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平成20年度総合評価落札方式等による入札結果
九州地方整備局 桒野修司
1.平成20年度の入札契約状況

「総合評価落札方式」とは、価格と品質を数値化した「評価値」の最も高いものを落札者とすることにより、「価格」と「品質」が総合的に優れた施工者を選定する方式である。



※以下に示すデータはいずれも総合評価落札方式による。( 指名競争、随意契約除く)

①契約結果
九州地方整備局管内における平成20年度の総合評価落札方式の契約件数は1872件(河川・道路・営繕関係1738件、港湾空港関係134件)である。このうち施工体制確認型の実施件数は1324件(71%) である。

②落札状況
図-1に平成18年度~平成20年度の総合評価落札方式(河川・道路・営繕・港湾関係)の落札状況を示す。最低価格者以外が落札した工事は、約14%→約25%→約34%、最高提案者が落札した工事は、約40%→約49%→約54%と年度毎に上がってきており、総合評価落札方式における技術評価のウエイトが高まっていることが伺える。


図ー1 落札状況の内訳

③低入札の状況
図-2、3に予定価格1千万を超える総合評価落札方式対象工事 ( 港湾を除く、以下同じ) についての低入札の発生・契約状況を年度毎に示す。
発生ベース( 開札時の評価値が最も高いものが低入札、施工体制確認型については開札時に低入札者が存在する工事) では、平成20年度に低入札の発生率が昨年度に比べ12.6%から24.7%に増加しており低価格での競争が激化してきていることが伺える。


図-2 低入札の状況( 発生ベース)

契約ベース(契約者が低入札) では施工体制確認型の試行により平成20年度は低入札の契約率が約5%に減少している。また平成20年12月からの施工体制確認型の試行拡大(予定価格1千万を超える工事全てに適用) により低入札の契約が今後更に減少するものと考えられる。低入札工事の様々な弊害が指摘されていることから今後の動向を注視していく必要がある。


図-3 低入札の状況( 契約ベース)

④入札率の分布
図-4に平成18年度~平成20年度の総合評価落札方式の入札率(入札価格/予定価格)の分布について示す。平成18年度では予定価格付近に入札が集中しているが、平成20年度では調査基準価格( 入札率83%~84% ) 付近に入札が集中している。施工体制確認型の試行拡大によって極端な低入札での落札は減少したが、調査基準価格付近での競争が激化してきていることが伺える。


図-4 入札率の分布

⑤落札率の推移
図-5に平成19年度~平成20年度の総合評価落札方式の落札率の推移について示す。平成19年度に比較して平成20年度は平均落札率がわずかに上がっている。平成20年4月に調査基準価格の見直しがされたことや、12月に施工体制確認型が予定価格1千万を超える全ての工事に対象が拡大された事が平均落札率の引き上げに寄与していると考えられる。


図-5 落札率の推移

⑥加算点率と工事成績の関係
図-6に落札者の加算点率( 加算点/ 加算点満点) とその工事の完成時の工事成績の関係について示す。
落札者の加算点率が高いほどその工事の完成時の工事成績は高い傾向にあり、総合評価落札方式を実施することによってより良い品質の確保につながっていると言える。


図-6 加算点率と工事成績の関係

2.平成21年度総合評価落札方式の見直し
①タイプ選定の見直し
平成20年度までは、工事の難易度や工夫の余地に関らず、工事規模により簡易型と標準型を区別していたため、簡易型において難易度の高い課題を設定する等、簡易型の施工上の課題と標準型の技術提案の境界が曖昧となっていた。
平成21 年度では図-7に示すように、工事価格帯と難易度によりタイプの選定を行うように見直しを行った。標準型( Ⅰ型) は平成20年度の標準型、標準型(Ⅱ型) は技術提案として工事の品質確保につながる技術提案を評価する。簡易型は「施工計画」を求めず企業実績と技術者評価のみで評価し、比較的小規模で施工計画に工夫の余地が少なく、過去の実績で施工の確実性を十分評価できる工事に適用する。


