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地域とともに事務所開設10周年記念行事
~安全で住みよい未来のふるさとづくりを考える~

国土交通省 雲仙復興事務所長
古 賀 省 三

1 はじめに
雲仙・普賢岳は,平成2年11月17日に198年ぶりに噴火活動を再開し,その後の火砕流や土石流によって,44名もの尊い人命が奪われ,多くの家屋,田畑,山林などにも壊滅的被害が生じ,地域住民の生活や経済活動に長期にわたって甚大な被害を与えた。

土砂災害から地域の人命,財産を守るとともに,1日も早い地域の復興を図るため,平成5年4月6日に雲仙復興事務所は発足し,砂防と道路事業を核に国のプロジェクトとして,地域と一体となって復興を進めている。
開所10年目を迎えた昨年,さらに地域の期待に応えるため,復興の主役である地域の方々とともに,砂防施設と道路の整備を核として,より安全で住みよい未来のふるさとづくりを考える10周年記念行事を実施した。事務所の記念行事を実施するにあたり,従来型の方法にとらわれず,地域との結びつきを重視した記念行事への新しい取り組みについて紹介する。

2 記念行事実行委員会
復興の主役は地域住民であることから,記念行事を企画・運営する実行委員を地域住民から公募し,そのもとに記念行事を実施することとした。

(1)対 象
島原市,深江町及び有明町

(2)期 間
平成14年1月27日~2月12日

(3)方 法
① 1市2町の1月27日付け朝刊に応募用紙の折り込み(約1万9千部)
② 島原市役所,深江町役場,有明町役場の窓口,公民館等に応募用紙を設置
③ 事務所1階ロビーに応募箱を設置
④ 事務所ホームページによる掲載
⑤ 記者発表
公募で選出した10名の委員と当事務所が選出した委員長より構成される実行委員会を設置し,記念行事の実施に向けて実行計画を検討することとなった。

3 実行計画書の決定
10周年記念行事の実行計画を決定するため,3月4日と5月28日に委員会を開催した。
まず,記念行事の柱として,「地域とともに」,「未来につなげる」,「情報発信」の3つの理念を決定し,このもとに,実施する記念行事に対する活発な意見や提案が出された。

10周年を実感できる内容を企画する必要があるとか,演出や内容に工夫を凝らしてハートに残る企画を考えてもらいたいという意見,また,広く人を集める方法として子供会などを利用してはどうかという提案やフットサル大会や凧揚げ大会などを実施して砂防堰堤などの完成した砂防施設を見てもらってはどうかなどの提案もあった。未来につなげるものとして,災害の記憶などを子供たちへのメッセージとして残せるものを作ってはどうかなど様々な意見が出た。
この委員会での提案をもとに平成14年6月に実行計画を決定した。

4 記念行事の実施
実行計画に基づき,平成14年7月から12月まで,記念行事を実施した。各行事等の実施にあたっては,実行委員会を開催し,委員会の意見や提案を踏まえて行事等を実施した。(委員会の実施回数は8回に上った。)以下実施した記念行事とその内容を紹介する。

(1)緑の復元キャンペーン(7月~12月)
噴火災害で失われた緑を復元するため,タブノキやふるさとの木による森づくリキャンペーン,森づくり講演会,10周年記念植樹祭などの取リ組みを行った。この取り組みの中から「雲仙一緑の里親制度」が誕生し,多くの人に苗木の里親に登録していただいた。

(2)島原深江道路ウォッチング(8月10日)
道路の役割と重要性の理解を深めるため実施している道の日イベントに合わせ,水無川導流堤内「われん川」から道の駅「みずなし本陣ふかえ」までの約2kmの道のりを歩く「島原深江道路ウォッチング」を実施した。参加者は,当所が建設した島原深江道路を見て噴火災害から復興が進む様子を確認するとともに,道路の大切さの理解が深まった。

