琉球石灰岩の特徴を十分考慮に入れた設計が必要となってくる。

3.2 標準部における基礎形式の検討
前述の基礎形式のうち,PCウェル基礎と鋼管杭基礎を開口部橋梁にて試験的に施工した。PCウェル沈設工法は水上施工時でも締切り,築島を必要とせずまた,基礎と躯体が一体となる構造のため,施工が容易であると考え施工してみた。しかしながら当現場の特徴である琉球石灰岩が硬軟入り混じった岩質であるため,センタービットからの回転力が遊星ビットにうまく伝わらず,比較的大きな振動が生じた。従って遊星ビットの回転力を強制回転に変えたが所定の沈設速度が得られなかった。従って工期および工費の面で当工法は不適当であると判断した。
鋼管杭工法については従来から広く採用されている工法であり,構造特性も比較的明確であり施工が簡単で施工実績も多く,工費も比較的安価である。このことから当工法が適切であると判断し選定した。ただし当架橋地点の地質状況が複雑でありまた,N値50となる層もあることから直接打ち込むことは不可能と判断し,ここではオーガーにてプレボーリングを行ない支持層である島尻層へ2D(ここでは2m)打ち込む先掘鋼管杭基礎工法を採用した。
ただし,P3,P5橋脚については施工前のボーリング調査の結果から比較的浅い位置にバラツキの少ない安定した琉球石灰岩の層がみられたことからP3およびP5橋脚については直接基礎を採用することにした。ただ,前述のとおり琉球石灰岩は鉛直方向にも水平方向にも不連続であるため,実施にあたっては追加ボーリングや平板載荷試験等で支持力を確認しながら施工することにした。

3.3 航路部における基礎形式の検討
航路部においてはケーソン基礎(ニューマチックケーソン)を検討したが,当地点の土質が多孔質の琉球石灰岩であるため空気圧の調整および効果に不安がありまた,経済性からみても多少割高になるため不適当と判断した。従って航路部についても標準部と同様,先掘鋼管杭基礎工法を採用した。
3.4 下部工の施工(鋼管杭基礎)
下部工の施工順序は以下のとおりである。

池間大橋は将来の社会情勢の変化による二次改築の可能性も少なくまた,1,425mの長大橋という特性からしても橋の寿命を可能な限り延ばした方が得策と考え,鋼管杭を腐食代のみで対応せず電気防食によっても保護することにした。

3.5 下部工の施工(直接基礎)
前述のとおり施工前のボーリング調査によるとP3橋脚およびP5橋脚においては比較的浅い位置にバラツキの少ないN値の大きな琉球石灰岩層がみられたことから直接基礎に踏みきったが,ここではP3橋脚について述べることにする。
施工前のボーリング調査結果は図ー5のとおりであり,追加ボーリングの調査結果は図ー6のとおりである。2点のボーリング結果からも明らかのように当初想定していたよりバラツキが大きいのでさらにボーリングを追加して合計9点のボーリングデータより検討を加えた。直接基礎の支持地盤は礫層の場合,道路橋示方書に基づいてN値≧30とし,許容支持力を30t/m2としていることからN値<30の礫層について地盤改良を実施することにした。地盤改良を必要とする範囲は平面的には広い範囲にまたがっているが鉛直方向には2m程度となっている。

地盤改良の方法としては,改良範囲が比較的浅い位置にあることから良質土による置換を考えたのであるが琉球石灰岩の性質上硬軟入り混じっているため,N値30の地盤を破壊する恐れがある。従って置換工法は不適当と判断し,JSG工法を採用することにした。
当現場においては地盤改良予定箇所を1.5mピッチで29箇所実施した。このようにして地盤改良した箇所はボーリングをして,標準貫入試験によりN値が設計値を満足していることを確認したあと躯体を構築していった。

