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東九州道(北浦IC ~須美江IC 間)の開通に伴う広報について
渡邉賢一

キーワード:東九州自動車道、開通、戦略的広報

1.はじめに
宮崎県北地域は、南北の幹線道路として、福岡県北九州市と鹿児島市を結ぶ国道10 号と東九州自動車道があり、東西の幹線道路としては熊本方面を結ぶ国道218 号と九州横断自動車道延岡線があり、それらが延岡市で結節しています。日向市には、海上交易拠点として重要な役割を担う細島港があり、交通の要衝としての地理的特性を有しています。
また、沿岸部では旭化成を中心とした工業や水産業が発達しており、内陸部の高千穂周辺では高千穂峡、夜神楽などの観光資源を活かした産業が盛んな場所でもあります。
そのような中、高規格幹線道路網の整備が他地域より遅れており、地域にとって高速道路の整備
が悲願と言われ続けていました。
本稿では、図-1に示すように、平成26 年3月8日に開通しました東九州自動車道北浦IC ~須美江IC 間について、高速道路が開通する意義とその効果を地域の皆さまへ発信するために行った、延岡河川国道事務所での広報活動とその工夫について報告します。

2.土木広報アクションプラン
土木学会では、社会コミュニケーション委員会土木広報アクションプラン小委員会を設立し、平成25 年7月31 日に「土木広報アクションプラン~「伝える」から「伝わる」へ~」を発表しています。
こちらで取り上げられている課題認識として、「これまで土木の分野が日本の発展に果たしてきた役割、これから果たすべき役割が社会に十分理解されていないことを土木界は感じてきた。国民への土木の重要性の周知が不十分な結果、社会資本整備に必要な予算が削減され、土木界に人材が集まらなくなり、モチベーションが低下していることは否めない。」とあります。
土木業界全体として、日本の発展に果たす役割を社会にご理解いただくために戦略的な広報活動が求められています。

3.延岡河川国道事務所の工夫
(1)プロジェクトチーム制の導入
宮崎県北地域にとって、高速道路が開通することはどんな意味を持つのか、地域の特性と土木広報の必要性を踏まえつつ、延岡河川国道事務所(以下、「当所」という。)では、開通に向けて所内でプロジェクトチーム(以下、「PT」という。)を設置し、広報計画を立案するとともに、職員各位の役割を明確にし、実行していきました。
PTを活用して広報計画を立案する際に工夫した点は、所内の個々人の目的意識を『地域の皆さまに高速道路開通の意義、効果が「伝わる」ようにすること』として摺り合わせたことにあります。その上で、開通前までのイベント等を網羅すること、それまでにどのような広報活動ができるか、PTメンバー全員で検討し、行動に移していきました。広報は担当者一人で行うものではなく、所内全員で一致団結して行うものであるという考えが徹底できていたと考えます。
特に、PTにより事務所幹部との意識統一、意志決定・判断がスムーズに行われたことが重要であり、実務担当者の速やかな広報活動につながったものと考えています。

(2)マスコミ関係者との連携
宮崎県北地域は、高速道路が地域にとっての悲願と言われているように、地域の皆さまの期待が非常に高い地域であり、マスコミ関係者も道路事業の進捗状況と高速道路開通後の町の変化に大変興味を持たれています。
そして、延岡河川国道事務所では日頃よりマスコミ関係者と良好なコミュニケーションを図っています。このため、地域のコミュニティFMやケーブルテレビ(FMのべおか、FMひゅうが、ケーブルメディアワイワイ)の番組へ出演依頼があり、地域の皆さまへ開通前までのイベントについてお知らせできました(写真-1)。

次ぎに、開通前の高速道路本線を利用した津波防災訓練やトンネル防災訓練などのイベント本番についても、積極的にマスコミ関係者に来てもらえるよう広報を実施しました(写真-2,3)。

さらには、マスコミ関係者向けの現場見学会を開通前に企画し、開通日当日の撮影ポイントをお知らせするとともに、そこからどのような絵が取れるかを事前にお知らせしました(写真ー4)。