(3)大野木場砂防みらい館開所式,雲仙・普賢岳子供塾及び
  大野木場メモリアルデー(9月15日)
雲仙・普賢岳の溶岩ドームの監視や無人化施工技術ミュージアムなどの機能を持つ大野木場砂防みらい館のオープニングを行った。また,「噴火災害の恐ろしさを知り,伝えるために」をテーマに地元小学生児童16名が参加して「雲仙・普賢岳子供塾」,被災した旧大野木場小学校の追悼と災害の脅威を伝承するため「大野木場メモリアルデー」を開催した。

(4)雲仙復興事務所10周年記念式典,シンポジウム及び懇談会
  (11月23日)
地元関係者を中心に約400名の方々が出席し,記念行事のメインとして3部構成で実施した。
第1部の式典では,来賓祝辞,地域とともに歩んできた10年の紹介,地元児童による「火山・砂防学習教室」発表会などを行った。
第2部では,地元出身の弁護士田代則春氏の基調講演の後,噴火災害からの復興が進むにつれ,島原の未来を担う子供たちの夢を育み,子供たちが誇れるふるさととするために何ができ,何をしなければならないのか,「私たちの描く夢・私たちのふるさと」をテーマに,地元代表6名をパネリストに迎えシンポジウムを行った。

島原の未来を担う子供たちへ伝えるメッセージについて,それぞれの立場で意見や議論が出された。最後にシンポジウムの提言としてまとめ,「未来を担う子供たちへ伝える島原の夢宣言」を行った。

第3部の懇談会では,多くの地元の方々が参加され,終始なごやかな雰囲気の中で行われた。アトラクションや会場全体で踊りが繰り広げられ,参加者の気持ちが一体となった。

(5)雲仙普賢岳フェスティバル(11月24日)
噴火災害からの復興情報を全国に発信し,砂防指定地利活用の促進を目的に島原市安中地区自治会を中心とした地域と行政とが一体となった復興イベントで,平成9年から水無川導流堤周辺で開催されている。今年は,10周年記念行事として,水無川2号砂防堰堤と大野木場砂防みらい館をサブ会場に加え,地域の方々とともにフットサル大会や災害体験など新たなイベントに取り組んだ。

(6)雲仙復興俳旬大会(7月~9月)
火山・砂防学習の一環として,噴火災害からの復興状況を知り,復興情報を発信する目的で俳句大会を実施した。
「噴火災害からの復興」をテーマに,雲仙・普賢岳の猛威,生命の尊厳,防災・火山砂防事業推進の重要性,復興などを内容とした。7月から9月の募集期間に4,885句の応募があり,11月23日の記念式典の中で表彰式を行った。

(7)「わがまちの砂防」絵画・作文コンクール(7月~12月)
噴火災害の恐ろしさ,生命の尊さ,火山砂防事業の大切さを理解することを目的に,子供たちの目から見た砂防を絵画や作文で表現するコンクールを実施した。7月から12月の募集期間内に551作品の応募があり,3月31日に表彰式を行った。

5 10周年記念誌「子供たちへのメッセージ」
噴火を知らない子供たちへ,その脅威,復興や砂防の必要性を知っていただくとともに,さらなる安全で住みやすいふるさとづくりを未来へつなげるために10周年記念誌「子供たちへのメッセージ」を発行することとした。
記念誌は,子供たちへのメッセージ,10年の歩み及び記念行事の取り組み状況などより構成した。
特に子供たちへのメッセージは,地域住民へ広く公募し,作文は53名から,写真・絵画は6名から応募があり,すべてを掲載した。

6 おわりに
雲仙復興事務所は,開所以来地域の復興を目指して,平成15年4月に10周年を迎えた。
事務所の記念行事は,一般的に自己満足型の式典形式になりがちである。当事務所は地域と一体となって事業を行い,復興の支援を行ってきた。このため,自ら評価するのではなく,地域の方々が評価するという視点に立って10周年記念行事を企画し実施してきた。
今回の取り組みが,「地域とともに10年間を振り返り,未来のふるさとづくりを考える」よい機会となり,今後なお一層,地域と一体となって,火山と共生する安全で水と緑ゆたかなふるさとづくりを支援していくきっかけとなったと確信している。
なお,10周年記念行事に関する資料は,当事務所ホームページ(http://www.qsr.mlit.go.jp/unzen/)で公開しているので,是非ご覧いただきたい。

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