白川は熊本市中心市街部を貫流するとともに、天井川を呈しており、地形及び土地利用上から災害ポテンシャルが非常に高く、度重なる洪水被害に見舞われてきた。

平成14年7月に白川水系河川整備計画が策定され、今後20～30年の河川整備の目標を定めた。この河川整備計画に基づく河川整備を実施するうえで、改修効果が高い熊本市街部の5/300～15/800区間（八城橋～龍神橋間）については、平成15年度に「緊急対策特定区間」に設定し、治水効果の早期発現を目指して重点的に整備を進めているところである。

「緊急対策特定区間」の中で、特に大甲橋～明午橋間（通称：緑の区間）においては、「森の都くまもと」の象徴的な景観を有している一方で、熊本市街部における治水上のネック箇所でもある。

今回、景観や利活用、維持管理などに配慮した河川整備を進めるに当たって、地域住民、大学、行政機関などが連携して計画、設計、施工の各段階において合意形成を図りながら事業を進めている事例について紹介する。

白川は、その源を熊本県阿蘇郡高森町の根子岳に発し、熊本平野を貫流し有明海に注ぐ一級河川である（図－１）。下流部には平成24年4月に全国で20番目（九州で3番目）に政令指定都市に指定され、73万人が暮らす九州第三の都市・熊本市の市街部が広がっている（写真－１）。

白川は上中流域が急勾配であり、下流域が緩勾配であると共に、有明海の干満の影響で洪水が流れにくいため、下流域で氾濫しやすいといった特徴をもっている。また、市街部では堤内地盤高が低く天井川であるため、一旦はん濫すると、甚大な被害となる危険性があるため、早急な整備が必要である（図－２）

白川においては、昭和28年６月28日に戦後最大規模の洪水が発生し死者・行方不明者422名、浸水家屋31,145戸という甚大な被害が発生した。（写真－２）近年においても、昭和55年８月30日洪水、平成２年７月２日洪水が発生し、たびたび洪水による被害が発生している（写真－３）。平成14年7月に策定した白川水系河川整備計画では、この近年の２洪水と同程度の洪水（概ね1/20～1/30）を安全に流下させるため、基準地点代継橋での流量2,300㎥/sを洪水調節施設で300㎥/s調節し、2,000㎥/sの流量が安全に流下できる河道を整備することにしている（図－３）。

白川において熊本市街部に位置し、改修効果が高い5/300～15/800区間（八城橋～龍神橋間）（図.４）については、重点的に整備を進め、治水効果の早期発現を目指すことを目的に、平成15年度に「緊急対策特定区間」に設定した。

現在、下流の蓮台寺橋～西大橋間の堤防整備及び河岸掘削や長六橋～子飼橋間の堤防整備を実施しており、緊急対策特定区間において河川整備が必要な区間ほぼ全てについて完了若しくは工事着手を行っているところである。

緊急対策特定区間については、平成２７年度完成を目標に現在鋭意進めている。

今回の「緑の区間」については、その１区間であり治水上のネック箇所であると同時に「森の都くまもと」を象徴する景観を有した良好な水辺空間の創出及び景観形成が課題であるため、地域の関心が非常に高い。

今後の整備においても、地域住民や学識者、行政関係者と検討を重ねていくとともに、完成後を視野に入れた維持管理の仕組みを確立していくための検討を続け、都市部の貴重なオープンスペースとして地域により理解され、賑わいのある水空間の整備を進めていきたいと考えている。