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床上浸水被害の解消をめざして
一新技術を取り入れた古川排水機場の紹介一

国土交通省 九州地方整備局
 延岡河川国道事務所 工務第1課
 機械係長
阿久根 祐 之

1 はじめに
五ヶ瀬川5k200左岸付近に位置する松山・古川地区は近年,台風等に伴う出水により内水被害が頻発している地区であり,平成9年には台風19号による内水被害により87戸もの床上浸水が発生し,甚大な被害をもたらした。
これらの内水被害の軽減を図るために,床上浸水対策特別緊急事業の一環として古川排水機場が計画され,平成17年3月に竣工に至った。本機場はさまざまな新技術を採用しており,なかでも九州で初めてサイフォン方式を取り入れた排水機場であるため紹介する。

2 排水機場の概要
本排水機場の概要を次に示す。
(1)設置場所:宮崎県延岡市古川町地先(五ヶ瀬川左岸5k200付近)
(2)総排水量:12m3/s
(3)主ポンプ
  型式:縦軸斜流1床式
  吐出口径:1,650㎜
  吐出方式:バルブレスサイフォン式
  吐出量:6m3/s×2台
(4)主原動機
  全揚程:4.4m
  型式:縦型ガスタービン(減速機内蔵型1軸式)
  定格出力:360kw
  回転速度制御範囲:30~100%
(5)吐出管
  ①ルーズ短管
  口径:1,650㎜
  材質:FCD450-10
  ②サイフォン管
  口径:φ1,650~2,000㎜×800㎜ ~2,500㎜×1,500㎜
  材質:SM400
(6)真空破壊弁
  型式:電動蝶形弁
  口径:300㎜
  数量:3台(1台予備)
(7)操作制御設備(中央,遠方)
  型式:PC型(運転支援装置)
(8)除塵設備
  型式:前面掻揚背面降下型
  コンベア:20°トラフ型ベルトコンベア

3 排水機場の特徴
(1)サイフォン方式の採用
従来の吐出管の構造は,ポンプ停止時に水を遮断するための吐出弁や逆流防止弁を設置する必要があったが,本機場では吐出管をサイフォン方式とし,管頂部高を計画高水位(HWL)以上とすることにより逆流防止を行う技術を採用した。サイフォン管頂部に空気を送り込むための真空破壊弁を設置し,ポンプ停止時にはサイフォンを破壊することで逆流を防ぐ構造である。
これにより,吐出弁及び逆流防止弁が不要となりコスト縮減,メンテナンス性の向上を図っている。

(2)ハイブリッド原動機の採用
縦軸ガスタービンを採用することにより省スペース化を図るとともに,今回は一軸式ガスタービンと歯車減速機を一体パッケージ化したハイブリッド型原動機を採用した。
この原動機はパッケージ内に内蔵してある変速流体継手の油量制御を行うことで,30~100%の回転数制御を行うことができる。そのため,出水末期における操作回数が低減し,操作人の負担軽減が期待される。(図ー5)

(3)吸込水路のクローズピットの採用
クローズピットを採用することにより,高流速化を可能とし,流入路幅の縮小及び底盤の底上げによるコスト縮減を図っている。

(4)天井クレーンの省略化
天井クレーンを省略し上屋の高さを低減させることにより,設備費及び建築コストの縮減を図っている。

4 おわりに
今回完成した古川排水機場は,サイフォン方式等の新技術の積極的な活用による機器の省略化,設備規模の縮小を図ることができ,大幅なコスト縮減効果を得ることができた。
また,本排水機場は市街地部での施工であったが,用地及び家屋の移転をはじめ工事中の安全対策等において,地域の方々の協力が得られ,無事故で円滑に施工することができた。据付工事の際には,現場見学会を開催したところ多数の地域の方々の参加者があり,本機場に対する期待が非常に高いことをあらためて感じさせられた。
本排水機場の完成に伴い平成17年度の出水期より内水被害の低減効果が得られ,地域の安全性の向上に寄与できることを確信している。

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