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東九州自動車道(延岡地区)における
LEDトンネル照明設備の設置について
米倉賢一郎

キーワード:LED、トンネル照明、東九州自動車道

1.はじめに

東九州自動車道は、北は福岡県の北九州市からはじまり、大分県、宮崎県を経て、南は鹿児島市までつながる、延長約436㎞の高速自動車国道である(図ー1)。
そのうち、延岡河川国道事務所では、大分県と宮崎県の県境から、延岡南IC までの整備を行っており(図ー2)、平成17 年4 月には、延岡JCT .延岡南IC 間が開通し、平成24 年12 月には、須美江IC .延岡JCT 間、平成25 年2 月には、蒲江IC(大分県).北浦IC(宮崎県)が開通した。
現在は、平成26 年度中の供用開始を目標として、北浦IC .須美江IC 間の整備を行っているところである。

2.トンネル照明設備

昨年の平成24 年12 月に供用開始した東九州自動車道の須美江IC .延岡JCT 間には11 のトンネルがあり、すべてのトンネルには照明設備が整備されている。
トンネル照明は、主に昼間、車が屋外からトンネルに入った際に、トンネル内が一時的に見えにくくなってしまう現象をやわらげるための入口部照明と、トンネル内を運転するドライバーが前方の車両や落下物を視認できる明るさを確保するための基本部照明から構成されている(図ー3)。

このトンネル照明は適当に設置されているわけではなく、
1)車を運転するドライバーが、屋外からトンネル内に入った際、トンネル内が見えにくくなることはないか?
2)ドライバーがトンネル内において、前方の車両や落下物が見えにくいことはないか?
3)車がトンネル内を走行する際、照明灯付近は明るく、照明灯から離れると暗くなる現象を繰り返すことにより、ちらつきを感じてドライバーに不快さを与えることがないか?
4)ドライバーが照明のまぶしさを感じることはないか?
5)ドライバーがトンネル内を走りやすいように誘導性が得られているか?

これらを考慮しながら、トンネル照明の明るさ(図ー4.1、表ー1)や、器具の設置間隔(図ー4.2)、及び器具の取付角度(図ー4.3)を決定している。

3.LED の発光原理

須美江IC .延岡JCT 間のトンネル照明設備には九州地方整備局初のLED を使用している(入口部照明除く)。
LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)の発光原理については、図ー5に示すように、LED は、P 型半導体とN 型半導体から構成され、P 型半導体に+(プラス)の電圧を、N 型半導体に.(マイナス)の電圧をかけると、正孔(イメージしやすいように、「+」の電子と考えて下さい。)と「.」の電子が半導体内でぶつかり合い、その際に光を放出するものである。

4.LED 照明のメリット・デメリット

最近LED 照明が主流になりつつあるが、LED照明は、これまで多くの場所で使用されている高圧ナトリウム照明と比較しメリット、デメリットがある。
・メリット:

1)使用電力が少ないため、CO2 の削減につながり電気代も安くなる。また、照明に流れる電流も少なくて済むので、電源ケーブルをこれまでよりも細くできるため、コスト縮減を図れる。
2)寿命が長いため、照明灯の交換回数が少なくて済み、維持費の低減を図れる。また、それに伴い交通規制回数も減らせる。
3)照明が突然消えるのではなく、少しずつ暗くなっていくため、事前に交換することが可能である。
・デメリット:

1)これまでのランプと比較すると価格が若干高い。
2)光の指向性が強く、明暗の差が大きい。等がある。
そのため、メリット、デメリットを総合的に判断し、従来からある高圧ナトリムランプ等を使用するのか?それとも、LED を使用するのか?を決める必要がある(写真ー1)。

5.LCC(ライフサイクルコスト)を用いた検討

トンネル照明にLED を採用するかどうかについては、「LED 道路・トンネル照明導入ガイドライン(案) 平成23 年9 月」(以下、「LED ガイドライン」と言う。)に基づく照明であることを前提として、それぞれのランプのLCC(ライフサイクルコスト)を算出し決定した。
ここで言うLCC とは、照明設備にかかる費用を15 年スパンで算出するものである。
具体的には、表ー2を用いて、比較検討を行い、その結果、総合してコストが安いLED 照明を採用することとした。

6.LED トンネル照明

当時、LED を使用したトンネル照明は九州地方整備局管内で初めてということもあり、特記仕様書、及び、「LED ガイドライン」に記載されている仕様を満たしているかどうかのチェックにかなりの時間を要した。
明るさのチェックは当然ながら、他にも、LEDの寿命に関して「LED ガイドライン」に基づく試験がなされているか、電圧がかかった際に漏電しないか、温度の緩急による衝撃に耐えられるか、LED がノイズを発生し他の設備に影響を与えないか等の多岐にわたるチェックを行った(表ー3)。
さらには、トンネル内の線形がそれぞれで異なることや、照明器具メーカーにより、最も効率的にトンネル内を照らす照明器具の取付角度が異なることから、現場において設計通りの取付角度になっているか、また、設置間隔に間違いはないかについて確認を行った。

7.まとめ

トンネル内に設置されたLED 照明の光は昼間の自然光に近いため、既に供用している東九州自動車道の須美江IC .延岡JCT 間を実際に走行すると、高圧ナトリウムランプで整備されたトンネル(写真ー2)よりも、トンネル内を見やすく感じて頂けると思う(写真ー3,写真ー4)。
LED 照明の設置にあたっては、仕様決定から実際の施工に至るまでに多くの苦労があったが、道路利用者の方が、これまで以上にトンネル内を走りやすくなったと感じて頂ければ、大変嬉しく思うところである。
また、今回はトンネル照明における基本部照明のLED 化だったが、今後は、入口部照明のLED化についても十分検討を行いながら整備を進めていきたい。
最後に、LED トンネル照明の設計及び施工にあたり、ご指導並びにご協力頂いた関係者の皆様に御礼申し上げます。

【参考文献】
1)道路照明施設設置基準・同解説((社)日本道路協会平成19 年10 月)

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