一般社団法人

九州地方計画協会

  • 文字サイズ
  • 背景色

一般社団法人

九州地方計画協会

  •                                        
横断歩道橋 維持管理マニュアル(案)の作成について
白川富治

キーワード:横断歩道橋、維持管理、マニュアル

1.はじめに

高度経済成長以降、横断歩道橋は交通事故の削減に向け大量に建設(図-1)されてきましたが、経年劣化等による損傷が顕著になってきています。

この老朽化してきた横断歩道橋に対して、道路管理者は既設構造物の状況を判断し、適切に補修などの対応を図る必要がありますが、各管理者の管理区間毎に独自に対応していること、また、状況を確認する方法や確認結果から補修への対応方法等をとりまとめたものがないことから、現場から損傷箇所に対する補修方法などの事例集作成の要望があがっています。
このような現場からの要望に応えるため、九州技術事務所は、『技術研究開発業務』※1を担当しており、今回の要望についての取組の一環として『横断歩道橋 維持管理マニュアル(案)』を作成したので以下に紹介します。

  1. ※1良質な社会資本整備構築に向け、優れた技術を持続的、発展的に創出していくために、建設に関わる技術的諸問題の解決、建設現場の円滑かつ効率的な推進のため行う業務
2.横断歩道橋 維持管理マニュアル(案)の概要と位置づけ

横断歩道橋 維持管理マニュアル(案)は、横断歩道橋を管理するための損傷確認方法や対応区分判定等の維持管理手法をとりまとめた『横断歩道橋 巡回点検マニュアル(案)』、補修・新規設計に対する留意点や補修工法選定の目安、また、補修事例をとりまとめた『横断歩道橋 補修マニュアル(案)』で構成しています。マニュアル(案)の全体構成を図-2、両マニュアルの関連を図-3に示します。

本マニュアル(案)は、道路及び道路構造物全般の維持管理等に対するマニュアルである「道路巡回マニュアル(平成8年3月)」のうち、横断歩道橋に関する内容を補完する位置づけで作成したものであり、現地での巡回時等での実橋確認(以下「横断歩道橋巡回点検」という。)から確認後の対応までを取りまとめた資料です。

3.横断歩道橋 巡回点検マニュアル(案)
3.1 横断歩道橋巡回点検の項目と手順
横断歩道橋 巡回点検マニュアル(案)は、横断歩道橋の維持管理における手法を明確にするとともに、既設構造物の状況の判断における個人差を解消し、損傷劣化の早期発見・早期対応が可能
となるよう、横断歩道橋の各部材での損傷に対する着目ポイントや巡回点検チェックシート(案)を用いた現地での確認方法及び確認後の維持管理手法をとりまとめたもので、以下に巡回点検の項目及び本マニュアル(案)を活用した巡回点検作業フローをそれぞれ表-1、図-4に示します。

3.2 横断歩道橋 巡回点検マニュアル(案)の構成と使用方法
横断歩道橋巡回点検の事前準備から情報共有に至る各段階と本マニュアル(案)の項目の関連を図-5に示し、以降に内容を紹介します。

3.2.1 横断歩道橋の構成と部位・部材名
横断歩道橋巡回点検を行う事前準備として点検する部位、部材を区分し、理解し易いように図、写真を活用して説明を行っている項目であり、図-6に記載例を示します。

3.2.2 横断歩道橋の損傷事例
横断歩道橋の損傷事例の項目は、現地での巡回点検時に確認を行う各部位の損傷について、各部材毎に損傷概要、損傷要因、想定される被害を系列立ててとりまとめ、理解し易いように損傷事例を図、写真を活用して作成したものであり、図-7に記載例を示します。また、各損傷に対する補修必要性の判断が可能となるように参考資料として補修実施の目安も作成しています。

3.2.3 着目ポイントの整理
現地での巡回点検時に確認を行う損傷の見落としを防止、巡回点検を短時間に完了させることを目的に、各部位毎に点検時の着目するポイントの説明資料を理解し易いように図、写真を活用して説明を行っている項目であり、図-8に記載例を示します。

3.2.4 横断歩道橋巡回チェックシート
これまでに紹介した確認資料を基に、横断歩道橋の状況を把握した内容を維持管理に活用するために、横断歩道橋巡回点検チェックシートを作成しました。チェックシートは、白図に損傷箇所・内容を記載することを主としたもので、特に、主要な部材・第3者被害をもたらす部材の損傷については、損傷の程度を記載できる様式とし、また、記載した損傷への対応結果の記入欄を設け、維持管理に活用できるものとしています。なお、現場での確認の際に使用するマニュアルの内容を携帯用にとりまとめたポケットブックを作成し、マニュアルの使用性の向上を図っています。

4.横断歩道橋 補修マニュアル(案)
横断歩道橋 補修マニュアル(案)は、補修・新規設計における留意点や損傷に対する補修工法選定の目安、及び補修工法事例集を作成し、維持管理対応区分判定時の参考資料として取りまとめたものであり、内容を以下に紹介します。

4.1 損傷に対する補修工法の選定
横断歩道橋主要部材の“損傷程度”や“損傷要因”を踏まえた補修工法選定の目安として、選定フローを作成し内容を整理。フロー例(抜粋)を図-10に示します。

4.2 補修工法・材料の事例
補修工法・材料の事例は、九州地方整備局管内で管理する横断歩道橋で施工した事例を収集し、工法概要、施工性、適応性及び留意事項をとりまとめた事例集、また、NETISにおける新技術・新工法の紹介や補修設計に対し参考となる事例(排水など防食に考慮した構造事例)及びライフサイクルコスト縮減を目指した防食構造の提案事例を紹介している項目であり、図-11~13に事例を示します。

5.おわりに
本マニュアル(案)は、様々な立場からの意見を伺い、よりよい成果を得るために企画部施工企画課、道路部道路管理課、道路部交通対策課、福岡国道事務所、長崎河川国道事務所の協力をいただきプロジェクトチームで検討を行い、また、各事務所の方々には現場の状況や作成したマニュアルに対する意見照会にご協力をいただき内容を精査することによって作成することができました。
ご協力をいただきました皆様に対しまして、この場をお借りして御礼申し上げます。

上の記事には似た記事があります

すべて表示

カテゴリ一覧