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平成18年度府招(フマネキ)地区
災害関連緊急地すべり対策事業について
佐賀県 江頭秀仁
1 はじめに

府招地区地すべりは佐賀県西部の伊万里市に位置し、保全家屋5戸、一般国道202号(14,812台/日)を含む地すべり区域であり、昭和30年(1955年)に地すべり災害が発生し、その後は安定し、変状は確認されなかったが、平成18年9月16日の台風13号に伴う豪雨(時間最大雨量120㎜/h)の影響により、地すべりが再活動し崩落土砂が家屋を押し潰し、国道202号を閉塞する地すべり災害が発生した。(図-1,2 写真-1参照)


図-1 位置図


図-2 被災時の降雨状況(時間最大雨量 120.0mm/h)


写真-1 被災状況写真(計器配置図)

2 地形・地質

伊万里市北側の城古岳(404.0m)と国見岳(176.6m)の間を、北東-南西方向に国道202号が敷設されており、この国道202号沿いの標高60~100m程度の北西向き斜面に当る。周辺の尾根は比較的丸みを帯びているが、尾根筋も密にあり谷底まで低地が発達して、いわゆる晩壮年期の山様を呈している。また、北~西斜面は緩やかな斜面をなし、他方の南~東斜面は比較的急な崖地形を呈する、非対称的な横断形を示すケスタ地形が多く認められる。
当地区の広域地質は、深層基盤岩を三群変成岩類および花崗閃緑岩類として、これらを断層および不整合の関係で第三紀層が分布している。この第三紀層は下位より、相知層群、杵島層群、佐世保層群の3層群に区分されている。

3 災害発生の経緯

【発生位置】
伊万里市南波多町府招地内 一般国道202号 68.1kmポスト付近
【発生日時】
平成18年9月16日(土)10時30分頃
【降雨状況】
7時から8時まで120㎜(立目雨量局)
【交通状況】
<通行止め>
平成18年9月16日(土)13時30分
<迂回路交通解放>
平成18年9月23日(土)13時00分
 (自動観測システムにより監視。地すべり変動状況に応じて通行規制。)

4 現地概要

平成18年9月16日の台風13号の接近により刺激された秋雨前線に伴う豪雨により、幅約75m、長さ約185mに及ぶ地すべりが発生し、崩落した土砂の一部は斜面直下の民家を押し潰し、国道202号を閉塞した。地すべり頭部には高さ約2mの滑落崖が両側方部へと断続的に分布している。地すべり土塊は段差亀裂が多数発生して著しく乱れ、樹木の裂けた木も認められた。伊万里側末端部では国道が約2m隆起している。唐津側末端部では約30m、長さ15mに渡って土砂が崩落し、斜面直下の河川を閉塞し、人家にまで土砂が及んだ。(写真-1,2,3参照)

写真-2 地すべりブロック頭部滑落崖(H=2m)

写真-3 国道202号の路面隆起変状

5 危機管理体制

○警報機設置の状況
国道202号:起終点に各1基設置
民家側:国道北側,国道沿線売店横,地すべり東側に各1基 (写真-4参照)


写真-4 警報器設置状況

○警戒避難基準
伸縮計のS-1, S-2, S-3, S-6において2㎜/h以上の変位が生じた場合には、国道通行止め及び北側住民に避難を促す警報機が作動する。同上の伸縮計が3時間連続で2㎜/h未満の変位量に納まった場合に通行止め解除及び避難解除としている。 (図-3参照)


図-3 通行止・避難基準および監視体制

6 対策工の検討

○初期安全率(Fs)の設定
地盤伸縮計、パイプ歪計の観測結果より、降雨に伴い地すべり変動が認められることから、初期安全率をFs=0.98と設定。
○計画安全率(Fsp)の設定
いずれのブロックも保全対象が『人家及び一般国道』であることから、計画安全率をFsp=1.20に設定。
降雨により被災し、現在も降雨により変動が確認されることから、地下水排除工として横ボーリング工を併用することとする。
また、地すべり土塊は著しく緩んでいること,国道・市道復旧のため地すべり末端部での工事があることから、斜面下方部にも対策工を配置することが望ましい。
押え盛土工については、施工計画地に民地、国道、河川があり、補償・移設や代替に費用・時間がかかることから、採用不可とした。以上より排土工+横ボーリング工+鋼管杭工の工法に決定をした。(図-4,5参照)


図-4 対策工計画平面図


図-5 横断図


写真-5 A1-4コア写真

7 おわりに

工事については、今年度で概成を予定しており、国道202号についても平成20年1月に本線切り替えを行っています。
地すべり事業に携わったことのなかった私にとって、災害現場を目の当たりにし、地すべりのメカニズムや地すべりの奥の深さを知ることができたことは大変貴重な経験になりました。最後に災害復旧事業に多大なるご協力をいただきました関係各位の皆様に厚くお礼申し上げます。(写真-6参照)


写真-6 現況写真(平成20年1月)

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