図-7 平成21年度タイプ選定

②定量評価の検討
高い技術評価点を得ようとコストや手間のかかるオーバースペックと思われる提案が見られる。その対策として、「定量評価( 振動や騒音の低減値等)」の手法の検討を行う。また定量評価を行うことにより、品質向上を明確化することができる。

3.新たな施策

総合評価落札方式の新たな施策として社会的要請等を踏まえた視点からの評価項目として以下の2項目を試行している。
①「契約後VEにつながる提案の評価」(H.20.12より試行)図-8に示す。
総合評価において、「契約後VEにつながる提案」を求め、発注者・受注者が協働して、コスト縮減に取り組み、国民(発注者)・受注者ともに利益を得る「協働両得」を目指すものである。コスト縮減が図れた場合には、受注者は縮減額の半分を得られる。


図-8 契約後VEの考え方

②「地元企業活用評価型」(H.21.2 より試行)
図-9に地元企業活用評価について示す。雇用確保が厳しく、建設業が就業者に占める割合が高い地域で雇用確保のための地元企業活性化を図ることを目的として、大手企業に発注する工事で地元企業の下請け比率や地元企業からの資材等の購入比率について評価するものである。


図-9 地元企業活用評価の考え方

4.建設コンサルタント業務の入札契約方式について

国土交通省直轄事業の調査・設計業務で多く用いられている入札契約方式は、「価格競争入札方式」と「プロポーザル方式」である。「価格競争入札方式」は、一定の基準に基づいた競争参加者により、どの競争参加者が落札者となっても一定の品質が確保可能となるよう資格、実績、成績等による条件を付したうえで、最低価格入札者を落札者とする方式である。一方「プロポーザル方式」は、「高い知識又は構想力・応用力が必要とされる業務」を対象に、発注者が業務概要と概算金額を提示したうえで、競争参加者に技術提案書の提出を求め、技術的に最適な者を特定し、契約を行 う方式である。
図-10に入札契約方式の適用状況を示す。


図-10 入札契約方式の適用状況

また、平成17年4月には「公共工事の品質確保に関する法律」が施行され、工事に限らず調査及び設計においても品質確保が重要であることが規定されたことから、九州地方整備局においても平成19年度から価格と技術が総合的に優れた者が落札する「総合評価落札方式」の試行を実施している。「総合評価落札方式」は、前述の2つの入札契約方式の中間に位置し、価格の評価に加え技術の評価を行い、より高い技術を持つ者を優位とし、技術を持たない者が落札しにくくすることで、調査・設計業務の成果品の品質向上を期待するものである。
なお、調査・設計業務における総合評価落札方式は、平成20年5月2日付で財務大臣への協議が整い、平成20年11月5日付で総合評価の定めと運用上の基本的な事項を示した「標準ガイドライン」が、平成21年4月20日付で建設コンサルタント業務等に関する調達方式の適切な選定等の考え方及び各方式の運用等を示した「建設コンサルタント業務等におけるプロポーザル方式及び総合評価落札方式の運用ガイドライン」が策定されたことから、今後本格的に導入拡大を図る入札契約方式となっている。


図-11 総合評価落札方式導入イメージ


図-12 入札契約方式の選定フロー


5.平成20年度の入札契約状況
①入札契約方式の適用状況
九州地方整備局管内( 港湾空港部除く) における平成20年度の調査・設計業務の契約件数は2,119件であり、入札契約方式別の割合は、表-1に示すように全業種合計では価格競争が61.0%、プロポーザル方式が37.3%、随意契約が1.7%を占める結果となっている。

表-1 平成20年度 業種別入札契約方式適用実績

業種別には、表-1に示すように、技術提案を求めることにより優れた成果を期待できる業務の割合が多い土木関係建設コンサル業務においてはプロポーザル方式の適用割合が60.1%と高く、一定の資格・実績・成績等を付すことにより品質を確保できる業務の割合が多い測量、地質調査、建築関係建設コンサルタント及び補償コンサルタント業務においては価格競争入札方式を適用した割合が78.7~96.1%と高い結果となっている。
なお、総合評価落札方式については、価格競争入札方式に含まれるものであり、平成20年度は土木関係建設コンサルタント、測量及び地質調査業務において計42件を実施している。

