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江津斉藤橋におけるPCウェルの施工について

(前)国土交通省 九州地方整備局
 熊本河川国道事務所 工務第三課
国土交通省 九州地方整備局
 道路部 交通対策課
藤 田  武

1 はじめに
江津斉藤橋は,国道57号熊本東バイパス6車線化整備の一環として,水と緑の都熊本を代表する江津湖を跨ぎ,既設橋に隣接する新設橋を整備するものである。当バイパスは,自動車交通の増加やバイパスが位置する熊本市北東部地区への市街化の拡大により,慢性的な交通渋滞が発生している。この対策として新南部交差点から近見交差点までの9.7km区間について,平成14年度より2車線増加させた6車線化事業を進めている。現在整備区間9.7kmのうち7.7kmを完了し,残る2.0km区間も平成17年度中の供用を目標に事業の進捗を図っている。

2 江津斉藤橋の概要
江津斉藤橋区間の6車線化は,既設橋梁に隣接した3車線の独立した橋梁である。橋種スパン割の選定においては,経済性・構造性・施工性・維持管理及び景観環境を総合的に勘案して,既設橋梁と同じタイプの鋼3径間連続非合成箱桁橋L=128m(径間割:37.5m+37.6m+51.9m)としている。
なお基礎工形式は,地質調査により,地表面下35.0m~40.0m以深に分布する安山岩を支持層とする基礎杭とし,支持層付近の地下水が被圧し,また地下水流速3.0m/sec以上が確認されており,工期・施工性・経済比較を行いPCウェル杭基礎を選定し施工した。

3 工事概要
工事名:熊本57号江津斉藤橋下部工工事
工 期:H16.4.20~H17.3.28
【工事量】
(A1橋台)PCウェルΦ2.5m×L=29.5m 2基
(P1橋脚)PCウェルΦ3.5m×L=33.0m 2基
(P2橋脚)PCウェルΦ3.0m×L=30.0m 2基
A1橋台躯体 コンクリートV=202m3
P1橋脚躯体 コンクリートV=243m3
P2橋脚躯体 コンクリートV=318m3
仮設工1式
なおA2橋台は,暫定施工時に施工済みである。

4 地質状況
今回の施工箇所の地質状況は,埋土層及び沖積層,洪積層が厚く分布し,N値 ≦30を示す。その下位に分布する砥川溶岩は本地域の基礎岩をなす鉱石安山岩で,N値≧50を示し,安定した地盤(支持層)である。
自然水位は標高3.7m前後にあり,ほぼ水平に分布し,渡河する江津湖の河川水位より高い位置に認められる。砥川溶岩は極めて多孔質な溶岩であるが被圧帯水層でもある。

5 PCウェル工法概要
本工法は,工場製作した円筒形のRCロットを施工地点でポストテンション方式でプレストレスを導入し一体化した内部をハンマグラブ等の掘削機により掘削し,H形鋼等を反力として所定の深度まで圧入沈設する工法である。
本工事では,RC構造として設計するPRC構造を採用した。PRC構造は,施工時に必要な緊張応力(0.5N/mm2程度)を数本のPC鋼材によって導入しながら沈設し,沈設完了後,高強度モルタルの充填および軸方向鉄筋(高強度鉄筋)の一括挿入により一体化を行うものである。

6 PCウェル杭における掘削工法
① 拡縮自在掘削工法の採用
P1,P2の掘削は杭径が各々3.5m,3.0mであったため,経済的に優れた硬質地盤の掘削時のみ全回転オールケーシングの先端に拡縮自在掘削機を用いた工法とした。
拡縮自在掘削工法は,ハンマグラブバケット掘削では施工不可能な硬質地盤に対し,PCウェル下端に配置した拡縮自在な硬質地盤掘削機により掘削した土砂をケーシング内部に取り込み,ハンマグラブで揚土するシステムである。

② 低排土先行掘削工法の採用
A1橋台は,杭径が2.5mと小径であるため拡縮自在掘削機がなく,各種工法を検討した結果,中堀圧入方式に先立ち,全回転オールケーシング(2.0m)の先端に2.5mの低排土先行掘削機を装備した先行掘削工法とした。
この工法は,ケーシング部分のみを排土し,その外側は削孔・攪拌のみであるため,従来工法に比べ排土量=砂置き換え量が少なく経済的で環境への負荷を低減できた。

7 施工状況
(5に示したフローに基づき施工写真を示す)

8 特徴及び活用効果
PCウェル工法は,工場製作のプレキャスト製品であるため,寸法・強度などの出来形,品質が信頼できる。また反力装置による圧入沈設であるため,適用地盤の範囲が広く,正確な施工精度と工程管理ができた。圧入沈下方式併用の掘削であるため,周辺地盤の沈下等の影響が少なく,狭い施工空間に適用でき,低振動・低騒音の施工となり,周辺環境,住居地域への配慮が可能であった。なお今回の施工箇所は,地下水の湧水量が多い地域であり,地下水(飲料用井戸)への影響も懸念されたが,中堀り圧入方式のため,地下水への影響も皆無であった。

9 おわりに
昭和57年度に竣工した既設橋梁の杭基礎もPCウェル工法であったが,施工時には岩盤部の施工は水中発破などで沈降させる方法しかなく,安全性・施工性・環境確保などに苦労があったと聞いている。
近年は各方面に新技術が開発され,PCウェル工法においても運搬上の規制により,従来は杭径4.0m迄であったが小判型の採用により長辺方向径を5~6mにしたものや円形を2つのブロックに分割し現場で組み立てて杭径が5.0mを超すものも施工されており,今後の活用がより一層期待出来ると思われる。

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