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気球空撮による災害現場の監視について

建設省 九州地方建設局
 河川部 電気通信調整官
三 浦 隆 樹

1 はじめに
本システムは,気球に搭載したカメラによる空撮画像をリアルタイムに収集するものである。
従来,空撮は,ヘリコプターを利用しているが,ヘリは視界の制約を受け,目的を達成できない恐れや,長時間の空撮に不適といった短所を有するため,ヘリの補填を目的に開発したものである。

2 システム構成
(1)気球本体
気球の形状は風の影響が少ない飛行船型(係留式),使用ガスは不燃性,無毒のヘリウムである。
ガスは1日経つと約1m3抜けるが,補充により長期間の浮揚が可能である。
気球に搭載する機材(カメラ,伝送機器,電源など)の重星が10kgを超えると,気球の容積は30m3以上が要求され,浮揚作業には電動機が必要となる。設計では機材総重最15kg,容積35m3であったが,軽量化を極力図り,表ー1に示すように,総重量を約10kg,気球容積を30m3とし,人力のみで作業可能とした。
 ■寸法(H,W):3m×6.5m
 ■滞留条件 最大風速:10m/s以下,高度:150m以下

(2)情報収集装置
高精度,高解像度カメラによる画像は,光ファイバで地上に伝送し,モニタに表示。カメラ操作は,光ファイバを用い,モニタを見ながら行う。
 ■カメラ仕様 形  式:雲台一体ドーム型
        レンズ :48mm(12倍),ズーム8倍
        回転範囲:水平360度,垂直90度

3 特 徴
(長所)
a 長期間の連続監視が可能。
b 視界不良,降雨,降雪時でも使用可能。
c 組立,設置,カメラ操作が,2時間程度の説明でマスターできる。
d 費用が安い。
(短所)
a 最大風速10m/s以上では浮揚できない。
b 150m以上の浮揚はできない(航空法)
c 係留方式のため,広域観測ができない。

4 土砂崩壊災害現場における実運用結果
(1)現地の状況

(2)運用結果
① 現地着後,空撮できるまでの所要時間は約45分(組立:15分,ガス充填:15分,浮揚100m:15分)であった。
② 最大風速10m/sの強風でも,風向が一定であれば浮揚できるが,風が旋回している場合は,風速5m/s程度でも気球が旋回し,浮揚は無理で,風がおさまるまで,待機した。
③ 衛星小型画像伝送装置(ku-sat)と接続し,本局,事務所でも鮮明な映像を画面表示,更に,本局から電話による操作指示に対し,カメラアングルやズームは即時に作動した。
④ 急斜面で危険な頂上付近における伸縮センサの設置場所の選定に,空撮画像が活用された。

5 利用分野
① 災害初動時の被災情報収集
② 災害復旧作業時の二次災害防止のための支援
③ 急傾斜地崩壊危険個所の事前点検調査
④ 無人化施工における遠隔操縦のための支援
⑤ 地質,水質,海岸,植生,交通量などの調査

6 さいごに
気球は,限定された範囲の定点観測システムであるが,視界不良時や長時間の観測が可能という特徴を有する他,機動性,安全性,およびコスト面でも優れている。
この結果,即時に広範囲のエリアを観測できるへリとの併用で,一層,的確な映像収集が可能となった。

(参考)現地作業

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