②落札状況
図-13に平成16年度~平成20年度の予定価格1千万円以上の価格競争入札方式適用業務の落札状況、表-2に平成20年度の業種別の落札結果を示す。


図-13 価格競争入札方式の落札状況

表-2 平成20年度 業種別の落札結果

全業種の平均落札率は、平成16年度の92%から年度毎に低下し、平成20年度には81%となっており低価格での競争が激化してきていることが伺える。
業種別には、土木関係建設コンサルタント業務の平均落札率が78%と全業種の平均を下回る結果となっている。

③低入札の状況
図-13に示すように、予定価格1千万円以上の低入札業務(調査基準価格を下回る低価格で落札した業務)の発生率が平成16年度の6%から年度毎に増加し、平成20年度には27%まで増加しており、業務成果品の品質への影響が懸念される状況となっている。
業種別では、表-3に示すとおり、土木関係建設コンサルタント業務及び地質調査業務において低入札の発生率が大幅に増加しており、品質確保に向けた対応が急務となっている。また、測量業務においても低入札発生率の増加は治まりつつあるものの、発生率自体は高い水準にあり、今後の動向を注視していく必要がある。その他、補償関係コンサルタント業務については、発生率が4.1%と低く、建築関係建設コンサルタント業務については、発生率は40%と高いが契約件数5件の内の2件が低入札であったものであり、業種別の傾向としては異常な状態とは判断しにくいものであった。

表-3 業種別低入札発生状況

6.建設コンサルタント業務等の品質確保対策

建設コンサルタント業務等においては、調査基準価格(予定価格1千万円以上の業務に設定)を下回る業務が年々増加しており、調査・設計等の成果の品質確保に支障を来すだけでなく、それに基づいて行われる公共工事の品質確保にも支障が及ぶ恐れが生じている。
このため、平成19年度から実施している「低入札価格調査」、「照査を伴う設計業務における第三者による照査の義務づけ」に加え、平成21年2月23日から品質確保を目的とした下記の対策を実施している。

今後は、本対策の効果検証を行い、引き続き必要な対策をしていきたいと考えている。

7.総合評価落札方式の結果
①総合評価の方法
調査・設計業務の総合評価落札方式は、原則として除算方式が採用されている工事の総合評価落札方式とは異なり、加算方式が用いられている。
具体的には、以下の算出方式による総合評価値が最も高い競争参加者を落札者としている。
・総合評価値=価格点+技術点
・価格点=価格点の配分点× (1-入札価格/予定価格)
・技術点:技術提案の妥当性・的確性、業務の実施方針の妥当性、予定管理技術者の技術力 等
※価格点と技術点との比率は、業務内容により1:1、1:2、1:3 のいずれかに設定する。( 図-12参照)

②平成20年度の入札結果
平成20年度は42件について総合評価落札方式を実施しており、入札の結果、技術点で最高の得点を獲得した競争参加者が落札者となったケースが、42件中29件であった。表―4に入札結果の事例を示す。例示の業務では価格点が6位、技術点が1位であったF社の総合評価値が最も高く、結果として技術点の最高得点者であるF社が落札者となった。

表-4 総合評価落札方式による入札結果の事例

42件の業務について、落札者の価格点と技術点の得点状況を図―14に示す。
技術点の最高得点者が落札した割合は29件(69.0%) で、最低価格者が落札した割合は23件(54.8%) であり、技術点による競争が優位な結果となっている。
また、技術点の最高得点者が落札した割合が69.0%となったことから、質の高い成果が得られる可能性が最も高い者が落札者となる割合が高いものと評価できる。


図-14 落札者の得点状況

今後は、前述の低入札業務における品質確保の取り組みを引き続き実施していくとともに、総合評価落札方式の導入拡大を図り、更なる品質の向上に努めていくこととする。

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