最後に、開通式典会場においては、普段より情報交換など密なコミュニケーションを図っている道の駅北川はゆまの支配人を通じて、宮崎県及び大分県のラジオ局(MRT、OBS)をお迎えし、ラジオの生中継で、開通式典会場の熱気、地域の喜びの声を伝えて頂きました(写真-5)。

(3)地域の皆さまとの連携
次ぎに、今回開通する区間の地元企業、沿線にお住まい方々といった地域の皆さまと連携した広報について紹介します。
高速道路開通の意義、効果が「伝わる」ようにすることを開通式典および広報の目的とした際に、高速道路の開通により恩恵を受ける地元産業、地域の皆さまに展示ブース等でアピールしていただくことを企画しました。
高速道路を使った地域活性化のメニューを、大きく分けて①豊かな生活(工業、農業、林業、漁業、観光、物流)②安心なくらし(医療、消防、防災)と分類し、それぞれ恩恵を受ける企業・団体等に参加頂きました(写真-6,7)。
着眼点は、延岡市の代表的な企業である旭化成が注力されている先端医療機器の製造等に携わる関連企業様に参加頂きました。また、「ひむか本サバ」や「北浦灘アジ」といったブランド品水産物が有名であり、北浦漁業組合様により、展示ブースに加え、会場内一面に大漁旗が飾られました。
さらに、開通パレード時には安全に配慮しつつも、沿道から地域の皆さまが見学し、「おもてなし」の心と開通の喜びを表現できるよう、パレードの車列と反対の車線を開放しました。道づくりを考える女性の会、延岡青年会議所、神話トライネットなどの道づくりを応援する皆さまも参加され、沿道より目一杯手を振る姿は、テレビニュースや新聞等でも取り上げられました(写真ー8)。

4.開通直後の整備効果
開通直後の交通量については、高速道路を使って多くの皆さまに宮崎県北に来て頂いたことが分かりました。
東九州道北浦IC ~須美江IC 間の交通量は、北浦IC ~須美江IC 約3,000 台/日、また、東九州道日向IC ~都農IC 間の交通量は約8,000 台/日でした(図-2)。
開通による変化としましては、宮崎県内の東九州道各インター間の交通量が約1.4 倍増加したこと、並行する国道10 号の交通量が減少したこと、東九州道に交通が転換し、並行する道路の交通量が減少したことなどが上げられます。

5.おわりに
本稿では、延岡河川国道事務所における高速道路の開通に合わせた広報の取り組みと工夫についてご紹介しましたが、これらは延岡河川国道事務所だけでなく、宮崎県、延岡市、地元企業、女性の会、青年会議所神話トライネットなどの地域の皆さまとともにマスコミ関係者が一体となって取り組んだ成果であると考えています。なお、今後も継続的に開通後の交通量などについて、整備効果の調査・分析を行い、広報する予定です。
さて、今後も土木広報の必要性が高まってくると考えますが、土木広報の大きな視点での目的は、行政側と地域の皆さま、特にマスコミ関係者との双方向の円滑なコミュニケーションを図ることで、相互理解を深め、事業等の必要性、効果が適切に伝わることだと考えます。
一方で、個人としては、広報活動に参加することにより、地域の皆さまへ貢献できていることを改めて感じられる良い機会となり、自身の仕事の意義、目的を再認識することができます。これにより、仕事に対して自信と誇りを養うことになるものと考えます。
広報は、決して「ついで」の仕事ではなく、一人一人が広報マンであるという意識を持って、今後も積極的な土木広報活動に取り組むことが重要であると考えます。全国各地でも同じ志を持つ方々によって今後も継続的な土木広報が実施されることを期待します。
最後に、本稿を執筆するに当たり、ご協力頂いた地域の皆さま、マスコミ関係者、宮崎県、延岡市他関係者の皆さまへ感謝の意を表します。

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