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川内川における
かわまちづくりの取り組みについて

国土交通省 九州地方整備局
 川内川河川事務所
 調査課 調査課長
伊 東 理 博

国土交通省 九州地方整備局
 川内川河川事務所
 調査課 調査係
坂 田 朋 幸

キーワード:川内川、かわまちづくり、カヌー

川内川は,その源を熊本県球磨郡あさぎり町の白髪岳(標高 1,417m)に発し、羽月川、隈之城川等の支川を合わせ薩摩灘へ注ぐ、熊本県、宮崎県及び鹿児島県の 3 県、6 市 4 町にまたがる幹川流路延長 137㎞、流域面積 1,600km2の一級河川(図- 1)である。

図1 川内川流域図

(1)川内川でのかわまちづくり
平成 18 年の洪水により甚大な被害を受けた川内川流域では、復旧・復興に向けたハード・ソフト対策を実施していく上で、流域 5 市町(薩摩川内市、さつま町、伊佐市、湧水町、えびの市)、県、国等の関係機関だけでなく、地域住民も含めた幅広い取り組みを行い、流域での一体感が醸成されてきた。
かわまちづくりにおいても流域一体の考えの下に流域 5 市町を中心とした推進協議会を設置し、H 29 年 3 月に水系一貫の計画である「川内川水系かわまちづくり計画」を策定した。
また、川内川かわまちづくりでは、カヌーやホタル船など「舟」をテーマとした水辺活用を基本方針として、地元自治体や地域住民等と協力して事業を進めており、現在までに全 10 地区のうち、6 地区の整備を完了している(図- 2)。
本稿では、湧水町轟地区及び伊佐市湯之尾地区におけるかわまちづくりの取り組みについて紹介する。

図2  川内川水系かわまちづくり整備箇所

2.整備地区の紹介
(1)轟地区かわまちづくりについて
整備地区位置:鹿児島県姶良郡湧水町
【整備の変遷】
轟地区はかつて狭窄部であり、洪水時にボトルネックとなり、上流地区の度重なる浸水被害の一因となっていた。平成 10 年代に床上浸水対策特別緊急事業により流下能力を確保し、かわまちづ くり事業により、景観性や河川利用の向上を図っ た(写真- 1、 2、 3)。

写真1 床上浸水対策特別緊急事業前H10年

写真2 床上浸水対策特別緊急事業後H16年

写真3 かわまちづくり整備後R1年

【整備の背景】
・湧水町轟地区は、自然景観が良好であり、流水がダイナミックに変化することから、カヌー競 技に適した場所であるが、安全性や利便性が課題となっており、河川利活用の向上を図る目的で、景観にも配慮し今回整備を行った。

【整備の内容】
・「ダイナミックに変化する水の流れと河岸の岩 盤、巨石、緑が織りなす自然豊かな景観の保全」と「安全で快適な利活用の促進」を両立させることをコンセプトとして管理用通路、護岸工、階段工、高水敷整正を整備した。

図3轟地区整備計画図

【配慮、工夫した点】
・景観委員会や轟地区かわまちづくり推進協議会(写真- 4)を設置し、国、学識者、地方自治体、施工業者、カヌー協会、地元代表で議論や現地確認等を重ね、設計から施工段階において整備方針の統一を図った。

写真4 轟地区かわまちづくり推進協議会

・自然景観を保全する区間と利活用を考慮する構造物区間で区分けし、2 区間の調和を図る設計とした。
・自然景観の保全をする区間は、巨木、巨石は極力残し、水際は改変しないように施工した(写真- 5)。

写真5 水際を改変しない施工

・護岸は既存の石積みに合わせた練り石積み護岸とし、散策路は人工的な直線ラインが出ないように留意した。
・利活用を考慮する構造物区間は、利便性、維持管理性を考慮し階段護岸、コンクリート舗装とし、自然景観との調和を図るため、顔料入りコンクリートや箒目仕上げ、洗い出し仕上げで明度を低下させた。
・車いす等の利用者も考慮し、バリアフリー型の 設計とした(写真- 6)。

写真6 バリアフリーを取り入れた施工

(2)湯之尾地区かわまちづくりについて

写真7 整備地区位置:鹿児島県伊佐市菱刈

【整備の背景】
・湯之尾温泉街に隣接する当該箇所はドラゴンボート等の地域のイベントが開催され、地域住民に親しまれていたが、安全性や利便性が課題となっていたため、河川利用の向上を目的で整備を行った。
【整備内容】
・カヌー競技者がカヌーの乗降に利用できるような階段護岸や階段を設置し、カヌーのコーチングをするための管理用通路(コーチングロード) も整備した(写真- 8)。

写真8 湯之尾地区整備後の状況

3.地域の取り組み(整備後の効果・変化)
かわまちづくりの水辺整備と合わせて、伊佐市、 湧水町より、両地区に艇庫の整備が進められるなどカヌー競技における環境が格段に向上した(写真- 9)。

写真9 湧水町カヌー艇庫(外観)

また、会場へのアクセス性も優れていることから、両地区はカヌースラロームコース、カヌースプリントコースとしても認知されるようになっている。特に轟地区では、九州随一のコースと言われている。
両地区は 2023 年の鹿児島国体の会場に、決定しており、国体のプレ大会として国体の九州ブロック大会や全国高等学校総合体育大会が開催された。その他、各種競技会やカヌーの日本代表合宿等も開催されている(写真- 10、 11)。

写真10 轟地区のスラローム競技風景

写真11 湯之尾地区のスプリント競技風景

4.おわりに
川内川水系では流域 5 市町でかわまちづくりを中心とした川内川流域の観光振興に取り組んでおり、H 29年6 月に「かわまちづくり観光振興部会」を設立した。
観光振興部会は、川内川ブランドを構築し、旅行商品の開発や人材育成、プロモーション等、地域経済の活性化を図ることを目的として活動しており、これまでに「観光 PR マップ作成」(図- 4)、「HP 作成」、「鹿児島市や福岡市での広報イベント」、「テレビ CM 放映」等、川内川流域の魅力を伝える取り組みを行っている。
川内川水系かわまちづくりの取り組みは、単に社会基盤整備のみならず、地域経済の活性化への波及を目指しており、これからも川内川流域のさらなる魅力づくりを行い、地域が元気になる取り組みを流域一体で進めていきたい。

図4 観光PRマップ

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