4 上部工の設計と施工
4.1 上部工の設計
上部工の形式は架設条件および支間長により選定されるが,本橋梁は海上橋でありまた,海面より比較的低い位置に架設されることを考慮してコンクリート構造を中心に考え,表ー2のような2形式について比較検討した。
その結果,以下の理由によりプレキャストブロックカンチレバー工法が採用された。
a.下部工の施工中に桁製作ができまた,架設サイクルも短いため,急速架設が可能である。
b.製作と架設が分離されているため,集中的な施工管理が可能で省力化がはかれる。
c.架設の数力月前に桁は製作されているため初期のクリープ,乾燥収縮は終了しており,架設後の長期変形が少ない。
d.桁の製作はヤードで行なわれるため,塩害対策上有利である。

4.2 桁の分割および打継目
ブロックの分割は運搬,架設時のガーダー効率を考慮し,最大重量を45tとし,図ー7のようにブロックの長さは1.35m,2.0m,2.5mとした。
打継目はエポキシ樹脂系の接着材を塗布し,ブロック相互を引き寄せ鋼棒にて引き寄せ,圧着する。また,接合を正確に行なうために上下床版にはガイドキー,ウェブにはせん断キーを設けた。

4.3 ゴム沓による反力分散
本橋梁は連続桁構造であるため,常時および地震時の水平反力を各橋脚への反力分散を図り,可動側の橋脚と固定側の橋脚の寸法が大きく異なるという多経間連続桁特有の問題を解決するよう配慮した。
反力分散構造は上部構造と各橋脚との結合を半固定とすることにより,地震時の上部工の水平力をゴム沓のせん断力として各橋脚に伝達させる。また,常時のクリープ,乾燥収縮及び温度変化による水平力をゴム沓のせん断変形で吸収し,下部構造へ伝わる水平力を減少させている。このように各橋脚の水平力はゴム沓の大きさを変化させることにより,下部構造への作用水平力を任意に調整している。また,橋軸直角方向については一般連続桁と同様であり,本橋梁では移動制限装置によって分担している。
4.4 塩害対策
本橋梁は沖縄県内の海上橋梁であるため「道路橋の塩害対策指針(案),同解説」で定める対策区分(エ)に該当し,最も厳しい環境下での塩害対策が要求された。従って以下のことに留意して設計した。
a.主桁構造 — コンクリート橋の塩害による損傷は,一般に床版橋や箱桁橋に比べT桁橋やI桁橋に多く発生している。従って本橋梁ではスパン長および架設方法にも適合し,かつ塩害対策上有利な箱桁形式を採用した。
b.鉄筋のかぶり — 直接外気にふれる主桁表面については最小かぶり7cmを確保した。
c.橋面防水工 — 本橋梁は海面からのクリアランスが低いため,荒天時には橋面に波しぶきがかかる可能性が大きいので床版上面に防水工を施すことにした。
d.塗装鉄筋 — 長期間にわたり露出しておく鉄筋については塗装鉄筋を使用することにした。

5 上部工の施工
5.1 ブロック製作ヤード
ブロック製作ヤードは宮古本島側の農地を一時転用して使用した。ヤード内のブロック製作のための設備の配置は図ー8のとおりである。

5.2 ブロック架設方法
架設方法は以下のとおりである。(図ー9)
a.橋脚上に仮設桟橋を利用して柱頭部を施工し,製作ヤードにて作られたブロックをトレーラーによってエレクションガーダーの付近まで運搬する。
b.ブロックをエレクションガーダー上の自走式門型クレーンにて吊り上げ,所定の設置箇所まで移動する。
c.方向および高さを調整する基準ブロックをセットして場所打部のコンクリートを打設する。
d.標準ブロックを片持ち架設により左右交互に引き寄せ,定着する。
e.一径間分の架設が終了したらエレクションガーダーを次の径間に移動し,同様の作業を繰り返し行なう。

5.3 逆張出し部の施工
逆張出し部の施工は,前記のブロック架設要領と同様であるが,その時の負の曲げモーメントに対応するために一時的にアウトケーブルにて仮連結し,連続構造にしておき両側に張出し架設を行ない中央閉合後,仮連結部を開放する。

6 あとがき
池間大橋は沖縄県の大型プロジェクトとして平成3年度完成を目標に工事が進められている。現在宮古本島からの上部工工事と池間島側からの下部工工事が順調に進んでおり,今後とも安全管理工程管理に一層の努力を払いながら工事を完成させたいと考えている。

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